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05


殿下と初対面を終わらせてから殿下はちょくちょく我が家を訪ねてくるようになった。

王子がそんなに頻繁に外に出て良いのかと思ったのは最初だけで、こう頻繁にこられるとその疑問も浮かばなくなる。


最初は困惑していた使用人も慣れ始めていたのだが、我が家でただ一人殿下に慣れない者がいた。

弟のレイノだ。


レイノは殿下が来るといつもの倍私に引っ付く。シスコンの気は元からあったが、最近特にそれが激しい。

殿下の訪問があった日は必ずといって良いほど私の布団に侵入してくる。


今日も今日とて殿下の訪問を聞き私の元から離れないレイノに殿下も苦笑している。


「レイノは本当にヴィーラが好きだな」


「あたりまえです」


レイノの不敬罪になりかねない傲慢な態度にも苦笑を浮かべている殿下。



初対面のときの殿下と今の殿下は大分態度が違う。

初対面のときはもっと高圧的だったが、今の殿下はとても物腰が柔らかい。

数回目の対面から徐々に物腰が柔らかくなっていった。


以前物腰が柔らかくなった理由を尋ねてみたところ、これが元来の性格なのだといっていた。

確かに国王陛下も物腰はどちらかといえば柔らかい。それ以上に性格が悪いが。

帝王学の教えで初対面の人に高圧的な態度をとってしまいがちなのだと。

最近というか、私の初対面のときに高圧的な態度もよろしくないと思ってからは気をつけているらしい。

特に数回目、殿下が物腰が柔らかくなりはじめた頃に話した私の人心掌握術に共感できるものがあったらしく、あえて物腰柔らかく接し人心掌握すると考えてからは特に気をつけているといっていた。



しかし、レイノを人心掌握できないところでまだまだとしかいえないが。


「ねぇさまがいなければボクはいまこのばにいません」


「どういうことだい?」


怪訝を浮かべる殿下に私はレイノが物心付き始めた頃の話しをし始めた。




***


レイノの魔力測定に赴いたときに話だ。


国の義務で2歳から3歳には必ず協会に訪れ、魔力測定しなければいけない。

協会では無償で魔力測定をしているが、王族と公爵家は協会でも立ち入り禁止区域の神聖な場所で魔力測定が行われる。

父と私、そしてまだ歩き始めたばかりのレイノをつれて禁止区域に訪れた。

私は同行しなくても良かったのだが、私と使用人が育てたレイノは父と二人だけを嫌がった。使用人は連れて行けない。そこで私が同行したわけだが。

私と手を繋ぎ、禁止区域に到着するとレイノがむずがりはじめた。


「どうしたの?」


「ねーさま、ここいや!」


そういって私に抱きつき顔を擦り付け始めた。

突然の拒絶に周りの神官たちは困惑の表情を浮かべる。


父に顔を向けるも分からないらしく、首を横に振っている。


「レイノ、なにがいやなの?」


顔をうずめているレイノに声をかけるも「うー」といううなり声しか返ってこず、周りの困惑も増すばかり。


なんとなく、空気がおかしいのは私も分かっていたが、どうやらそれにレイノは反応しているらしい。


レイノの愚図りがひどくなるとともに禁止区域の温度が下がり始める。

流石に異変に気づいた神官たちが慌しく動き始めた。


「ヴィーラ、このまま測定をする。レイノの魔力を上手くいなせ」


一人落ち着いている父の無茶振りに思わず「殺生な!!」と叫ばなかったのはがんばった。


温度が下がっていくと共に禁止区域に氷が張り始め、吐く息も白くなる。それでも愚図るレイノの頭を撫でながら、前方にある物体を睨む。

一層愚図りが激しくなったその時、一人の神官目掛けてレイノが作り出した氷塊が直進していった。


「あぶない!」


誰かが叫び、己に近づく氷塊に気づいた神官の顔を見た瞬間、私はレイノの抱きつきありたっけの魔力をレイノに注ぎ込んでいた。



悲鳴は禁止区域に響きわたる。



パキンッ…何かが割れる音が聞こえた。最初の音を皮切りに広がる割れる音。

レイノを抱きしめていた顔を上げると禁止区域に張られていた氷が次々に割れていき、キラキラと氷片が禁止区域を舞っていた。


幻想的な風景とはこんな感じなのか…と私は意識を手放した。



後日意識を取り戻した私が聞かされたのは氷塊が神官に当たりそうになったとき、私が流し込んだ魔力でレイノの魔法が無効化され、神官が間一髪救われたということだった。


傍にいながら何もしなかった父に恨み言を述べに行ったが、あと少し変化が見られなければ何とかしたと不遜な態度で答えられた。

壁を殴りたくなったのはしょうがないと思いたい。


その一件から前にもましてレイノは私に引っ付くようになった。

まぁ、あそこで神官に怪我でも負えばレイノは協会預かりだし、公爵家に帰ってこれた保証もない。


魔力に恐怖心を抱いてしまったレイノのリハビリの為にも悪戯は続けている。




「…なんてことがありまして」


「なるほど」


深く頷く殿下と思い出してしまったのか、更に強く抱きつくレイノ。


「しかし、むこうかとは…。あれはなんいどが高いときいているぞ」


「細かいことはとくいですの」


朗らかに笑いながら答えると「そういうものでもない気が…」なんて聞こえたが、そこはスルーだ。


相変わらず殿下とレイノの和解はできないままその日は終わった。



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