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07


あれから小説を参考に子供たちを中心に大人の手伝いをさせるようにした、もちろん私も混じって。1年経てば組織のようになった。

更に1年経てば気のいい大人も混じるようになった。更に1年と継続させていくと貧困街は嘘のように活気付くようになった。

いつの間にか商売もできるようになり、手先の器用な者は独自の商品を作り売るようになったし、それを売るのに商人をやるものも増えた。


いまでは町も清潔になり、ボロ服を着ている住人はいない。

その町を眺めながらポツリと呟く。


「町が活気付いてきたわね」


「3年近くでだいぶ成長したよなー」


私の独り言に返ってきた声。まぁ、当たり前だ。ここは彼の家、しかも寝室なのだから。


私が貧困街の住人でもなにのに改革がスムーズに進んだのは偏にリアンのおかげだ。

リアンが私の提案に乗ってくれ、率先して動いてくれたからたったの3年でここまで改革できたのだ。

どうやらリアンは私の2歳年上だったらしい。栄養がなかったから私より背が低かったと今でも悔しそうに言う。

そしてリアンは子供たちのボスみたいな存在だった。


最初の拙い喋り方も今では歳相応より若干大人びているが、淀みなく喋れるようになった。

しかし、今はベッドの住人だが。

どうやら町で流行してしまった風邪にかかってしまったようだ。

今の季節は冬。まだ万全とはいえないこの町で風邪は脅威だったようで、感染者が続出してしまった。リアンもその一人だ。


「でもお前がまさか公爵令嬢だって知ったときはびっくりしたけどな」


「それ周りにいわないでよね」


「ははっ、言っても誰も信じねーだろ」


確かに御貴族様が元貧困街にいるとは思わないだろう。

リアンには私が公爵令嬢だと教えている。


貧困街建て直しの為に隠し事はないほうがいいと思いバラしたのだ。

最初意味がわかっていなかったが、最近やっと理解したみたいでことあるごとにそうこぼす。


「でも、ここの住民でもないのに組織の副リーダーってのはちょっと納得いかないわ」


「それこそしょうがないだろう。俺ら二人で始めたことなんだから」


「そうかもしれないけど…。もう大人だっているのよ?」


「参謀様がなにいってるんだよ」


片肘に頭を乗せこっちをみるリアン。私は少し不服そうな顔を浮かべる。

ベッドの近くに座っていた私の頭を撫でる為に伸ばされたリアンの手をみて不服そうな顔が崩れてしまった。

もうリアンの手は骨が浮き出ていない。ボサボサだった髪も今は短く切りそろえられ青紫のきれいな髪になった。


「なんだよ、どうした?」


撫でてもいないのに笑みをこぼした私にリアンが困惑していたが、こればっかりは秘密だ。

ほっこりしているとゴホッ、ゴホッと苦しそうな咳が聞こえた。


「大丈夫?私がいたら寝れないだろうから今日は帰るわね」


「あー、わるい。ヴィヴィに移ると悪いしな」


「そんなこと気にしなくて良いわよ。それじゃあね」


軽くリアンの頭を撫でてから寝室を後にする。

明日も見舞いに来ようと考え、そのままリアンに住まいをでた。


「おー、ヴィヴィ!リアンの見舞いか?」


「そうよ、思いのほか元気で拍子抜け」


「あいつが風邪引くとか鬼の霍乱だよな」


「ふふっ、そうね」


リアンの住まいを出てすぐの通りを歩くと知り合いのおじさんが話しかけてくる。その他にも外にいた人々が色々と話しかけてきてくれる。

死んだような目だった大人たちも今では目に輝きが宿るようになった。

この輝きを見るたびに小さな針が私の心を刺す。


前世の自分に反省をするつもりはない。あの頃はああやって生きていくことしか出来なかった。

だからこの刺す痛みは気のせいなんだ。


さて、帰ろう。途中で撒いてしまった護衛が泣いているだろうし。


護衛役をもらったはいいが、どうにも近くに屋敷にある気配が近くにあることに慣れず、細道を使い撒いてしまう。

そして護衛役に泣かれてしまうのだが。



元貧困街を抜けたところで護衛役を見つけた。


「お嬢様、いい加減我々を撒くのをやめてくださいよ」


「ごめんなさい、あそこに護衛をつけていきたくないの」


私のもらった護衛の特殊部隊は3人。元は我が家の諜報を担当していたものたちだ。


公爵家にもなると諜報部隊なるものがあると知ったのは父の書斎に入り始めた初期のほうだ。

諜報部隊といっても普段は使用人も兼任している。

諜報部隊の正式な人数は教えられてはいないが、屋敷の出入りの仕方で大体分かってしまっている。

その中でも選ばれた人物が私の護衛なのだが、立地と心理を読めば撒くのは容易い。


毎回違うルートで撒いているので、突き止められることもない。

帰りは元貧困街から出てくるので、最近は護衛も町の入り口で待ち伏せることを覚えたらしい。


そもそもなんで今更私に護衛が出来たかというと父が、というよりレイノと殿下、使用人たちが私が貧困街に通っていると知ったからである。


いままで使用人たちは私は城下町までしか行っていないと思っていたらしい。

レイノにいたっては勉強に王立図書館に通っていると思っていたらしい。

殿下は屋敷を抜け出していることすら知らなかった。


しかし、父とあれからちょくちょく遊びにくる国王陛下にばらされたのだ。

殿下と国王陛下の同時来訪はその頃もはや誰も突っ込まなくなっていた。


事の起こりは殿下と国王陛下との晩餐だった。


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