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第3話 言い合う二人


 制服の上に白衣を纏ってる奴と言えばゲーム部か科学部で別れる。見分けは多分つかない。


 しかし、何かを言い合う二人は別だ。さらに体育館で見た事がある。


『やっぱりあんたが早まらせたからよ!』


『僕が全ての原因って言うのかい? だいたい――』

 

 そう、マイクを奪い合っていた女性部員と青年。



「今は争う時じゃないだろ?」


 見てられないので俺が仲裁に入ってみると。



「黙っててちょうだい」


「一般人は来ないでくれ」


 とか言いながら二人は人差し指を立ててきた。


「……続けるよ、昨日のテストは問題無かったと言い切れるかい?」


 文化祭は今日で二日目。屋台を楽しむ暇を惜しんでまでチェックしたみたいだが、このザマらしい。


「当然よ!」


「じゃあ、放課後に打ち込んでいたデータは?」


 衝撃の事実にダンマリ……かと思われたが「簡単な事ね」あっさり流した。


「今回の企画は何を売りにしてたか覚えてる?」


「こちらが用意したモンスターとファンタジックに戦えたり、小説みたいな魔法を体感できるとか」


「そのモンスターのステータスを弄ってたわ、部長の方針にはそぐわなかったもの」



「……そ、それは本当かい!?」青年はひどく驚き、女性部員を指さす「部長が言ってたじゃないか! 強くしすぎたら体験者が死ぬって!」



 それを聞いた女性部員はいかにもやってしまったという具合に口をあんぐり。咄嗟に手で顔の下半分を隠した。


「でも適当にバグってそれは避けられたわ!」



「範囲が広がっただけだろうが!!」


 青年は問題性を理解していないような彼女の姿に怒鳴り散らした。人目をはばからない彼をなだめるように、俺は間に入る。


「待てよ、さっぱり追いつけない」


「……また君か」気を取り戻した青年はため息を()いた「何が追いつけないんだい?」


「なんで強くしすぎたら死ぬんだ? 所詮ゲームだろ?」





「あまり大きな声で言えないけどバグらなくても円に映ってた物は存在したのよ」女性部員が話を引き継いだ。


「つまり?」


「始めから私達が生み出した本当のモンスターと本当に戦ってもらうつもりだったの」


「……」


 だから体育館に異変が起きる前にスピーカーで呼びかけられたのか。そうでも無ければ実際にゲーム内の存在が体育館を蹴破るなんて想像出来ない。


 現実に干渉するように作っていたら想像は容易だ。


『こうなったのは本当(ガチ)の大問題かもね』



 どんな科学を利用すればそんな事が出来るんだろうか。


 さらに聞こうと思った辺りで青年が割り込んできた「話を変えよう、体育館に現れたゴリラマックスのステータスはどうしたんだい?」



「攻撃力つゆだく、守備力ねぎだく……と言えば分かるかしら」


 青年が小声で「最悪だ」と言ったのは聞こえた。


「ば、バランスは取ったつもりよ! 代わりにモーション速度を落としたし!」



「はぁ……」


 俺もゲームをするから彼のため息の意味がわかる。そんな事を思っていると彼は俺を見ておもむろに口を開いた。



「僕は岩西(いわにし)拓夢(タクム)」名を名乗った上で『君に頼みがある』と言った。


 どうやら、青年は名前を言わずに物事を押し付けるのは好きじゃないみたいだ。


「なんだ」


「部長達は体育館に残ったんだろう? ならゴリラマックスとまだ戦ってるはずだよ。しかもこいつのステータス改ざんを知らない」


『こいつじゃない! 鳳凰(ほうおう)(メグル)よ!』



「巡ってくるのは不幸だけにして欲しいものだね」咄嗟に噛み付いたメグルを受け流し「この状況の打開を頼めるかい?」と言った。



「俺がアレを倒すのか」


「これでね」


 タクムが2本の巻物を差し出した。巻物と言ってもテスト用紙を持ちやすく巻いたような簡単なものだ。


 もちろん答案などは書かれておらず、代わりにカタカナの文字が刻まれている。


「こんなゲームあったよな」


 ファンタジックに戦うってこういう事か。



 俺はブレザーの隠し胸ポケットに仕舞い込み、手に剣が現れるか確認した。


 何か出したいと思いながら手のひらを伸ばしてグーにすると軽く出てきたので問題ないだろう。



「それ……自分で出せたのかい?」


「いや、体育館で闘ってる人から」


「へえ」


 巻物でゴワゴワする胸を抑え込みながらその場を後にする。




 階段のドアを開けた時、ありえないモノを見るような目で生徒に睨まれた。そもそも屋上を出る事はなんらおかしくないはずだが。


 トイレは屋上に無いんだから。



 でも、そんな奴が剣を握りしめてたらおかしく見えるかもな。







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