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「ごめんね、こんなに小さい傘で」
「こっちこそ傘なくて悪い。 天気予報見てこなかったからさ」
海がいないと傘さえ持ってこない俺だから何も文句は言えないどころか物凄く姫花に悪い気がする。 なんせ折り畳み傘だから2人入る事を考慮されてないのに姫花は俺の方へ傘を傾けている。
「姫花、お前の傘なんだから自分の方に寄せろよ。 肩思い切り濡れてるじゃん」
「あ、ほんとだね」
俺が濡れないようにわざとやってるくせに。 姫花は優しいんだけど少し俺に気を遣いすぎてるよな。
「傘貸せよ」
「え? あッ」
パッと姫花から傘を奪い取り姫花の方に傾ける。 最初からこうしとけば良かったな。
「陸君風邪引いちゃうよ?」
「俺そういうの鈍いから大丈夫」
「私も鈍いから大丈夫なのに。 ふふッ。 でも優しいね陸君」
それからあまりお互い会話なく歩く。 姫花はチラチラとこちらを見ている気はしたけど。近くのスーパーに寄り栄養ドリンクとか風邪に効きそうな物を買っていく。そして買い物が終わり海の家に着いた。
海の家にお邪魔しそのまま部屋に行くと海は寝ていた。 少し近付いておでこをそっと触ってみる。 少し熱いな、やっぱまだ熱はあるみたいだ。
そして姫花も海の手をそっと触ってみた。
「わぁ…… 熱あるね」
「そうだな、起こすと悪いし今日はこの辺にしとくか」
「海ちゃんなんか可哀想だなぁ」
まぁ姫花の言う事もわかるけどせっかく寝てるんだし仕方ない。 帰ろうと思ったら布団の隙間から腕が伸びて俺の腕を掴んだ。
ホラー映画で何度か見た光景だったので内心かなりビックリした。
「……り……く?」
「海起きたのか?」
「やっと来てくれたんだ、遅いよ」
「これでも急いで来た方なんだけどな。ごめんな?」
「でも来てくれたから…… いい」
今日は寝起きが悪くないようだ。 まぁ元気がないと言った方がいいか。
「熱何度あったんだ?」
「39度。 辛いよぉ〜」
「じゃあしばらく寝てなきゃ。 あ、姫花も心配して来てくれたんだぞ?」
「え? 姫も?」
姫花は海が起きた時隠れるようにしていたが俺がそう言ったのでヒョコッと海の前に姿を見せた。
「海ちゃん大丈夫? 辛いよね?」
「うん。 でも姫まで来てくれてありがとう。 待ってて、今お茶でも用意するね」
「あ! ダメだよ寝てて? これね、さっき買ってきたの。 効くかわからないけど飲めそうだったら後で飲んで?」
「わざわざごめんね? 姫逆方向なのに。 それに移っちゃうかもしれないのに」
「海ちゃん元気になってくれれば大丈夫! 安静にしてて?」
姫花は起き上がろうとする海を優しくベッドにまた寝かせる。
「姫花の言う通りにしてろよ? 俺はまた後で来るからさ。 空の所にも行ってくる」
「うん、わかった。 空も寂しがってると思うから行ってあげて。 姫、今日はありがとね」
そして今度は空の家に行った。 空の部屋にお邪魔するとやはり空も寝ていたが俺達が入ってきて目が覚めたようだ。
「ゲホッ、りっくん来てくれてありがとう。 姫花まで来てくれたんだ?」
「大丈夫か?起き上がらなくていいからな」
「空ちゃんも具合悪そうだね? 大丈夫?」
「あはは、知恵熱出ちゃったのかな? 起き上がるとクラクラするよ」
起き上がらなくていいと言ってるのに起き上がろうとしている、まったく……
「ほら、無理すんなよ」
「はぁい、ごめんなさい…… 心細かったよぉ」
「空の事だからそうだろうと思った」
「空ちゃんも熱あるね」
「うん、姫花にまで心配掛けちゃってごめんね。 でも来てくれて嬉しいな、ありがとね。 もし姫花が風邪引いたらあたしも看病してあげるから」
空は姫花の手を握ってそう言った。
「ありがとう。 空ちゃんも安静にしててね? 無理しちゃダメだよ?」
「俺もまた来るからさ、大人しくしてるんだぞ?」
空にも買ってきた栄養ドリンク類を置いて行った。
「今日はありがとな。 やっぱり姫花が来てくれて海と空も喜んでたよ。 帰り送って行こうか?」
「ううん、大丈夫だよ。 陸君はこの後も海ちゃんと空ちゃんの所に行くでしょ? だったらそっちに行ってあげて?」
姫花は2人によろしくねと言って帰って行った。




