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そろそろHRも始まるし教室に戻ろうという事になった。 すると姫花が俺に向かって言った。
「えっと陸君、手握ってもいいかな?」
「え?」
姫花は海と空を交互に見てそう言った。 なんか2人に許可を求めているようだ。そんな風にされると俺も2人を見てしまう。 そんな姫花に海は溜め息を吐いた。
「別にいいよ、いちいち何かやる度に私達を見なくても。 大きな抜け駆け以外だったらね」
「そうだよ、あたしもりっくんといろいろしてるもんねぇ。 ね? りっくん!」
「いろいろって何? 空……」
海が空を睨んだ。 なんかここ数日の海ってちょっと怖くなったというか昔みたいになった。
「あ、あはは…… 海ちゃんが言う大きな抜け駆けなんてしてないよ」
「そう、ならいいわ。 こんな感じなの。わかった?」
「えっと…… これから勉強してくね。 陸君、じゃあ失礼して!」
姫花が意を決したように俺の手を握った。 だけどそれだけで姫花は微動だにしない。
「えっと…… 姫花?」
「あ…… ごめん! 実は私まだ誰とも付き合った事なくて、これ自体どうカウントしていいかまだよくわかんないけどこの後どうしたらいいかって…… 今までは陸君にクールで謎めいた雰囲気で接してみようとか思って少し気取った所とか見せてたけどって…… 私何言ってんだろ? 恥ずかしい……」
クール? 謎めいた? そんな感じはあまりしなかったけど、ふふん、私結構お見通しみたいな雰囲気は出てたな。
「姫って勉強は出来るようだけど結構おバカさんなんだね、なんか空みたい」
「あはは、ほんとだ! …… ってあたしをバカにしないでよ!」
「あ、てかそろそろ本当に戻らないとマズくないか?」
「あ! 本当だ、姫が硬直してるから遅れちゃいそうじゃない」
「ほら行くぞ? 姫花」
「え? あ、うん!」
姫花の手を引いて駆け足で教室に戻った。 なんとか間に合い席に座った。
「ふう、また注意される所だった」
「え? 」
ああ、教科書忘れた時か。
「私って結構動揺しやすくて…… 海ちゃんの告白聞いた時やっぱりって思ってずっと考えてて…… ってそんな次の日まで考えたの?って感じだけど」
姫花は戯けたように舌をペロッと出して笑った、姫花ってこんな表情も見せるんだなって思った。
午前中が終わり昼休みになると姫花が俺達の所へ来た。
「今日から私もこっちに来るね? 」
「そうなると思った。 いいよ別に」
そんな俺らに新井と井上がキョトンとする。 姫花が言ってたな、はっきりさせたら?って。 もういいかもな…… 新井が口を開いた。
「神城、どういう事だ?」
「ああ、俺さ、海と空が好きなんだ」
「は? お前はただの幼馴染なんじゃなかったのか?」
「…… そう思ってたのは間違いっていうかごめん、俺そんな風に思わないようにしていたのがあって」
「ますます意味わかんねぇ、結局神城は誰が好きなんだ? 夕凪か? 星野か? それともここにいきなり来た佐々木か?」
「3人とも……」
「「はあ!?」」
新井と井上はそう声をあげるがおかしいのは俺の方だから仕方ない。
「お前何堂々と三股宣言をしてんの?」
「それに他の3人はそれでいいのか?」
「私は陸がそれでいいならいい」
「あたしも」
「私もそうだね」
3人が受け入れている事に更に驚愕する。
「まぁ夕凪と星野からはそんな感じが伝わってきたけど佐々木もなんて……」
「俺らお前がはっきり好きって言わないし夕凪と星野がその気でもお前はそんな気ないならチャンスあると思ってたのに」
「てかバカじゃねぇの? 神城に3人も相手に出来んのかよ?」
「それは……」
「陸なら出来るよ? 1人増えた所で変わらないし私達そんなにもうその事で陸の事困らせたくないもの」
「うん、まだまだ時間はあるんだしさ」
「私もこれから陸君と海ちゃん空ちゃんと一緒に仲良くしていきたい」
「「…………」」
3人からそう言われて2人は押し黙る。
「俺がはっきりしないから2人にも後味悪くさせたよな? ごめん」
「…… いや、いいよ。ここまで3人が言ってんなら俺らの入る余地はないっていうか」
「逆に清々しいわ、堂々と三股宣言されてしかもそれが本人達に了承済みなら」
そして2人は互いに弁当を食べている間溜め息ばかり吐いていた。
「りっくん! あたし嬉しい! ちゃんと2人に公言してくれたね」
「まぁ姫の事がいいキッカケになったかもね。 そこだけは感謝」
「あはは…… 海ちゃんは手厳しいなぁ」
それでも3人笑っているから海も空も大分姫花を受け入れたんだろう。




