89
長いようで短かった夏休みも終わり新学期が始まった。そしてみんなの気を引いた奴がいた。
「よぉ神城、まだ佐々木とも仲良くやってるようだな」
そう話し掛けてきた新井は髪の毛を金髪に染めていた。 所謂夏休みデビューだ。
「お前…… 今時金髪なんて……」
「いやぁ、やり過ぎちまったぜ」
俺が正直ドン引きしていると空が新井を見て笑っていた。
「あはははッ、何それ〜!? 絶対怒られるじゃん? 」
「え? 変か?」
空に笑われた事で新井は少しショックを受けている。 やり過ぎたと言っても少し自信があったみたいだ。 そして空の言った通りHRが終わると新井は先生に職員室に連れて行かれた。
「新井君ビックリしたね?」
「ああ、本当にあんなのいるんだなって意味でな」
俺はああいうのってあまり女子ウケは良くないのは知っている、だって海や空もそういうのは好きじゃないから。 まぁ海と空の意見と言った方がいいかな。
「いやぁ、しこたま怒られたわ。 明日からまた黒髪だわ」
新井が戻って来てうんざりしたようにそう言った。
「バカだなお前。 だからやめとけって言っただろ?」
井上は呆れたようにそう言うと新井はうるせぇと言って席に座る。
他の奴らは大して変わりなく女子とかもちょっと感じが変わったなという子が数人いた程度だった。
そしてそれから更に数日経ち相変わらずの毎日を送っていた時だった。 俺がジュースを買おうとたまたま1人で売店に行った時だ。
後ろからトントンと肩を叩かれ振り向くとそこには知らない男子生徒が2人。 いや、先輩かな?
「なんだっけ神城つったっけ?」
「はぁ、神城ですけど?」
やっぱり先輩っぽいな。 でも面識全然ないしこの人達はなんで俺の事を知っているのだろうか?
「あー、だよな? お前がいつも連れてる3人で短かい髪の女いたよな? 星野空っていう」
「それが何か?」
「そいつ俺に紹介してくれね? 別にそれ以外に女連れてるから付き合ってるわけじゃねぇだろ?」
こいつら…… DQN先輩か? 見た目もなんかそれっぽいし。 まぁ俺の付き合い方もかなりおかしいとは思うけど。
「いえ、そういうわけにはいかないです、第一に俺じゃなくて空本人がいいと言わないとそういうのは……」
「知らない俺達がいきなり頼んでも微妙だからお前に頼んでるんだろ? お前が言えば俺達より簡単に誘えるだろ? 返事は今とは言わなくていいからさ、2、3日したらまたここに来いよ? 来なかったら俺達からお前の所に行くからな。 そうなりたくなかったら来いよ?」
お願いから脅迫じみた態度に変わった…… 断るにしても俺の所には来て欲しくないしそれに空にそんな事を知られたら心配しちゃうだろうし。
「わかりました。 でも返事はあまり期待しないで下さいよ?」
「大丈夫だって! お前が言えばなんとかなるからな。 くれぐれも伝えとけよ?」
「…… はぁ」
そう言って先輩達は戻って行った。 なんてこった…… これは結構面倒そうだ。厄介そうな連中に目を掛けられたな。
空を紹介なんて出来るわけないな、大体空ってああいうの好きじゃなさそうだし。 俺と付き合ってるんだし、答えはNOという他ないけど。
教室に戻るとそんな俺に姫花が話し掛けた。
「陸君どうしたの? なんか元気ないよ、何か悩み事?」
「え? そんな事ないって」
「そうかな? さっき行ってくる時となんか様子が違うなって思ったんだけど」
姫花はそう言ってそれから俺を気にするように見ていた。 だけど心配掛けちゃうし姫花がどうこう出来るわけじゃないし逆に迷惑を掛けるかもしれないのでさっきの事は言わない。 もちろん海と空にもだ。
特に空の事だから空は余計に気にするだろうし。
「りっくん、なんか様子が変だよ?」
「空もそう思う? 私もそう思ってた」
部活の時間になり空と一緒にみんなで体育館に行っている時2人からもそんな風に言われる。 あまりそういうのは見せないようにしていたつもりなんだけど付き合いが長いとバレるのかな? でも姫花も気付いたし俺がそんな感じを出しちゃってるのか?
「いや、次のテストもっといい点取れないかなって思ってさ」
「本当? じゃあ図書室行ったら勉強しようか?」
「え? ああ」
思わずそう言ったけど今のこの調子じゃそんなの頭に入らなそうだと思ったら体育館の隅に先程話し掛けられた先輩がいた。
そして俺と目が合うとその先輩は俺に頼んだぞ? という感じのサインを送っていた。 ここまで来てるなんて相当厄介そうだ……




