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夏休み後半。平和だ、まだ部屋には俺1人誰も他にはいない。 今は俺だけの時間だ。 今日はゆっくり寝よう、そう思った時点でフラグが立っている。
階段を上る音が聞こえる。 もう足音だけで誰だかわかる、これは空の足音だ。 海なら聞こえないように静かに上がってくるもんな。
そう考えているうちにガチャッと部屋のドアが開き慌ただしく空が俺の布団を引張剥がす。
「おはようりっくん! スーパーサプライヤーの空ちゃんだよ! こんな雲ひとつないいい天気の日にいつまでも寝てちゃもったいないよ!」
「いい天気だから寝る日和なんだろ? しかも足音でわかったし…… てか今何時なんだよ?」
「朝の8時半! いやぁ、もうそんな所であたしだってわかるなんていやらしいんだから!」
「まだまだ早いじゃないか。 なんでいやらしいなんだよ? もう少し寝るわ」
俺が剥がされた布団を再度掛けようと思ったら空にグイッと止められる。
「りっくんあたしの話聞いてないでしょ?」
「聞いてるよ」
「聞いてない! 寝てちゃもったいないって言ってるでしょ? それとも……」
空が急に色気付いた声色に変わる。
「りっくんにはこのあたしの魅惑の体で誘惑して起こした方が効果抜群なのかな?」
朝っぱらから変な事されそうなのでガバッと起きる。
「あはは、ほら効果抜群! される前に起きてるのが釈然としないけど」
「あれ? てか海は?」
「あー! 酷い、海ちゃんは昨日家族でお出掛けするからいないって言ってたじゃん? 寝呆けてるよね?」
ああ、そういえばそうだった。 確かに寝呆けてるな。 そう言うと空はベッドから身を起こした俺の頭に自分の胸を押し付けて抱きしめた。
「はぁ〜、りっくんの匂いって本当いい匂い。 この匂いの香水あったら即買いだよぉ」
「俺ってどんな匂いなんだ? 匂い嗅がれると臭いのかと周りに勘違いされそうなんだけど?」
「あたしってりっくんの匂いフェチだから仕方ないよねぇ」
犬みたいな奴だな…… てか空の方がいい匂いだと思うけどな。 しばらく俺の体臭を満喫していた空はパッと離れ思い出したかのように言った。
「そうそう! あたしりっくんのお買い物に付き合ってあげるために来たんだった!」
買い物? はて? そんな用は俺なかったはずだけど……
「何それ? 初めて聞いた」
「りっくんの服また色褪せてきたしヨレてるから新しい夏服買いに行こう?」
「えー、面倒くさぁ…… 俺あんまり気にしないからいいよ」
「またそんな事言って! あたしや海ちゃん姫花が気にしてるの!」
海と空が気にするのはわかるが姫花は別に気にしないかもしれないけど。 あ、でも姫花の性格だと気にしてても言えないかもしれない。
「でも服買いに行くならまだ早いだろ? だったら寝てて店が開く頃でもよくないか? だから寝るぞ?」
「ダメ! ダメったらダメ! せっかくりっくんと2人きりなんだからそこは大いに利用させてもらいます! 布団に潜るなら私も潜る!」
空は俺を押し倒して更に抱きしめてくる、苦しくて眠れない……
「わかった、起きるよ。 それに暑いから離れろ」
「普通そんな反応するかなぁ? あたしってかなり可愛いのに自信なくしちゃうじゃん!」
「お漏らししてる時から見てるからな、そりゃそうだろ」
「りっくんだってあたしより歳取ってもお漏らししてたくせに」
「もうしてないから昔の事言われたってなんともないぜ」
「へぇ? りっくん大人になったんだねぇ。 あたしも体は大人になったしどんな風に成長したか見せ合いっこでもする?」
は? 何それ? 野球拳か何かここでしようって事?
「どうやって?」
「お互い1着ずつ服を脱いでいくの。 どう? 楽しそうでしょ?」
「まさか女からそんな事提案されるなんて……」
「あれれ? りっくんあたしの事ちゃんと女の子として扱ってくれてるんだねぇ」
俺の胸を突いて甘えるような口調で空は言った。
「ねえ、頭撫でて?」
そう言われ撫でてやっていると空が急に俺の首元に顔を埋めた。 何してんだ? と思ったら……
「あちゃー、これ海ちゃんに見られたら大問題になったりして」
「え?」
俺は鏡で確認するとキスマークらしき痕が…… 間違いなく大問題だ。
「おい、なんて事してくれてんだよ?」
「大丈夫だって、今日は海ちゃん帰ってこないし。 あ! 首筋はダメでも見えない所なら良いよね!? 」
空は俺の服の中に頭を入れようとしたので俺は服を押さえた。
「ええ? りっくんのケチ! あたしもうちょっとりっくんと深く繋がりたいのに!」
拗ねたように空はそっぽを向いたが俺がしばらく俺が構わないと部屋にある漫画を読みだした。 そうこうしているうちに10時過ぎになり俺は出掛ける準備を始めた。




