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結局あの後はいくらなんでも路上では誰かに見られるかもしれないしという事で俺は一旦家に戻ろうと言った。
寄り道しただけあって帰る頃には既に夕飯の時間になっていたのでそれぞれ家に帰った。 海と空は文句たらたらだったが。
海と空のキス…… 2人はお互いキスが出来るほど仲が良くてどっちも嫌がってなかったどころか少し喜んでいた。 2人とも見た目がとても良いしキスした時は本当に百合カップルみたいだった。
だけど本当に2人が好きなのは俺で…… なんか考えてたら頭がこんがらがってきた。
海と空はキスをした、それは確かだ。 そしてそんな2人を見てエロいというかなんだか2人に対して俺はいやらしい事を考えてしまった。
海と空に俺は幼馴染としてではなく男としていやらしい事を思ってしまった。 例えば海と空を抱いたらどうなるんだろう? とか2人に少し欲情してしまったと言った方が正しいのか。
「陸、箸が進んでないけどどうした?」
「帰ってくるの遅かったからどうせどこかで何か食べて来たんでしょ? 海ちゃんと空ちゃんと一緒に」
「陸はあんな可愛い子達が幼馴染で本当に運がいいよな、お父さん羨ましいぞ?」
父さんがそう言うと母さんの肘が父さんの脇腹に食い込んだ。
「あなた、私が居るでしょう? 」
母さんにギロリと睨まれ父さんは縮こまる。 俺も母さんくらい綺麗な顔してたらモテる自信はあるんだけどな。
そんな無駄な事を考えて夕飯を食べ終え部屋に戻った。 今頃あいつらどうしてるかな? そうしてしばらく携帯でイヤホンを付けて動画を見る。そんな感じでしばらくボーッとしていた。
眠くなってきたので音楽を聴きながらベッドに入り少し仮眠でもしようと思い目を閉じる。
そしてもうよくわからなくなった頃不意に片耳のイヤホンが誰かに取られた。
「陸…… 起きて」
眠気を覚ますようなとても色気のこもった声だった。
「海?」
「残念! 空でしたぁ」
空!? 先ほどの補正があるとはいえ聞いた事のないような空の声でビックリした。 呼び方も海みたいだったし。
キョトンとして空を見てると空の少し後ろで頬を膨らませてムッとしている海の姿があった。
「私と空の声を聞き間違えるなんて……」
「あははッ、りっくんあたしに見事に騙されたね!」
「呼び方からしててっきり海かと…… ていうか眠かったし」
「そんなの言い訳だもん。 陸、罰として私にキスしなさい」
「あ! ズルい海ちゃん! そういう事ならあたしだって海ちゃんに間違えられたんだから罰としてキスして!」
此れ幸いと2人はさっきの続きをしようと俺に迫った。 でもさっきの光景を見て俺は2人とキスをしてみたくなっていた。 俺もこんな年頃だし…… 確かに普通の幼馴染より俺達仲が良い気がするしキスしたっていいと思う。
「わかった」
「え!? 本当?」
「本当に陸とキス……」
2人は俺がわかったと言ったら急に顔が真っ赤になりとても嬉しそうにしてた、してたのに…… 今度はなんだかいきなり重苦しい雰囲気になる。
「「…………」」
「ど、どうしたんだよ2人?」
海と空がなんかおかしい。 互いに牽制しあってるような、喧嘩になりそうな時の2人だ。
「りっくん……」
「なに?」
「どっち?」
「え?」
「私と空、どっちと先にキスをするの?」
「ちゃんとキスするんだし、りっくんにとってこれがファーストキスだよね? あたしと海ちゃんはさっきキスしたけど女の子同士だからカウントしてないし、でもりっくんとは別」
「そうよ、陸は私と空どっちと先にキスしてくれるの?」
ええ!? そんなのアリかよ? さっきまでキスしたいなんて思っていた気持ちがどんどんと萎えていく。
したら絶対喧嘩になるのが目に見えているから。 しかもそれは内容が内容だけにとても長く続くとわかる。いつまで経っても言われそうだ…… しかも俺次第だ。
海と空が怖い顔して俺ににじり寄る。 どっちと先にするのが正解なんだ? いや、これに正解なんてない。
「りっくん」
「陸」
迫る2人に俺は壁際に追い詰められた。 仕方ない……
「決めた!」
「え!?」
「どっち!?」
「2人とも近くに寄って目を瞑ってくれ」
そう言うと海と空はお互いを見て目を瞑った。 こうなったらもう早技で行くしかない。 俺は近くに寄った2人の顔を手で掴んでギュッとくっつけた。
「いたッ!」
「きゃッ!」
そして海と空の唇が近付いたので同時に2人の唇にキスをした。 2人の唇が俺の唇に当たる。 俺のファーストキスは脅迫じみた感じになって余韻とかよくわかんなかったけどこれで今後どっちが先かなんてないだろう。
「なんか思ってたのと違う……」
「私も。 それに空の顔がぶつかってちょっと痛かった」
「それはお前らが喧嘩しそうになったからだろ? 2人同時だからどっちが先とかもないしこれでいいだろ?」
「んー、 まぁそれもそっか! 流石りっくん! りっくんのファーストキス頂いちゃいました!」
「そうだね、うん、まぁいいか。 陸ようやくキスしてくれたし」
危なく修羅場になる所を切り抜けた俺はキスした喜びより2人とも険悪にならなくて良かったという思いの方が強かった。




