15
「空、ちょっと味濃いよ? 陸は薄味が好みなの」
「知ってるよ、でもあたしの家だとこれくらいの味付けだからつい……」
「陸に美味しいって食べてもらいたいんでしょ?」
「う、うん! じゃあお水足そう……」
2人はキッチンで夕飯を作っている。ちらほら俺の名前が聞こえるからついつい反応してしまう。
別にいつも通りの空の家の料理でも良いんだけどな。 出されたものに文句言う気もないし。 だけど一生懸命作っている空を見てると何も言えないな。
「りっくん! 待たせてごめんね?」
「それは全然いいけどさ、俺も何か手伝う?」
「ダーメ! 出来るまで待ってて? 海ちゃん居るしちゃんと美味しく作るから!」
「だってさ。 じゃあ陸はお風呂にお湯でも入れてて?」
海にそう言われて俺は風呂場に行った。 蛇口を捻って浴槽にお湯が張るのを見ながらさっきの光景を思い出す。 2人とも今日はいやに大胆だったな……
本当に子供の時に戻ったみたいだ。 だけど体と心は成長してるのでそんな風にも思えない。
そういえば昔はよく3人で風呂にも入ったな。 あの時は大きく感じた風呂も体が大きくなった今ではとても狭く感じる。 そう思っていると視界がいきなり真っ暗になった。 これは手?
「誰だ?」
「海?」
そう言うと手がパッと離れ後ろを向くと海が居た。 料理してたんじゃ?
「煮えるの待ってるだけだからそこは空に任せて陸が遅いから見に来たの。 どうしたの? お風呂場でボーッとして」
「ああ、なんか昔を思い出してさ。 よくこの風呂場でも一緒に遊んだなって」
「そうだね、あの時は小さかったからみんなでワイワイ入れたね。 またそうしたい?」
「んな事出来るわけないだろ? お前ら今日はいやに大胆だよな」
そうすると海は俺に近付いた。ぶつかると思うくらいだったので俺は後退さる。
「出来なくないよ? 今だって一緒に入れるよ。 陸がそうしたいならそうしよっか?」
「い、いいって! お前何言ってんのかわかってんのか? そんな事したら空と海の親に俺殺されるって」
「言わなきゃバレないよ? それに私と空が陸が怒られるような事言うと思う?」
いやぁ、それとこれとは別で…… 俺が気不味いだろ。
「2人とも遅いよ、何してんの?」
俺と海が風呂場からいつまでも出てこないから空が見に来たようだ。
「空、陸ね、昔3人でお風呂入ってた事思い出したみたい。 懐かしいよね」
「じゃあ今日久しぶりに3人でお風呂する?」
「私もそれ今陸に話してたの」
なん…… だと!? 高校生にもなって男女で一緒に風呂なんて間違いしか起こらねぇじゃねぇか。
「じゃあ決定! 一辺に入った方が早く済んで一石二鳥だしね! あ、海ちゃん、煮えたから来て」
「うん、じゃあ陸も戻ろう? もうお湯溜まったでしょ?」
「え?」
気付けば風呂はもうお湯で満たされていたので俺は蛇口を閉じた。
いくらなんでも冗談だよな?仮に入ったとしても浴槽に入りきれないし。俺は風呂場から出てリビングへ行くともう2人は皿を並べ始めていた。
ご飯と鳥肉のトマト煮と春巻き、サラダ、味噌汁が並べられた。
「なんか変に狙ったものじゃなくて普通の家庭料理っぽいのをりっくんに食べて貰いたくて地味かもしんないけど……」
「いや、美味しそうじゃん? 海と一緒に作ったとはいったってここまで出来るんだな空って」
「えへへ、どうぞ召し上がれ!」
とりあえずトマト煮を食べてみる。 うん、 海がちゃんと俺が薄味が好みと言ってたのでちょうど良い味加減だ。 まぁ作ってもらってる身分だから味が濃くたって文句言う気はなかったけどな。
「りっくん、どうでしょうか?」
空が不安そうな表情をして聞いてきた。海もこちらを伺っている。
「うん、凄く美味しい」
「本当? やったよ海ちゃん!」
「良かったわね空」
空はご機嫌になりあれもこれもと薦めてきた。 本当に嬉しいんだな、そんな空を海も笑顔で見ていた。 そして夕飯を食べ終わると海と空は片付けをしていると……
「陸、お風呂入っちゃいな」
「あ、うん。 そうするわ、なんか俺が先に入っちゃって悪いな」
「りっくんは一応お客様だからね! どうぞ!」
「私もお客様なんだけど……」
なんだ、やっぱり1人か。 良かった、やっぱりさっきのは冗談だったんだな。 俺は風呂場に行き浴槽に浸かった、空の家で風呂入るなんていつ以来だろう? そう考えながら入ってちょっと経つと…… ガララと風呂場の扉が開く。 俺はビックリして急いでタオルを取った。
ほ、本当に入って来やがった! 一体どっちが!? なんて思うと扉からヒョコッと海が顔を出した。
「陸、いいよね?」
よくない…… まったくよくない!