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霊ノ謳  作者: しろくろあめ
第4章 霊界襲撃

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第51話 共闘

「うっ……」

劉兎(りゅうと)さん! よかった……大丈夫、起きないで!」


 霊界(れいかい)で白明の炎槍(えんそう)が響き渡る頃、生界(せいかい)で意識を失っていた劉兎がやっと目を覚ます。

 

 劉兎が目を覚まして、最初に見たのは酷く疲れた顔をしている琴葉(ことは)だった。


「俺は……何をして……悪霊と戦って、忍者とも戦って……その後……その、あと……」


 覚醒していく意識に、劉兎の表情が見る見るうちに青ざめていく。

 なにかに気づいた劉兎は、目を見開いて表情を崩した。


「俺は……負けたんだ」


 絶望。そう表すのに等しい酷い表情をした劉兎は、琴葉の静止を無視して起き上がる。

 

 軋む身体、身体に帯びた傷は未だおびただしく残り、その中でも、胸に刻まれた大きな傷が痛々しい。更に炭化していた右腕はある程度治ってはいたが、痛みは残っている。


「それで……なんで俺は生きてるんだ? それに琴葉、なんでここに……」

「ギリギリでした。私と(りゅう)さんが来た時に、丁度劉兎さんが落武者に敗北してて、トドメを刺される前に何とか割り込めた感じです」

「竜さんも……?」


 ゆっくりと視線を流す。

 劉兎が寝ている部屋の角から見渡せる位置で、劉兎を倒した落武者と竜が戦闘を繰り広げていた。


「ふむ……起きたか」

「劉兎……!」


 落武者の刀を硬化させた拳で受け止め、二人の視線が劉兎に向く。

 既に竜の身体には切り傷が入っており、見るからに劣勢だということが察せた。

 

 それでも踏ん張る竜は、拳で刀を突き返し、落武者を殴っていく。

 しかし、黒く硬く、強度を増している甲冑を破ることはできなかった。


「アイツ……普通じゃない。甲冑は硬すぎるし、何より剣技が普通の落武者より優れてる」

「正真正銘、ボスってことですか」


 おもむろに立ち上がる琴葉。その顔には疲労が見え隠れしており、構える弓は震えている。


「何でそんなに疲れてるんだ……?」

「劉兎さん、本当にギリギリだったんです。あと少し処置が遅かったら本当に……」


 その言葉で回復に霊力をほとんど使ったことを把握した劉兎は、いたたまれない気持ちで俯く。

 

 いくら無尽蔵(むじんぞう)持ちであっても、放出できる霊力には限りがある。

 特に今回、劉兎はかなりの傷を負っていた。右腕の炭化に始まり、全身火傷、身体中に刺傷や切り傷があり、挙句の果てに脇腹は小刀に刺されている。

 

 その状態の人間の回復は並大抵の霊力ではできない。更に劉兎は意識を失くしており、劉兎自身の霊力での回復は見込めなかった。


「琴葉! いい! 割り込むな!」

「いいえ、このままだとジリ貧です!」


 竜の静止も虚しく、弓を番える琴葉。

 霊力で光の矢を創造し、狙いを落武者にすませる。

 

 そして、竜がタイミングよく落武者の顔面を殴り、落武者の視界が揺らいだのを確認し、射る。


「弓矢か、しかし甘い」


 それでも落武者に矢は届かない。

 ノールックで刀を振るわれ、いとも容易く両断される。

 その隙に竜が肉薄して掌底を繰り出すが、落武者はビクともしなかった。


「マジかよ……」

「竜さん!」


 驚きで一瞬の隙を見せた竜に、落武者は無慈悲に刀を叩き込む。身体強化で斬り落とされることは無かったが、肩に深々と刺さったことにより、竜はその場に跪く。

 

