第4話 マダラ
マダラさんにこの学園のルールや、アイドルについて色々教えながら学園内を案内していた。
彼女は好奇心旺盛で、私の話すこと一つ一つに目をキラキラさせ、なぜか羽をパタパタと微動させながら聞いてくれた。
「しかしマイよ、妾をイドラにしようとはお主はセンスがいいな!妾を召喚したことも誉めてやろう」
「いえ、まぁその…。でもマダラさんをプロデュースできるなんて光栄です!」
守りたくなるような女の子を念じたら召喚できてしまった、とは言えるわけもなく私は言葉を濁す。
でもこの子とこれから共に歩めるのは、本当にとても光栄なことだった。
「まあな、妾はイデア界で最も美しい女と名高い。強く期待してよいぞ」
「はい。あ、でも…」
「ん?なんだ?」
「マダラさんのようなお姫様を、この世界のアイドルなんかにしちゃっても大丈夫なのでしょうか…?その、王族ですし色々とマズイんじゃ…。それに目的が目的ですし…」
「ああ、そのことか。それなら問題はない。妾が乗り気なら父上も多少のやんちゃは大目に見てくれるであろう、妾は次女だからな。王族というよりただの金持ちのボンボンと見ても構わぬ」
「はあ、そういうものなんでしょうか。あまり目立つのもどうなのかと…」
「そういうものなのだ。つべこべ言うな。それに姉様を捜索のためには都合が良いとも捉えられよう」
「んー、なるほど?」
イマイチ納得できなかったが、乗り気ということを知って、心なしかとても浮ついた気分になってしまう。
「ところでマイ、今から何をするのだ?一通り校舎内は周ったようだが」
「そうですね、まずはマダラさんの特殊能力などのプロフィールを確認しましょう」
「プロフィール?」
「はい、アイドルにとってプロフィールは最重要事項ですから」
「そうなのか?」
召喚したイドラとは、まずプロフィール確認をすることが大切だ。
そこで特殊能力などを改めて確認して、これからの方針を決めていくので、極めて重要なプロセスになっている。
「この部屋ですね、入りましょう」
プロフィールの確認は機械によって認識され、専用の部屋までちゃんと用意されている。
部屋の中は機械が機械的に羅列されているだけで閑散としていた。
「では、この画面に手をかざしてください」
「こうか?」
「はい、上手です」
マダラさんが大きな機体の画面に手を当てると、それは大きな音を立てながら処理し始めた。
「暫ク、ソノママオ待チ下サイ」
「おお、この機械喋ったぞ」
「この世界の機械は喋るんですよー」
「面白いな!」
目を輝かさせる彼女は本当に可愛かった。異世界は少し文化が遅れているのだろうか、それとも彼女が箱入り娘の世間知らずなのか判断することはできなかった。
でも機械が喋ったくらいで感動してる姿が可愛いので、そんなことはどうでもいい。
「データ確認シマシタ。画面ヲ、ゴ覧クダサイ」
画面にはマダラさんのプロフィールがズラッと羅列されていた。
身長体重や趣味など幅広く、赤裸々にマダラさんのことが書いてある。
「むっ、なんだか字が多いな…。マイ、読んでくれ」
「あ、はい」
私は言われたままにプロフィールを読め始める。
「名前はマダラ。この世界だと年齢13歳、身長142cm、体重は魔王kgと…………魔王kg?」
「続けろ」
「あ、はい…。ここでの誕生日は12月25日、血液型P型、趣味お菓子作り…。ギャップ萌えですね?お菓子作りなんて可愛い!」
「うるさい!いいから続けろ!」
「うっ、えーっと。特技はピアノ、好きな食べ物がローストビーフのヨークシャープディング添え、好きな色が黒、だそうです。なんか急に魔王っぽくなりましたね」
「当たり前だろう」
「えーっと、それで特殊能力が……、って、あれ?」
特殊能力を確認しようとしたが、そこで私は固まってしまった。
「どうした?」
「いや、あの…」
「なんだ?焦らすでない」
「その…特殊能力が書かれていません…」
「なんだと!?」
画面に映されていたのは「特殊能力: 」とだけ。肝心の能力については一切記載されていなかった。
マダラさんは目を大きく見開き、わなわなと困惑しているようで、空いた口も塞がらないと言った様子だ。
「異世界の住人なら必ず持ってるんですよね?特殊能力って」
「無論だ。妾にだって当然備わっておる、なんなら今ここで発動してもよいぞ」
「それはちょっと…。んー、じゃあ機械が壊れているんでしょうか…?」
「そうだ!このポンコツめ!妾が能なしだと!?笑わせるでないわ、もういい!行くぞ!」
そう言うとマダラさんはぶつぶつ文句を言いながら大きな音を立てて部屋から出て行った。
「あ、待って!」
私は慌てて機械をログアウトをし、急いで彼女の後を追い廊下へ飛び出た。
マダラさんはわりと短期な女の子みたいだ。