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「あー、今日から部活ねぇ」
「どうしたのよ? バレーボール部入りたいんでしょ?」
「それはそうだけどその間海ちゃんと姫花にりっくんを独占されるよぉ」
「いいじゃない? 終わったら陸に甘えれば? 」
ちなみに新井と井上は他のサボり部に行く事にした。 なので部活の間は海と姫花と一緒というわけになる。
「あ、そうだね! それと部活行く前にりっくんに思いっきり甘えればいいか! ね? りっくん」
「甘えるって何するんだよ?」
「じゃあとりあえずハグして!」
「ハグって……」
ここは廊下でしかも周りに人がいる。 こんな所でハグする勇気はない……
「ほらぁ〜、りっくん来て?」
空は両手を広げて俺を待っている。
「陸してあげなよ? 周りの人が気になるの? それとも誰か他に気になるの?」
そんなわけないとわかっているくせに海は俺にそう言ってきた。
「はぁ、わかったよ」
空の前に行くと空は思いっきり抱きしめられた。 空が俺を抱きしめるから周囲も見ている。
「はあ、これでこれ以上陸に付く悪い虫が近付かなくなればいいけど……」
あ、それで海は空を使って牽制してるのか。
「あ! 空だけじゃダメよね? 新井君や井上君ほどしつこい人がいるかわかんないけど私達も気を付けなきゃね? 退いて空」
「え?」
海は空を押し退け周りに見せ付けるように俺に抱きついた。 海ってどんどん容赦なくなってきた。
「あー! 海ちゃん今あたしに向かってあっかんべーした!」
「もう空にも容赦しないもん。 ていうか私達はもう体は大人みたいなもんなんだから小中の時とは違って運動神経いいだけじゃやっていけないのよ? 空」
「海ちゃん自分が抱きつきたかったけど最初は恥ずかしいからって敢えてあたしに抱きつかせて周りの反応も見ながら抱きついたでしょ!? 海ちゃん腹黒……」
「あはは、バレた? 私って陸の事になると他の子に対して性格悪くなるみたい。 でも空の事は大好きだよ?」
「いたッ」
空は海にデコピンしてそう言った。
「もう〜。 なんか海ちゃん昔に戻ったみたい」
「そうだな、なんか明るくなったな」
「そうかな?」
海は二へッと笑ってみせた。 ずっと昔によく俺と空に見せていたような笑顔だ。
「あ、陸君達まだここにいたの?」
「まだいたの? じゃないでしょ? 姫が来るの待っててあげたんでしょうが」
「え、私を待ってたの? 空ちゃん部活行かなくていいの?」
「んー、流石にそろそろ行った方がいいよねぇ。 姫花も来たし、じゃあ行こう!」
体育館へ向かっている最中海が煩わしそうにしている。 それは姫花が海の横顔見てニコニコしているからだ。
「さっきから何?」
「海ちゃんでしょ? 私を待ってようって言ってくれたの」
「陸か空かもしれないでしょ?」
「そうとも思ったけど陸君と空ちゃんは後から気付いて戻って来るタイプだからそういう所は海ちゃんがしっかりしてそうだし」
まったくもってその通り。 俺はいつものように3人揃ったからじゃあ行くかと言ったら海が「姫の事忘れてない?」と言ってきたのだ。 勿論後から気付いて戻っただろうけど。
「凄ーい! 姫花大正解! いやぁ〜、つい癖で。 ごめんね?」
「フフッ、そうだと思った。 ね? 海ちゃん」
「ふん、私も忘れてたフリでもしてた方がよかったかしら?」
海はプイッとそっぽを向くが言い当てられた事が恥ずかしかったのか顔が少し赤くなっていた。
体育館に着くとみんな来ていて空はまだ余裕だよと言っていたが空気的に大遅刻だ。
そんな空気を物ともせず空はズンズン進んで案の定顧問から怒られていたけど数分後にはすっかり馴染んでいた。
「よくあの空気の中へらへら行ったわね空。 どういう神経してるのかしら?」
「まぁ空は好かれやすいからな。 でもあの感じだと大丈夫そうだな」
「じゃあそろそろ私達も部活行ってみる? なんか行かなくても良さそうだけど」
「あ、そうそう! この時間使って陸に勉強教えてあげるよ」
「じゃあ私もついでに協力するね陸君」
「え? まだいいんじゃないか?」
「いつもそうやって先延ばしにするでしょ? そういえば姫って勉強できるのよね? じゃあお手並み拝見しようかな」
授業が終わってまた勉強とかって家にも帰ってないのに勘弁して欲しいがもうそんな事言えないくらい話が進んでしまった。




