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歌詞短編小説集  作者: yuuta
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あなたに好きと言われたい 奥華子

「お前にはどんなことでも話せる」この言葉がどれだけ残酷な言葉かあなたは知らない。


私はあなたが好き。

あなたとは、家が近所で幼稚園からの幼馴染。私はずっと前からあなたが好きだった。

あなたは気づいてないけれど。私はずっとあなたを見ているんだよ。


今、私は高校3年生。

そして今日は3月3日。

卒業式まであと2日だ。

私と彼はいままでずっと一緒だった。でも大学は別々になった。

私は近所の短大。彼は東京の大学に進学する。

思ってみれば、高校が同じなのは偶然だ。別々の高校に進学していてもおかしくなかった。

私は近いからとこの高校を選んだ。彼がこの高校を選んだのはこの高校のバスケ部が強いから。

私は甘かった。私はずっと彼のそばにいられると思っていた。

まさか、彼が東京の大学に行ってしまうなんて思いもしなかった。

岩手と東京。遠すぎるよ。近くの大学じゃ駄目なの?と何度も彼に言いたかった。

でも言えなかった。私は彼の彼女でもなんでもない。ただの幼馴染だから。

彼には彼女がいる。女の私から見ても可愛い子。

彼女も東京の大学に進学が決まったそうだ。

彼の隣にいるのは私じゃない。

あの子よりもずっと、ずっと前から好きだったのに。

なんで彼は私を見てくれないの?やっぱり私はただの幼馴染なの?

もしもあの子になれるなら。何度もそんなことを考えた。


卒業してしまったら彼は遠くに行ってしまう。

もう会えなくなる。もうあの笑顔がみれなくなる。

そう思うとどうしてもこの気持ちを伝えたくなった。

そんな時携帯電話が鳴った。

「夜中にごめん。今からちょっとでれる?」

彼からの電話だった。

「うん。大丈夫」

「じゃあさ、いつもの公園来て」

「分かった」

いつもの公園。その公園は私たちが小さかったころによく遊んだ公園。

中学生になるとその公園は、遊ぶ場所からいろんなことを相談する場所になった。

相談があるのは、いつも彼。

彼は「私にはなんでもそうだんできる」と言った。

それが私にとってどんなに残酷なことか彼は知らない。

なんどもこの気持ちを伝えようと思った。

でも、今のこの関係すら壊すのが怖くて、言えなかった。


公園につくとそこには彼がもう待っていた。

「ごめん、遅くなって」

「俺こそこんな時間に呼び出してごめん」

「ううん、気にしないで。で、どうしたの?」

「いや、もうすぐお前とも会えなくなると思ったら急にこの公園に来たくなって」

「そうなんだ」

「昔、よくここで遊んだよな」

「うん」

「覚えてるか?お前がここでブランコから落ちたの」

「ちょっと。もうその話はしないでよ」

「わりい。わりい。でもあれは面白かったよな」

「バカ」

「ごめんって」

私が幼稚園に通っていたころ、この公園で彼とブランコで競争したときのことだ。

ブランコで競争とは、どちらがブランコで高いところまでいけるかを競ていた。

運動が得意な彼はどんどんスピードを上げて、高いところまで上がっていく。

私は悔しくて、運動が苦手なりにがんばったのだ。

すると、ブランコは徐々にスピードを上げ、彼と同じぐらいまで高くまであがった。

私はそれまで、悔しさだけでブランコ漕いでいた。

彼に追いつくとその悔しさが消え、急に恐怖感に襲われた。

私は恐怖のあまり、手を離してしまった。

すると私の体は中に浮き、空中をさまよった挙句、地面にたたきつけられた。

幸い私の丈夫な体のおかげで怪我はしなかったが、私の宙に浮いている姿が彼には凄く面白かったらしく。なにかとこの話をする。

「なあ。」

「ん?なに?」

「今までありがとうな。」

「え?」

急にこんなことを彼がいいだすので私はビックリした

「いや。今までお前とすっと一緒で、いろいろ助けてもらったからさ」

「なに急に、柄にもないこといっちゃって」

「ホントにお前には感謝してるんだぜ」

「へ~」

こんなことを言われたのは初めてだったから。うれしくてうれしくて、私は泣きそうだった。

けれど、彼を困らせてはいけないと必死で泣くのをこらえて、私は強がっていた。

でも、告白するなら今しかない。と思った私は勇気を振り絞って彼に話そうと決めた。

「ねえ。」「あのさ」

彼と話しかけるタイミングがかぶってしまった。

「先に話していいよ。なに?」

私がそういうと彼は

「これからはさ、離れ離れになっちゃうけどさ、ずっと友達でいてくれるよな?お前は俺にとっていなきゃ困る存在なんだよな。」

え?友達。

私はこの言葉を聞いて、確信した。

彼にとって私は友達。いや幼馴染でしかないことを。

「うん。」

本当は泣きそうだった。でも今ここで泣いたらこの関係すら壊れてしまう。

私は精一杯強がった。私は精一杯の嘘をついた。

「そっかよかった。連絡もするし、帰って来たときは会いにいくから」

「うん。」

「で、今度はお前の話。なに?」

「ううん。もういいの」

「なんだよ。言えよ。気になるだろう?」

「ううん。本当にもういいの」

「ふ~ん。ならいっか」

いえるはずがない。

ずっと好きだったなんて。彼は私のことをそんな風には見ていないから。

私がそんなことを言ったら、きっともうあえなくなるから。


その後彼と30分ほど公園でいろんな思い出話をした。

でも私はなにを話したかほとんど覚えていない。

泣くのを我慢するので精一杯だったから。

「じゃあ、そろそろ帰るか」

「うん」

「家まで送ってくよ。」

「え?いいよ。家近いし」

もう私に優しくしないで。やさしくされるとつらいだけだから。

「送ってくって」

「大丈夫だって、もう私だって大人なんだよ。」

今やさしくされたら泣いちゃうから。本当は送ってほしいよ。でもきっとそれだけじゃ我慢できなくなるから。

「そっか。じゃあ気をつけて帰れよ」

「うん、また明日学校で」

「おう。ジャーなー」

「ばいばい」


私は彼が帰っていく後姿を、彼が見えなくなるまずっと見ていた。

そして見えなくなると、私は我慢できなくなった。

その場にしゃがみこんで、今まで我慢していた涙を全部だした。

こんなにつらいなら、彼と出会わなければよかった。

もっと早くあきらめればよかった。

なぜ、私じゃ駄目なの?

そんなことを延々と考えながら私は泣いた。


どれぐらいそこで泣いていたかは分からない。

でも私の涙も枯れ果てたようだった。

そしてふと空を見上げると、そこには満点の星空が広がっていた。

もともと田舎で空気がきれいなこと。

3月の乾燥した空気のこと。

それと、私の心が傷ついているせいでその星空はいつもよりきれいに見えた。

私は流れ星を探した。

魔法のランプやドラゴンボールなんていう、手に入れれば願いが叶うものがあるなんて私はもう信じられる年じゃなくなった。

でももし、そんなものがあって。

ひとつだけ願いがかなえられるなら。

私はやっぱり、このお願いをするだろう。




「あなたに好きと言われたい」




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