1話 「天ぷらb」
ステラさんは、時々コーヒーを飲みながら話を続けた。
「この世の中にはたくさんの世界がある ユータロー君がいた世界に、女性だらけの世界 魔法と呼ばれるものがある世界に、科学が発達した世界 そんな風にたくさん世界が存在するわけだけれど、ある時、その世界の1つが狂ってしまう時がある 邪悪な心を持った者が現れたり、自然的な大災害が起こったり、要因こそ色々あれど、その世界が破滅してしまうようなことが起こってしまうらしい それを回避するために、神様は他の世界で亡くなった命に特別な力を持たせ、その世界へと送って要因を無くさせるということをしているんだ けれどね、神様だって時々ミスをすることがある 異世界へ送る時の呪文を間違えたり、体調が整ってなかったり、色んな理由で異世界へ送るのをミスってしまうんだ そして、そんなミスを受けた人が飛んで来るのが、このマキスマザハってことなのさ」
説明を終えたステラさんは、冷める前に飲みな、とコーヒーを飲むように促した。僕は一口頂くと、質問を投げかけた。
「つまり、僕は異世界へ行くことに失敗したってわけですか? じゃあ、僕はこのままここで過ごすんですか?」
「ううん、それは大丈夫だよ ここの世界に飛ばされたら、だいたい3日から5日くらいでまた神様が現れてちゃんと行くべき世界に飛ばしてくれるよ」
「そうですか…… ん、なぜステラさんはそんなことを知ってるんですか?」
僕の問いかけに、ステラさんはニッと笑って胸元から赤い宝石がついたネックレスを取り出した。僕は思わず、視線を逸らしてしまったけれど、それに気づくことなくステラさんは僕話し始める。
「それはね、神様に頼まれたからだよ 君も会っただろう?彼女に 彼女からね、『たまに異世界に転移させる時に失敗するかもしれません そんな時は、言葉の通じる方だけでもいいので、力になってあげてください』ってね このネックレスは神様に頼まれた証でね、この世界にはあと3人同じネックレスを持ってる人がいるんだ」
再びネックレスを胸元へ戻して、ステラさんはこちらに顔を向けた。
「だから安心して ユータロー君が異世界に行くまでは、ここで面倒を見るから」
優しい笑みとともにそう言われれば、僕は顔を真っ赤にしながら頷くことしかできなかった。
「ありがとうございます 僕にできることがあればなんでもしますので」
「ふむ もちろんだよ 君にしかできないことがある」
と、口から思わず出た言葉に、ステラさんは当然とばかりに首肯した。僕にしかできないこと、とは一体なんだろう。それを尋ねようと、口を開いた瞬間ーー
「ただいまー! って、誰かいる!」
僕の背後、扉が勢いよく開け放たれる音とともに、そんな声が聞こえたからである。驚きとともに振り返ればそこには、可愛らしい金髪の少女が立っていた。