12
明日から高校は春休みの課題テストと在校生の対面式だ。 まぁ午前中で終わるからいいけど。 そして今は海の部屋にいる。 俺はなんか疲れたので当たり前のように海のベッドに入る。
それを海はニコニコしながら見ていた。 普通はいきなり女の部屋のベッドなんかに入ったらドン引きものだが小さい頃からやっているので海も空もなんとも思わないから楽だ。
だがさっきは喧嘩になりそうな雰囲気だったので今も若干その空気も引きずってはいる。
「陸、横になってもいいけど寝ちゃわないでよ?」
「え!? いつも眠そうな海ちゃんなのにそんな事言うんだ?」
「失礼ね! 私が眠いのは夜とか結構勉強してるからよ!」
「あー、確かにあたしら3人でりっくんの部屋で遊んでる時も気付いたら勉強してるもんねぇ。 海ちゃんのガリ勉!」
空の発言に海は多少イラッと来たようだが息を整えてちょっと待っててねと言って下に降りていった。
「海ちゃんどうしたんだろうね? りっくんの家に集まるかと思ったけど」
「さぁ? 俺は毎回来られて煩くて仕方ないからいいけどさ」
「ああ! またそれ! りっくんあたしら中学ではツートップって言われるくらいモテてたのにそんなあたしと海ちゃんがお隣でよくそんな事言うよね?」
「俺は昔からのお前ら見てるから別になんとも」
「ふふーん、まぁそんなりっくんだからいいんだけどね! けどこの贅沢者め!」
そう言って空が俺をくすぐって戯れていると海の足音が聞こえ部屋に戻ってきた。 ドアを開け体を半分出して言った。
「まったく…… 2人とも煩いんだから。 下で上でドタバタしてるの聞こえるわよ?」
「あははは、怒られちゃった。 ごめん海ちゃん。 ほら、りっくんも」
「お前のせいだろ?」
そんな俺達を見て海は溜め息を吐くがまた気を取り直し真顔になった。
「で? 海どうしたんだ?」
「今日はね、無事に陸と空と同じ高校に入れたし、それに入学式だったから……」
海はドアからヒョイッと隠していたケーキを俺達の前に出した。
「え? 海ちゃんそれは?」
「作ったの…… お祝いしたくて」
「海が?」
「うん……」
海は少し照れたようにテーブルにケーキを置いた。 そして……
「今更だけど陸、空、やったね! それに同じクラスにもなれたし私嬉しい!」
大人しい海が弾けるような笑顔になりテンション高めにそう言った。 小さい頃を思い出すな。 そして俺と空に抱きついた。
「海ちゃん…… 」
空は少し涙目になっていた。 嬉しいんだろう、さっき俺の事で喧嘩したけどこれならちょっと気不味い今の空気も吹き飛ぶだろう。
「海ちゃん、さっきはごめんなさい。 あたし無神経だった、大好きな海ちゃんなのに……」
「ううん、いいよ。 空のそういう真っ直ぐな所大好きだよ? なのに私も意地張っちゃってごめんね」
「なんていうか…… 海、ありがとな。 こんなの用意してたなんて」
海は俺と空から離れて「ケーキ食べよ?」と笑顔で言った。 空はもう泣いてうんうんと頷いて海に頭を優しく撫でられた。
海はケーキを切り俺と空に召し上がれと小皿に分けた。 そして空はパクッと一口食べる。
「海ちゃんのケーキ凄く美味しい! いいなぁ、あたしも作れたらな……」
「じゃあ一緒に練習しようか? それで陸に食べてもらおうよ?」
「あ! それいいねぇ! りっくんに美味しいって言わせるまで頑張っちゃおうかなぁ」
「俺どんだけ食べさせられるんだよ?」
「酷い! 海ちゃん教え上手だからすぐ上手に出来るようになってみせるよ、それにあたしやれば出来るもん、りっくんのプラモデルだって作れたし」
ああ、そういえばそうだったな。 意外とすぐに上手に作れるようになるかもな。
そんな俺と空を見て海は微笑んでいた。 海のサプライズのお陰でさっきまでの微妙な空気が吹っ飛んで良かったよ。 ありがとうな海。