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ない…… 確かにこの辺なのにどこにも。 草が生い茂った校舎の裏辺りを懸命に探す。 まだ明るい時間だけど場所が場所だけになかなか見つからない。
いてて…… 今が放課後で良かったのか悪かったのか。 でもみんながいる時だったら確実に面倒な事になっていたし。
いや、もうなってるか。 そんな事より早く探さないと、携帯すら見つかってない。 あっても多分壊れてるかもしれないけど。 携帯までぶん投げるなんてやり過ぎだろ、パキッて音が上からも聞こえたし。 ますます空にそんな奴らと関わりを持って欲しくない。
俺は辺りの草を掻き分け探す、痛いし蒸し暑いし最悪だ。 でも携帯はどうせ壊れてるかもしれないからいいとしても空のストラップだけは…… なくしたなんて言ったらあいつショック受けるに違いない。
そしていくら9月初めと言っても次第に辺りは暗くなってきた。 今何時だ? ていうか海と姫花も俺がいなくて心配してるかもしれない。
こんな姿見せたら確実に心配するよな…… それに空の部活ももう終わってたりして。
だけど見つけない事には。 俺が探しているとライトの光らしき明かりが……
その正体は今1番顔を合わせられない空だった。 空は俺を見て真っ青な顔をしている。
「りっくん…… どうしたの!? どこにもいなくて海ちゃんと姫花もみんなでずっとりっくんの事探してたんだよ? それにその傷……」
「…… あ、これは…… いろいろあって」
「何言ってるの!? そんなになって! 携帯も繋がらないし何があったか話してよ!」
空が俺の両腕を掴んで俺に詰め寄って泣きそうな顔でそう言った。
「屋上の階段で転んで…… 海と姫花の所へ行こうと思ったら窓が開いてて手に持ってた携帯間違って落としちゃって……」
先輩2人の事は言ったら不味いと思ったので咄嗟に嘘を吐く。
「嘘! だったらなんで目合わせてくれないの? 誤魔化さないで!」
「本当にそれだけなんだ、それより探さないと……」
「りっくん!」
空の目から涙がポロポロと流れていた。そして凄く怒っている……
「なんでそんな嘘吐くの? わかるよ嘘だって…… あたしには言えない事?」
「いや、俺は……」
「傷だらけになって…… それだけでも只事じゃないのに手当もしないで!」
「空から貰ったストラップがないんだ! せっかく空からプレゼントされたのに…… だから俺はそれを見つけるまで帰れない!」
そう言うと空は黙った。 だけど俺がまだそれでも嘘を吐いているという感じで見ている。
「わかった、ならあたしも探す。 あたしがプレゼントしたんだし。だから見つかったら訳も話して?」
「さっき言った」
「嘘! だったらしっかりあたしの目を見て言ってみて? 本当の事言わなきゃあたし家に帰らないから!」
「…… わかった」
「じゃあ海ちゃんと姫花にも今電話するから。 2人ともずっとりっくんの事探してるんだから」
「ああ……」
俺がそう言うと空は2人に電話した。 そうして草むらを分けて探していると2人も程なくして俺達の所へ来た。
「陸、そんなになって今まで何して…… どれだけ私達心配したと思ってるの!? このバカ!」
「嘘…… 陸君その怪我どうして……」
「ほんとバカだよりっくん」
空はまた泣きだした。 2人に空は事情を説明した、 そして海も俺の言ってる事を嘘だと思ったようだ。
「とりあえず探すから。 その後ちゃんと説明してよね? 私だって心配で心配で……泣きたいけど…… それじゃ空を宥められないから」
「陸君、言い辛い事なんだよね? それでも私も本当に心配したんだよ? 海ちゃんも空ちゃんも…… だから2人の言う通り後でちゃんと話して? じゃないと私…… 怒る」
姫花にまでそう言われてしまった。 俺が思った以上に…… そうじゃない、3人とも心配するに決まってるじゃないか、逆の立場だったら俺だってそうだ。
例え空に迷惑が掛からないようにとかであったとしても俺がこんなになってまで隠し事されるのは3人にとっても辛いんだ。
そして3人で携帯を探し始める。 みんなで探してしばらく経ちようやくストラップが見つかる。
「これ………… 」
引き千切られたストラップを空が見つけてしまった。 落ちたのなら紐の基部ごと千切れるはずがないので空は俺を見た。
「あ…… 携帯が」
「それ陸の……」
姫花が携帯を見つけた。 そして空と2人はこれはどういう事? という顔になる。
「わかった…… 話すよ。 実は………… 」
俺はこれまであった事情を説明した。 今度は空やみんなの目を見て本当の事を。
「そう、そっか。 あの先輩達あたしの事でりっくんを……」
「だけど空、それでもあいつらには何も言うなよ? じゃないと空に今度は厄介ごとが降りかかるから」
「りっくんをこんなにしたのにあたしに何もするなって言うの?」
「じゃないと俺ここまでされた意味が……」
「でもあたし許せない! りっくんをこんなにされて何もあの人達に何も言わないなんて!」
「私もその人達許せない、陸をボロボロにして携帯まで捨てて平気で帰って行くなんて」
「私だって好きな人傷付けられて冷静じゃいられないよ」
「あー、そういう事か」
突然横から声が聞こえた。 その声の主に振り向くと新井と井上だった。
「お前らなんで?」
「いや、帰ろうと思ったら夕凪と佐々木が慌ててたしお前がいないのを気にしてたから俺達も気になってついてきたんだ、悪いな。 それに話も聞かせてもらった」
「先生に言ったとして先輩方がどうにかなっても星野とかにも迷惑かかるだろ? それに噂とかもたちそうだし。 だから俺達に任せろよ? 俺星野の事は諦めたけど好きだった奴を泣かせたのは許せねぇし」
「そういう事だ、2度とちょっかい出せねぇようにしてやるよ? だから安心しとけよ? とりあえずお前がそんなんで学校来ると変だから傷良くなるまで学校休めよ。 お前を助けるわけじゃなくて俺と新井はあくまで夕凪と星野の為にやるだけだ」
「新井君、井上君……」
「別にそれだけだ、だから気にすんな」
そう言って2人は帰って行った。 あいつらはあいつらでちょっと面倒な奴らだと思ってたけど、今回はそんな2人に助けてもらう事になるなんて……




