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屋上へ行くと隅の目立たない所へ姫花と座る。 姫花とこうして2人きりになるのって部活選びした時以来だな。 その時はまだこういう関係でもなかったし海の突然の告白で慌ただしかったな。
「いい天気だね!」
「曇りだけど……」
「あぅ…… そうでした」
姫花は少し挙動不審になっている。 とりあえず何か話題を振らないとと思って必死そうだ。
「なあ」
「はひッ! あー……」
「姫花無理に話そうとしなくてもいいんだぞ? 別に静かに過ごすのも悪くないしさ」
「そ、そうだね、ごめん」
「私って最初とイメージ違うよね? 陸君とこういう風になって意識しちゃうと空回りで……」
「キスもしたのにな」
「それは言わないでぇーッ! 順序がおかしくなったけど海ちゃんと空ちゃんに後押ししてもらったから…… それにしたくなかったわけじゃないから私も」
顔を覆って恥ずかしがっている姫花は確かに俺の隣で澄まし顔していた姫花とは別人みたいだけどそれはそれでいいと思うし。
「なんか私ばっかりさっきから恥ずかしい事言ってる気がする…… 」
「姫花が挙動不審だったからな」
「陸君だけズルい!」
少し頬を膨らませジトッと姫花は睨む。 だけど姫花は顔をハッとさせて向こう側を指差した。
「あ! あれ何かな?」
「え?」
姫花が指差す方向を見ると何もない。何が見えたんだろうと振り向くとほっぺに何か当たった。 姫花の指だった、ああ、そうゆうひっかけか。
「あ、あれ? 何もなかったオチでしたぁー………… 失敗した」
俺の薄いリアクションに姫花はシュンとした。 冷静に姫花の言う事やる事みてたのが冷めてるように見えたんだな。
「はぁ〜、お弁当すらまだ食べてなかったよ……」
「そういえばそうだったな。 俺も姫花見てたら忘れてた」
「あはは、私を見てて食べるの忘れるなんてまるで私に見惚れてたみたい! な、なんてね……」
「あ、それはあるかも」
「え!? じょ、冗談のつもりだったのに」
海や空も異常に警戒してたくらい姫花は可愛いし綺麗だしそれなのに変にコロコロと様子が変わるから見ていて飽きなかった。
「でも姫花ってそういう事よくありそうなのにな? だって凄え美人じゃん?」
「正直確かにそんなのはよく言われてたけど陸君に言われるのは特別恥ずかしいよ、こうして2人きりでいると特に…… あっ! ほら、お弁当食べよ?」
すると姫花はポイポイと自分の弁当のおかずを俺に渡してきた。 そんなくれたら食うのなくなるじゃん?
「姫花こんなに貰ったらお前のなくなるぞ?」
「あ、そうだね。 いつも海ちゃんと空ちゃんがあげてたからこれくらい食べるのかな?って」
「結構大変なんだ、あいつらがよこす分まで食べるのって。 でも2人ともなんか俺の為に作ってるから残すわけにはいかなくてさ」
「空ちゃんなんて特に一生懸命作ってるもんね」
「そうだな、もう空の料理も十分美味しいけどな」
「あのね! 私も隙があったら…… じゃなかった、タイミング良ければあげたいなって思ってたんだよ? 私もそれなりに頑張ってるんだけど…… 食べて欲しいな」
姫花の置いたおかずを見る。 だからこんなに俺にくれたのか…… だったらちゃんと食べてやらないとな。 まぁ腹も減ってるし姫花もいつもは海と空に遠慮して渡せないなら今回はやっぱりタイミング良かったって事だよな。
「もしさ」
「え?」
「姫花が遠慮してあげにくくても海と空は気にしないから遠慮なく俺にあげていいよ?」
「でも陸君さっき言ってたように私まであげたら多過ぎるんじゃない?」
「まぁそうかもしれないけど俺がこういう付き合い方したんだからしっかり3人分なんでも付き合っていかないとな。 偉そうに言う事じゃないけどな」
そう言うと姫花はクスクスと笑っている。
「ふふッ、ごめん。 確かに周りから見たら陸君って只者じゃないのか遊び人かな? のどっちかに見られちゃうよねって思ってさ、あはは」
「やっぱそう思うよなぁ」
「うん、でも私は陸君はそんな事ないと思ってるよ? 海ちゃんも空ちゃんも私も陸君の事好きだしさ」
「あ、ていうか……」
「ん?」
「いや、なんでもない。 今日は部活は行かないでそのまま海と空の家にお見舞い行こうな?」
「うん!」
ちゃんと普通に話せてるじゃん? 俺と姫花は。と言おうとしたがやめた。変に意識し過ぎるからな。
姫花はいつの間にか俺と肩と肩をピッタリくっつけて弁当を食べていた。




