三歩でジャンプ
途中からセレネ視点が入ります。
日記形式崩れます。
読みづらかったら、申し訳ないです。
□月〇日
最近、本当にまわりがうるさい。
城を抜け出して、虫や魚を取ってくるなだの、セレネの家に行くな、だの。
そして、勉強しろ、訓練しろ、社交の場に出ろ、と。
とてつもなく優秀な兄上たちがいるのだし、このままいけば私は臣に下るのだから、王になるための勉強ではなく、セレネの家の婿になるための勉強と、セレネ家との交流の方が大事ではないのか?
未来の花嫁に贈るプレゼントを捕獲する方が有意義だと思うのだが。
今度父上と兄上に進言してみよう。
□月△日
父上に怒られた…。
そして二番目の兄上に「リュゼだけが婿候補とは限らないよ?」とにっこりとほほ笑まれた。
…兄上、それは、どんな意味でしょうか…。
答えを聞くのがとても怖いです。
□月×日
久しぶりに、今日はセレネの部屋へ行くことができた。
いつものとおり、バルコニーからセレネの部屋へ直行しようとしたら…。
セレネがひとりでバルコニーに佇んでいた。
遠くをボンヤリと見つめている姿はまるで。
誰かを待っているような感じで…。
ひょっとして、私のことを待っていた?
ここ数日、セレネに会いに来れなかったから。
きっと、そうだ!
そう、期待して思い切ってセレネの名を呼んでみたら…。
一瞬、嬉しそうな笑顔になったのに。
私だと認識した途端、悲しそうな顔へと変わった…。
セレネ、誰を待っていたの?
誰と間違えたの?
君の笑顔は、誰に向けていたものなの?
─セレネ、教えて。
※※※
「クロちゃんの、うそつき。」
呼べば会いに来てくれるって、言ったのに。
全然会いに来てくれない。
あの日から毎日、毎日呼んでるのに。
聞こえないのかな?
セレネの声、クロちゃんのとこまで、届かない?
どうすれば、クロちゃんに聞こえる?
聖霊様にお願いすれば良い?
クロちゃん、セレネに会いにきて。
聖霊様、お願いです。
クロちゃんにセレネの声を届けて。
お月様をじっと見つめてお願いごとを、口ずさむ。
と、その時、セレネの名を呼ぶ声が聞こえた。
きっとクロちゃんだ!
セレネの声が届いたんだ!!
嬉しくなって、クロちゃんの姿を捉えようと勢いよく振り返ったら、そこには。
クロちゃんじゃなくて、殿下が佇んでいた。
─リュゼ殿下。
はじめて会った時から、いじわるだった人。
きっと、セレネのこと、キライなんだろうな。
髪をひっぱったり、セレネの嫌いな虫とか、ヘビとか、カエルとかを押し付けて、イジメる人。
殿下のこと、怖かった。
でも、最近は。
美味しいもの、キレイなもの、可愛いもの。
セレネの好きなもの、くれる。
セレネのこと、キライじゃなくなった?
もう、いじわるしない?
あのね、セレネ、今、とっても悲しいの。
クロちゃん、会いにきてくれないの。
セレネのこと、キライじゃなくなったのなら。
ちょっとだけで、いいから。
「セレネの、あたま、なでて?」