これからどうすんだよ
「昨日の俺、マジで何言ってんだよ...」
朝の教室。まだ授業が始まる前だというのに、
俺は机に突っ伏して全力で現実逃避していた。
“俺が一生傍にいる”って...
(俺は少女漫画の主人公かよ...俺はぁ!)
恥ずかしさで今でも消え去りたい。
なんであんな言葉が出てきたのか
自分でもよく分からない
気が付けば口に出てしまっていた。
感情に任せて、衝動のままに...
それがまた、恥ずかしさを倍増させていた。
(いや、行動は間違ってなかったんだけど...)
彼女に死んで欲しくないと思ったのは本心...
だけど、なんか...こう...
もうちょい別の言い方あったよな...!?
(必死だったんだよ...必死だったの俺ぇ!)
「如月くん」
「ッ!?」
声がかかった瞬間、心臓が飛び出そうになった。
聞きなれない声で、まさかなと思いながら
突っ伏していた顔を上げると...
俺に声を掛けてきたのは甘凪だった。
(おいおい...どんな顔して話せってんだ?)
あの時はとんでもテンションで会話(?)を
することが出来たが、今の俺には出来ないぞ?
「ここ、座っていい?」
「あっ、ちょっ、」
...言い終える前に、俺の隣の席に当然のように
甘凪は腰掛けていた。
(許可取ろうとした意味...!)
そんなことを思いつつも、
俺は甘凪に向かって問いかける。
「...えっと、何か用か?」
「昨日の言ってくれたこと、ちゃんと覚えてる?」
「...っ、あぁ、うん。忘れるわけだろ」
めちゃめちゃに忘れたいが
出来れば記憶を完全抹消したいが
「そっか。よかった」
甘凪はふわっと微笑んだ。
(...天使か?)
思わずそう心の中で呟いてしまうが、
これは完全に不可抗力だ。
「昨日ね、恥ずかしくて走り去っちゃったけど…」
そう言いながら、甘凪は俺の制服の袖を
ちょこんと掴んだ。
「凄く嬉しかった」
「なっ...!」
俺の体温が爆上がりしていくのがわかる。
心臓がバクバク鳴って、顔が熱い。
(距離が...距離が近いって...!)
クラス中の視線が痛いくらい突き刺さってきて、
空気がざわついてるのが分かる。
「ちょ、ちょっと甘凪さん? 距離が...」
「そうかな?これくらい普通だよ」
(んなわけねぇだろうがよぉぉぉ!)
貴方ってガードが硬いんじゃないんですか!?
悠が言ってたのは嘘だったのかなぁ!
「いや、違うよね?」
「...バレちゃった?」
悪戯っぽい笑顔でこっちを見つめてくる
甘凪に思わず顔をズラしてしまう。
(何!?何そのセリフ...!?)
俺を照れ殺したいんか...?
「顔、真っ赤だね」
「見ないでくれ!」
俺は顔を伏せたまま机に額を押し付けた。
恥ずかしさで顔を上げられない。
(どうしてこうなってんだよぉぉ!)
「え、え、ちょっと待って? 」
「甘凪さんと親しそうに...」
「え、如月って甘凪さんとどんな...?」
「甘凪さんってあんなキャラだっけ?」
男子たちは動揺
女子たちは困惑で目を見開いている。
特に俺の後ろの席の男子グループなんて、
『今日の授業とかどうでもいい...』
とか言い始めてる。ごめん、本当にごめん
「うぅ…あの如月が、甘凪さんと...
うわぁぁ、世界終わったぁ…」
「マジかよ...俺、告白しようとしてたのに...」
「命はないと思えよ...如月ぃ!」
なんだこの理不尽...俺はなんもしてないのに...
(俺マジでなにもしてないじゃん...!)
項垂れる俺とは違い、甘凪はというと、
そんな周囲の反応なんて気にしない様子で、
俺の袖を離すどころか、少し体を寄せてきた。
「ね、如月くん」
(まだ近くなるんですかぁ!?)
おかしいなぁ!さっきまでも十分近かったよ!?
「...どうした?」
「私さ、誰かを信じるのが怖くなってた
でも、如月くんなら...大丈夫かなって思ったの」
「...」
「だから...ありがとう」
そんな目で見られたら俺はもう、何も言えない。
(...ズルいなぁ)
「...甘凪さん」
「甘凪」
「えぇと、甘凪さん」
「甘凪」
(...甘凪って呼ばなきゃ進まんやつですか)
うん、無言の圧力を感じるし正解なのだろう。
「…ッ、甘凪」
「えへへ」
なんだこの生物可愛すぎか?
(って違ぇよ!)
俺が言いたいのは…!
「ん?」
「俺は何にも出来ないと思うけどさ
信じて貰えるように頑張るよ」
「ふふっ、真面目だね。如月くん」
そんな笑顔を向けられてしまったら、
誰でも見惚れてしまう。
「じゃ、また来るね。
今度はお弁当とか持ってこようかな」
「え、あ、うん...?」
(ちょっと待って?とんでもないこと言ったよね?)
なんかサラッと了承してしまったけど
「その時も、隣座っていい?」
「...もう今さら断れねぇよ」
そう言った俺を見て、甘凪は満足そうに
頷いてから立ち上がった。
(...朝から凄いことになったな)
「蒼真、お話...しよっか」
おそらく今登校してきて、事情を把握した悠に
怖いほどニコニコの笑顔で肩を掴まれながら、
そう告げられるのだった...
(...神よ、俺は殺されるのでしょうか)
俺は、頭を抱えた。
(これからどうすんだよ、俺...)




