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プロローグ


 井上(いのうえ)高校の体育館では文化祭の目玉イベントが始まろうとしていた。


 分かりやすい白衣を身に纏った生徒達が一台のパソコンと全校生徒が入れるほどの大きな円を交互に見ている。


 俺を含めた制服の観客は、円の外で今か今かと白衣の動きを目で追いかけながら待ちわびていた。


「まだか……?」


「遅いよな……」




 何を待っているのかと言うと井上高校ゲーム部が総力を上げて生み出した新感覚ゲームだ。



『フィールド・リアリティは予期せぬ脆弱性が見つかり、調整に時間がかかっております』



 俺達が今までプレイしてきたのはヘルメットみたいな被り物をして行うVRゲーム。それでも充分なリアリティ体験を味わえたが、プレイ中は無防備になったり家でしか出来ないという問題点があった。


 しかし、ゲーム部が発表したのはヘルメットを着用せず、眼前の円内だけを実際にゲーム空間へ仕立て上げるという物。


 当然ながらこんなシステムは世に出ていないが、こんなものを誰よりも早く作れる高校(ここ)は異常かもしれないな。


「まだなのか!」


「早くしてくれ!」


 配られたチラシでは12時から体験会が始まると書いていた。しかし、時計の針は大幅に過ぎた13時になろうとしている。


 怒るのも無理はない、俺も遅れる事が分かっていたら二階のパフェを食べてから行くのに。



「もう暫くお待っ――」


 女性部員の声がスピーカーから響き、すぐに途絶える。どうやらマイクを隣りの青年が奪ったらしい。



「すぐ始まりますので!」


「あれはまだ……」


 またマイクの声が切れた。彼らは何かで揉めているのは分かったが男子生徒の声援に掻き消されて分からない。


「うおーー!!」


「ようやくか!」


 歓喜に応えるように円の真ん中に心臓のような物体が浮き始め、空き缶から小綺麗な剣まで色々な物が出現していく。


 いくら目を擦ってもそれは今まさに、目の前に存在しているかのようだった。


 いや、存在しているとしか思えない。


「すげぇ……」


 跳ねるように鼓動するリアルな心臓に目を奪われていると、急に辺りが微かに揺れた。




 ドシンドシンという音と同時に。




「これも演出なのか!」


「興奮してきた!」


 俺も最初はそう思っていたが、振動が近づき始めた辺りで違和感を覚えた。白衣のゲーム部員が忙しなく動く姿に胸がザワザワする。


 途端にスピーカーの電源が入り、女性の声が響いた。


『早く逃げてください!!』



 その刹那、体育館の舞台側に大きな切れ目が走った。



 壁を貫いた大きな爪が現れ、メキメキと緞張を巻き込みながら引き抜かれる。



「なっ……」


 バラバラと壊れて露わになった体育館の奥には、見たことのない大きな化け物がそこに居た――








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