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「りっくん、大丈夫?」
「いてて…… 大丈夫だって」
「バカ、陸は本当にバカなんだから」
あの後流石に遅いので姫花は俺を心配そうにして帰って行った。 だけど明日は俺の事が心配なので見に来ると言っていた。
新井と井上の言う通り俺は明日学校を休む事にした。 うちの母さんは俺の事を見てすぐ何かあったなと勘付いていたけど問題にならなそうなら海と空に任せるし、手に負えないなら相談しなさいと言ってそれ以上は何も追求しないでいてくれた。
「ほらりっくん動かない! ちゃんと消毒しないとバイ菌入っちゃうかもしれないから」
「陸痛いよね? 今日はお風呂入らない方がいいね、熱出たら大変だし」
「いや、大丈夫だって」
「ダメ! あたしのせいでこうなったんだからりっくんは安静にしてて? 体拭いてあげるから服脱いで」
「え?」
それは自分でやるからいいと言ったが空は聞かない。
「もう! 変な意味とかじゃないから! あたし真面目にりっくんの事が心配で……」
空がタオルをギュッと握り締めて泣きそうな顔でそう言うので俺は言われた通り上の服を脱いだ。
「酷い、痣だらけ。 ここまでするなんて…… 」
「俺も許せなくて殴り掛かったからな」
「バカ! こうなる前にあたしに言ってくれればあたしちゃんとあの人達に言って!」
「空、陸の言いたいのは空だけじゃなくて私達にも何かあるかもしれないって事で……」
「そんなのわかってるよぅ、でもそれでりっくんがこんなにされるのは嫌だ……」
「うん、そうだよね。 私もそう思ってもやるせないよね。 新井君と井上君に任せろって言われたけど大丈夫かな?」
あの2人は俺の為じゃないって言ってたけど任せろなんて言うなんてな……
「それはわかんないけど…… 今回は2人の言う通り任せてみるよ。 海と空と姫花に何も降り掛からないで済むならさ。俺がなんとか出来ないのはかっこ悪いけど」
「陸、かっこ悪いとかかっこいいとかでそんな危ない事しなくていいの。 出来れば新井君と井上君にもそんな事して欲しくないけど……」
「りっくんがあたしに心配掛けたくないようにあたしもりっくんに心配掛けたくないしさ。 だから心配しないで、明日は休んでてね?」
後で学校行ったらあいつらに結果はどうであれお礼は言わないとな。
そして空は俺の体を拭き終わった。
「はい、これで終わり……」
すると空は俺の胸の辺りに手を当てた。
「ごめんねりっくん。 いろいろ偉そうに言ったけどりっくんはあたしの為だと思ったんだよね、紹介でもしちゃったらあたしが嫌がると思って…… りっくん、本当にごめんなさい! うぅ…… ひぐッ……うわぁぁあんッ、ごめんねぇ」
「うわッ、空いきなり泣きだすなよ? 俺は大丈夫だから。な? 」
「空のバカ…… 私だって泣きたくなるじゃない、陸ぅ〜ッ!!」
「海まで…… 言ったろ? なんともないって。 早く傷治すようにするから2人とも心配するなって」
2人の泣き声に母さんと父さんが駆けつけて来たが俺達の様子を見てやれやれと言った感じで溜め息を吐いて下に降りて行った。
海と空は夜遅くまで俺と一緒にいてくれてようやく帰って行った。 ふと携帯を壊れたままだったというのを思い出した。
仕方ない、不便だし明日は母さんと一緒に携帯を買いに行こう。 そう思って母さんに言ったらすんなりいいよと言ってくれた。
「まぁ海ちゃんと空ちゃんと姫花ちゃんはとびきり可愛いものね、そんな子達を陸1人で侍らせてたらそんな事もあるわよ。 今までなかったのが不思議なくらい。 お母さんも美人だから経験あるわ、そんなとこでしょ?」
「ははは…… 」
苦笑いしか出てこなかった。 そして次の日、海と空は一旦俺に顔を見せて学校へ行った。 2人にくどく安静に! と言われ新しい携帯買ってくると伝えた。
空からプレゼントされたストラップは壊れた基部を直し代わりの紐を付けたしこれでいいだろう。
ショップが開くまでまだ時間があるので俺はその時間まで寝て待とうと思っていると部屋のドアがノックされた。
母さんかな? そう思ったが……
「姫花です。 入っていい?」
姫花? 学校は? そう思ったけどとりあえず「どうぞ」と答えるとドアが開いた。
「突然ごめんなさい。 陸君怪我大丈夫?」
「姫花…… なんで?」
「学校休んじゃった。 陸君携帯も壊れてたし連絡も取れなくて私不安で…… 海ちゃんと空ちゃんには伝えたから」
「そういう事か、わざわざごめん。 学校休ませちゃって」
「ううん、そんな事どうでもいいの。 私陸君に昨日何もしてあげられなくて…… 私も一緒にいたかったのに」
姫花は昨日別れる直前までずっと俺の心配をしてくれたもんな。
「ごめんな心配かけて。 この通りそれほど大した事ないって。 海と空にも安静にしてろって言われたからさ、そうするよ。 ただ携帯は今日新しいの買いに行くけどさ」
「陸君ッ!」
そう言って姫花は俺を抱きしめていた。 姫花からこんな事してくるなんてあまりないからビックリした。
「姫花?」
「良かった、私ずっと心配だったし寂しかったし陸君の顔見たら我慢出来なくて…… ごめん」
「…… 俺こそごめんな? 姫花にも大分心配かけて」
俺は優しく姫花の頭を撫でた。
「陸君、出来るだけこんな無茶しないで? もしかしたら死んじゃうかもしれない事だってあるんだよ? 私そんなの嫌だよ」
「ああ、本当にごめんな」
しばらく姫花は俺を抱きしめていたが落ち着いたようでスッと俺から離れる。
「今日は私陸君が不自由しないようにお世話するから」
「え? そこまで不自由してないけど……」
「ううん、する……」
これはそうするまで姫花も動かなそうだ…… そしてショップが開く時間になり母さんは姫花もついてくるかと聞いたので姫花は頷き一緒に携帯を買いに行った。




