神器
「おい、リリ、リリッ‼」
肩から血が流れている状態でリリを呼ぶ。
「は、はいっ」
「ここはアビにまかせて少し距離を置く、こっちへ来い」
「わかりました」
村長の家の裏へ行く。
腕が無いだけで歩くのが難しい。
腕にはヒールをかけて血や痛みは無くなったが腕は元通りにならない。
「リリ、この腕元に戻すことは出来るか?」
「すいません、腕一本となると無理です。体には誰にでも『気』というものが通っています。同時に『オーラ』というものをまとってっています。魔法はその『気』と『オーラ』を合わせて放出することで出来ます。回復魔法は対象の『オーラ』に『気』を与えることで出来るのですが、腕一本がなくなると『オーラ』は反対の手に全て移動します。その『オーラ』を何もない右手に移動させるのはほとんど無理です」
「むずかしいな。義手を魔法で作ることは出来るか?」
「それならば可能です。手先に短剣をつけておきました」
「ありがとう。じゃあ戦闘に戻るぞ。リリはアビの回復を優先的にやれ」
「はい」
アビの所に行くとアビは倒れていた。
ホルスの姿は無い。
「おい、アビ‼しっかりしろ‼」
反応が無い。
「リリ、回復」
「おかしいです。出来ません。アビさんの体に『オーラ』が無いようです」
「どういうことだ?」
「これがアビさんではないか、死んでしまったか・・・」
「アビが死ぬわけないだろ神だぞ‼」
それに何かおかしい。
神同士の戦いなのに周りになんの被害もない。
それに俺たちが村長の家の裏にいた時も何の物音もしなかった。
「わっっ‼」
リリが声をあげた。
アビがいきなり消えた。
それだけではない周りの家が一瞬にして消えた。
幻術だったらしい。
「ご主人様、あそこ」
リリの指差す方向にはアビが立っていた。
そしてホルスが倒れていた。
「リリ、すぐにアビの回復を」
「わかりました」
アビの方へ走りながらリリは回復魔法をかける。
「アビ、大丈夫か?」
「問題ありません。それよりご主人様の腕が」
「心配するな、リリに義手を作ってもらった」
「あの、周りの家はなぜ消えたのでしょうか」
めずらしくいつも答える側のリリが質問した。
「たぶん、この村は全てアビが魔法で作ったものだろう」
「そんな魔力がっ‼」
リリがすごく驚いている。
確かにリリは家一つで限界だった。
それでもすごい。
「リリも頑張ればきっと出来るようになるさ」
「はい・・・。そういえば先ほどは言いませんでしたが、その腕を治す方法があるかもしれません。」
「本当か?」
こっちの方が便利なこともあるかもしれないが、現実世界に戻った時に腕が無いという可能性もある。
それに俺は右利きだ、左手は使いずらい。
出来るならば腕は治しておきたい。