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空とのバレーボールの付き合いを終え家に帰ると俺の部屋に海が来ていた。 なんかもう今更だけど本当に自然に居るよな。 そんなに自然にお邪魔してもし俺が変な事とかしてたらどんな反応するんだろうか? 変な事って何って? それは言えない……
そんな事はさておき、井上に呼び出されて渋々行ってきたようだけど。
「お帰りなさい、陸、空」
「そっちこそ。楽しかったか?」
「あ、海ちゃん井上君とデートから帰ってたのね」
「ちょっと! その言い方やめなさい! 違うからね? 井上君がしつこくてどうしてもって言ってたから仕方なくなの」
「あ、あはは…… そりゃ行く前にも聞いたって。 そんなムキになるなよ」
別に正式に付き合ってるとかそういうわけじゃないしある程度はいいんじゃないか? なんて思うが俺が告白されたり事あるごとに2人がなんだかんだ言ってきたしな。 まぁそれは俺の事を好きだったという事なわけで。
「海ちゃんがそんな事してるとりっくんの事あたしがもらっちゃうよぉ〜?」
「別に浮気じゃないわ、やましい事なんて何ひとつしてないんだから」
いや、それ以前にまだ付き合ってないだろと海に心の中でツッコミを入れた。 この2人からどちらか選べなんて言われたらマジで困ってしまう。 だって選べないもんな。
どちらにも嫌われたくないしかと言ってどちらか1人特別扱いなんて尚更。 海と空はどちらを選んでもお互い納得するとか言ってるけどそう思えるだろうか?
俺だったら顔を合わせられなくなりそうだ。 家も両隣だから更にキツい。 まぁだから俺はいつまで経っても踏ん切りつかないんだけど。
どちらも選ばない。 そういう選択肢もあるんだ。 そうすれば3人いつまでも一緒だろ? なんて考えは最初に思い付いたけどもし海や空に誰か好きな人でも出来たらどっちにしろ3人一緒の時間なんて減ると思う。
相変わらずズルい俺だけど高校なんてまだ始まったばかりみたいなもんだしそのうちこいつらの気持ちも変わったりしてな。 てか好きだと言われてやっぱり心変わりしたなんてなったらショックだけどそこは俺の自業自得なので受け入れるしかないけどそんな場面にもし本当に直面したら?
2人とこのまま仲良くしたいけど二兎を追う者は一兎をも得ず…… 最終的に2人から見向きもされなくなりましたなんて事になったら俺って耐えられる?
「ねえ陸、さっきから私の顔見て難しい顔してるけど疑ってるの?」
「へ?」
いつの間にか海の顔を見ていたようだ。 海が本当に俺が疑っているんじゃないかと物凄く不安な顔でこちらを覗き込んでくる。
「陸…… もし陸がもう私が誰か他の男の子と出掛けるの嫌だって言うなら今後はこういう事しないから」
「あ! 海ちゃんなんかそれ彼女っぽい台詞! りっくんあたしもそうする」
海の言葉に空まで乗ってきた……
空だってどうするつもりなんだ? もしや俺がダメって言ったから今後付きまとうなとか? まぁ海なら上手く誤魔化して言うかもしれないけど空はストレートに言いそうだ……
「い、いや、落ち着けよお前ら。 2人ともお前らの事好きって気持ちには悪気はないだろ?」
「だって私にとっては陸が1番なんだもん。 こういう事は早めにハッキリさせた方が……」
「あー、でも確かに考えてみればハッキリさせたらりっくんに怒りの矛先が向きそうって事でしょ?」
流石空だ、人付き合いが上手い空はそこら辺はわかってる。
「あッ!…………」
そう言った瞬間海は少し気不味そうな顔をして顔を顰める。
「ん? どうしたの海ちゃん」
「あ…… えっと…… な、なんでもない! ごめんなさい」
「え? 何がごめんなさいなんだ?」
なんでもないようには見えないけどあんまり問い詰めるとまたなんか面倒な事になりそうだし今はいいか。
「とりあえずさ、新井君井上君にはそれとなくしてあたし達が気がないって事やんわり伝えて行こうよ? ね? 海ちゃん」
「う、うん…… そうだね。 やんわり……」
「りっくんは多少気不味くなっちゃうかもしれないけどあたしだってりっくんの事好きだし新井君とは考えられないしさ、姫花の事もあるしね」
空が佐々木の名を出し俺をジトッと見つめる。
「ええ? 佐々木は別にいいだろ? 俺だって今はそんな気ないし……」
「りっくん! 今はってどういう事かな?」
空が前のめりになり俺に問い詰める。 しまった、言い方間違った……
「あたし、りっくんの事困らせたくないけどやっぱりりっくんにはあたしの事ちゃんと考えて欲しいし横から出てきた姫花の事気になるなんてなんか悲しいよ。 そりゃあ姫花の方が可愛いかもしれないけど……」
「だからそういう目で佐々木の事見てないって」
「陸、私の事もちゃんと考えて欲しい。ていうかごめん」
「さっきから海ちゃん変だよ? それに何を誰に謝ってるの?」
「…… なんかごめん。 陸にも空にも」
空が言うようにさっきから海の態度が変だけどよくわからないままその日は終わった。




