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鞘と刀

作者: 馬鹿な男

 馬鹿な女と同居している。二十九を迎えた夏。いわゆる男と女のような関係ではなく、ただの同居人。出会いも覚えていない。しかし、鞘に収まる刀のように、ごく自然と受け入れた。他愛のない会話が、たまに花を咲かせることもある。しかし、そうでないことがほとんどだった。世間的に言えば、結婚していてもおかしくない、してなくちゃいけない、そんな年齢だ。しわの数に見合う人生を歩めてはいないことを、私は誰よりも知っている。それは、この馬鹿な女も一緒だろう。フェミニストを敵に回したくはないが、女の方こそ焦るべきだ。昔つきあっていた女がことあるごとに言っていた。やれ羊水が、やれ卵子が、と。正直そんな話には髪の毛一本ほどの興味もなく、知らぬ間に女は消えていた。女は癇癪を持つ。それは、ほとんどすべての女がそうである。それは、まぎれもなく不幸なことであるが、幸いなことに女は自分を客観的には見られないようになっている。そうでなかったら自分の行いを恥じ、道を歩くことも出来なくなってしまうではないか。もし、癇癪を持ちながらも、世に出ることができる女がいるならば、きっとその女は、化粧でもしているに違いない。女は言う。化粧をするのは礼儀だと。肌の色は変わり、目立つシミを消してかと思えば、無かった眉が生えてくる。子どもの似顔絵でもそう都合よくはいかない。これはあった方がいい、これはなくていい。親からの贈り物に感謝の一つもない。きっと高く売れるなら家宝は売ってしまうだろうし、近隣にわけのわからない発電所ができることになっても何の文句も持たないのだろう。女は嘘をつく。これはなかなかやっかいだ。男は人を騙す。詭弁が得意で、よく女は騙されている。口が達者な男は信用してはいけない。だが女は自分を騙す。自分が話したこと、したことを平気で捻じ曲げ信じ込んでしまう。まるで悪気が無い。無邪気とはよくいったもので、邪な気持ちを持たず人に害をもたらす生き物が、この世で一番たちが悪い。施しようがない。道が分からないのなら正してやればいい。そのためにヒトは言葉を扱うようになった。しかし、道がわからないこともわからない生き物にはどうしてやればいい。昔から、人は言葉の通じない生き物に餌をやる。最もわかりやすく生きるために必要なものは食べ物だからだ。だから男は女を食事に連れていくし、女はそれを当たり前だと感じている。辟易してしまった。思いやることも、信じることも、諫めることも。私がやってきたことは、何一つ意味はなく、一つの例外もなく生き物の枠を越えることはなかった。女が悪いのではない。そういう生き物なのだ。癇癪を持ち、化粧をし、嘘をつく。そういう生き物なのだ。もし、そうでない女がいるならその女は馬鹿だ。癇癪を持たず、自分を制し、化粧をせず、自分を飾らない。嘘をつかず、自分を偽らない。もしそんな女がいるならきっと私はその馬鹿な女のそばにいたいと考えるだろう。きっとその女の言動一つひとつが、私の視線が離れることを許さない。私の意識の真ん中にあぐらをかき、君主制の時代に暴君がそうしたように、私の持つものすべてをその手に収めるのだ。きっとそういう出会いだった。刀は私だった。


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