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「神城君、難しい顔してどうしたの?」
トイレから戻り次の授業の準備をしている俺に佐々木がそう尋ねてきた。
佐々木が俺の事を好きかもしれないという事はもうこれ以上ややこしい事になられると困る。 俺は海と空に好きだと言われた事を佐々木に言って佐々木に俺に関わらないようにした方がいいかもしれない…… 井上はまだ海の方に居るし。
「んー、なんか俺って早くも嫌われ者になりそうな気がしてさ」
「嫌われ者?」
「俺、海と空と好きって告白されてさ、だけど新井と井上はそれぞれ2人の事が好きでさ……」
「…… そっか。 でもごめん、私それ知ってた」
「知ってた!?」
俺の言葉に佐々木は「うん」と答える。 知ってたってなんでだ?
「部活見学した時に私も校門まで神城君と一緒に行こうとして追いかけたら海ちゃんと話してるの聞こえて……」
「あ、あの時か」
「ごめん、盗み聞きしてたわけじゃないんだけど入って行けなくて。 だから2人が神城君の事好きってのはわかってたんだ。 ううん、でもあの2人は最初見た時から神城君の事好きだってのはなんとなくわかってたけど」
「そうだったのか……」
あれ? てことは別に佐々木はそこまでわかってたって事は別に俺の事は眼中にないんじゃないか?
「新井君と井上君は2人に自分達はまったく気にもなってないってわかれば手を引くんじゃないかしら? だってダメ元でみたいな感じでアタックしてたしそれで神城君に何か言うのはお門違いじゃないかな?」
「そうかな? そうだといいけど」
そう言って佐々木は大丈夫だよと言って微笑んだ。 なんか佐々木に言ったら少し安心した。 それに佐々木はその事知ってたようだし。
そして昼休みになりいつもと変わらず新井、井上を含めた5人で弁当を食べる。 なんだ…… さっきの井上の様子からすっかり俺と一緒なんてと思っていたけど。
「陸、どうしたの? やっぱり私……」
あ…… マズい、今後こういう事無いようにした方がいいって海は考えてたんだよな。
「うん? いいや、なんでもないよ。 あ、それ美味そう」
「食べる? どうぞ」
俺が海の弁当の唐揚げを見てそう言うと海は俺にひとつ箸で摘んだ。 俺の弁当箱に入れればいいのに俺の口の目の前で箸を止める。 これはこのまま食べてと言いたいのだろうか?
「ん、ほら? 食べなよ?」
「え…… ああ、じゃあいただきます」
断ると海が傷付きそうなのでみんなが見ている前で海が差し出した唐揚げを食べる。 それを見ていた井上は……
「夕凪、俺もそれ美味そうだと思ってたんだ。 俺にもひとつくれないか?」
ぶっちゃけ海の弁当は小さい。 そんなにあげれるほど入っていない、残りひとつだというのに。 俺は咄嗟に誤魔化す為に仕方なくだったけど。 空はそんな様子を目で俺と海と井上を追っていた。だけど海は……
「…… うん、いいよ」
俺みたいに箸で摘んで差し出すのかと思ったらそのまま弁当箱を井上の前に出し取って? と言いたげだ。 俺との違いに若干井上は戸惑うが唐揚げを海から貰った。
そしてそのついでに空は海の弁当からおかずを取った。 おいおい、空まで貰ったら海の食べる分が大分減るだろうに。 海はなんて事ない顔しているけど……
「海、なんか大分減っちゃったけど俺のなんか食べる?」
「夕凪、俺のもいいぜ」
俺と井上が海に弁当を差し出す。
「ううーん。 じゃあ陸のほうれん草おひたしちょうだい?」
「え? そんなんでいいの?」
「だって陸それあんまり好きじゃないでしょ? 本当は陸が食べた方が陸の為に良いんだけど……」
そして井上からは金平ごぼうを海は選んだ。 海…… あんまり取っても問題なさそうなの選んでるな。
「海ちゃん、あたしのもなんかあげるよ!」
空は海に弁当を見せた。
「あ! 俺も星野のなんか貰っていい?」
新井も空の弁当を食べてみたそうにそう言ったが……
「ダーメッ! あたしは今お料理勉強中だから中途半端な物他の人に食べて貰いたくないし。 海ちゃんとりっくんならいつもだからいいけど」
「いつも……」
空のその言葉に新井は少しショックそうな顔する。 そして海は空の弁当からおかずを貰いあげた分くらいなんとか補充した。
「まだなんか欲しいか海?」
「ううん、もともと唐揚げは陸が好きだからあげようかなって思ってたから別にいいし…… それより美味しかった?」
「え? うん」
「そっか、なら良かった」
海は満面の笑みを俺に浮かべてそう言った。
「お、俺も美味しかったよ夕凪」
「え? ありがとう」
「お、おう」
「良かったじゃん井上君、海ちゃんの手料理食べれるなんて男の子じゃりっくん以外初めてじゃん」
井上も海の笑顔を見てすかさずそう言ったがやっぱり俺とは少し反応が違うから戸惑うが空がフォローした。 だけどそれでも俺にヘイトが向いてるような気がした。
学校が終わり放課後3人で一緒に帰っていると……
「陸、空、井上君に陸の事好きって言った事黙っててごめんなさい。 言い辛くて…… それとなんか私陸が居ると井上君に上手く接してあげられない、そのせいで陸気不味いよね? でも私が好きなのは陸だから……」
海がしょんぼりしたような感じでそう言う。
「あはは、本当だよ! でも海ちゃんらしいね! まぁ海ちゃんがりっくんを好きなのは伝わったんじゃない? あたしあの場が変にならならないか冷や冷やだったよ」
「ごめんね、空に気を遣わせちゃうなんて。 私も空みたいにああいう時ハッキリ断った方が良かったかな?」
「海ちゃんがそれやるとなんか変だしそれでいいんじゃない?」
なんだか弁当の時間が少し憂鬱になりそうだ……




