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歌詞短編小説集  作者: yuuta
3/3

プラネタリウム BUMP OF CHICKEN

ふと立ち寄った駅前の本屋。

とくに欲しい本もなかったが、暇なので店内を一周回ってみた。

すると、雑誌コーナーにあった科学雑誌に目がとまった。

学生のころによく読んだ雑誌だ。

大学を卒業してからもう2年がたった。

今は、コンピューター関係の仕事をしている。

変化のない日々。

徐々に生活に弾力が無くなっていく。

朝起き、身支度を済ませて出勤。

満員電車に乗り込み、やっとの思い出職場にたどり着き。

自分に与えられたスペースでひたすらパソコンと向き合う。

入社直後は、周りの人とも話したが。

最近は仕事でようが無ければ話すことなどない。

そして、時間がたち、7時に会社をでる。

そのあと、また満員電車に乗り込み、アパートのある駅へ帰る。

駅を出た後は、コンビニによって食べ物と酒を買う。

最初のころは、スーパーで食材を買い自炊していた。

けれどいつしか、それもしなくなった。

そして最近になって自分の生活が色を失い始めていることに気づいた。

平凡な日々。ただ何も考えず与えられたノルマをこなすだけの仕事。

まるでロボットのようだ。


目にとまった科学雑誌を開いてみた。

するとそこには目次があり。目次で一番上の記事は、素粒子物理学の教授の論文だった。

しかし、俺が気になったのは「手作りプラネタリウム」という記事だ。

小学生のころ。誕生日に買ってもらった天体望遠鏡でよく星の観察をしていた。

思えばそれが理科に興味をもったきっかけかもしれない。

大学では物理を専攻した。

将来は教員になろうとも考えていた。

しかし、実際教員採用は狭き門で合格率は低い。また試験が9月以降にあるため、一般企業の就職活動には不利だった。

大学3年の冬に教員になることをあきらめた。そして一般企業にしぼり就職活動をし決まったのが今の会社だ。

俺はその雑誌を買った。

この本を読めば昔読んでいたころの気持ちを思い出せるかもしれないと思ったからだ。


4畳半一間の家に帰り、途中でコンビニで買った弁当を食べながらその雑誌を読み始めた。

読んでいてビックリした。

まったく面白くない。

学生時代あんなに読んだ雑誌なのに全然面白くないのだ。

やはり自分はこの2年で大きく変わってしまったようだ。

それが実際に分かると急に寂しい気分になってきた。

あのころは楽しかった。友達と騒いでいるそれだけで楽しかった。

今はそんな友達もいない。

あのころは大切にしたいと思える人もいた。

それだけで幸せだった。

あのころに戻りたい。


そう思ったときにふと「手作りプラネタリウム」のことを思い出した。

なにか新しいことをはじめたい。そんな気分だった。

俺は雑誌の作り方を読むと必要なものを部屋を探して集めた。

電気スタンド。黒いビニール袋。爪楊枝。セロハンテープ。たったこれだけ。

たったこれだけでできるプラネタリウムを作ったからといって何かが変わるわけじゃないことは分かっている。

でも作らなければいけないと思った。いや作りたいと思ったのだ。


プラネタリウムは30分もせずに出来上がった。

俺は雑誌に書いてあった作り方の星よりひとつだけ多く穴を開けた。

そして部屋の電気を消し。黒いビニールに包まれたスタンドの電球を灯した。

すると、部屋の壁や天井に宇宙が広がった。

天井には北極星が。壁にはカシオペア座。

四畳半の部屋が急に果てのない宇宙に変わった。

そして俺はあの星を探した。

その星はここにしかない。たった一つの星だ。

俺はその星を見つけ出した。

星には一番最初に見つけた人が名前をつけていいことになっている。

俺はその星に名前をつけた。

その名前は初恋の人の名前。

ずっと昔に好きだった名前。今となっては絶対に手に入らない名前を手に入れた。

この星の名前は俺しか知らない。それがうれしかった。

僕はその宇宙をずっと眺めていた。


そらから1時間ほどたっただろうか。

ここにしかない星はほかの星よりも輝いて見えた。

その星を見ているだけでは我慢できなくなり。俺はその星をつかもうとしてみた。

すると、当たり前だが簡単に届いてしまった。

触れてから辞めとけばよかったと後悔した。


この星は君じゃない。僕の夢。

本当に届くわけ無い光。でも消えてくれない光。






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