 竜の戦闘不能を感じた琴葉は、焦りから滝汗をかき、それでも弓を番える。

 しかし、伏した竜を尻目に、落武者は黒い霊力を付与させた刀を振り上げた。


「竜さんは殺させない!」


 矢に霊力を更に付与し、桜色に光り輝かせる。

 弦を引く手に力が入り、歯を食いしばった。

 今にでも竜に振り下ろされる刀を止めるため、狙いをすます。


「違う琴葉! 狙いはお前だ!」

「『天地開闢(てんちかいびゃく)』」


 傍から見ていた劉兎が声を荒らげる。黒い霊力を纏った刀。それを見た時に劉兎は思い出した。

 その攻撃は正しく劉兎の胸に傷を付け、意識を刈り取った攻撃である。

 

 琴葉も繰り出される寸前で気付くも、時すでに遅し。

 振り下ろされた刀から出現した大きな斬撃は、地面を抉りながら琴葉へと向かう。

 放たれた矢など直ぐに壊され、避ける暇も無く琴葉に到達した。

 

 けれども、そこに割り込んだのは劉兎だった。


「ほう……まだその傷で動くか」


 しかし、斬撃は劉兎ごと琴葉を斬る。二人を貫通し、その背後の壁すら両断した斬撃は、留まることを知らず廃墟を薙倒していく。

 

 腕を飛ばされ、身体に大きな傷が入った劉兎は意識を飛ばし、右肩から左脇腹に掛けて袈裟斬りされた琴葉は、とてつもない痛みにその場へ倒れる。


「琴葉! 劉兎! クッソ!」

「諦めるがいい、この世界は強者こそが真理。弱者は淘汰されるだけだ」


 立ち上がり、すかさず攻撃を繰り出す竜。

 しかし、肩を斬られ、体力を消耗しきってしまった状態では、落武者にダメージどころか甲冑を破ることもできない。

 

 顔面、腹、背中、首、うなじ。落武者の周りを舞うように周り、何度も何度も拳を繰り出していくが、びくともしない。

 

「威勢は良し、しかし我の部下に力を割きすぎたな」

「……マジかよ」


 一旦飛び退き距離を置く。

 そんな竜を気に留めることも無く、落武者は刀を振るう準備に掛かる。

 刀に黒い霊力が纏われ始め、バチバチとスパークを放ちだす。


「さて、お手並み拝見と行こうか、全部避けろよ」

「なっ――」

「『黒鱗乱舞(こくりんらんぶ)』」

 

 竜が反射で屈んだ刹那、繰り出されたのは横薙ぎ。

 斬撃は竜の頭上を飛んでいき、廃墟を壊して回る。

 

 攻撃はそれでは終わらず、更にバツ印を創るように袈裟斬りと逆袈裟斬りを放ち、飛んでいく斬撃。

 両手を使って咄嗟に跳び避け、迫るもう一つの斬撃を転がって避ける。

 

 しかしここで放たれるは真向斬り。飛んでいく斬撃は廃墟の天井を床を削りながら竜へと迫る。


「……嘘だろ」


 足がもつれ、直ぐに立ち上がれない竜。

 しかし、斬撃が竜に当たる寸前で、竜を抜かすように紅い残像が通った。


「『紅花(べにばな)』ッ!」

「萌葱!」

「緊急通報から来た! 遅くなってすまない!」


 現れたのは萌葱。紅い霊力を纏いながら紅花を繰り出し、紙一重の所で斬撃を受け止めたのだ。

 突然の登場に驚く竜。我に返って立ち上がり、大きく息を吐く。

 

 萌葱は受け止めはしたものの、弾き返したり、()なせたりできるような状況ではない。

 更に一文字斬りを繰り出した落武者により、追加された斬撃は萌葱を押し始めた。


 それでも竜は冷静に、息を整える。

 萌葱は竜を見ることも気にすることも無く、更に増えていく斬撃を受け止め続け、柄を持つ手からは血が溢れだしていた。

 

 そして竜は、静かに構えを取る。


「『正拳一閃』」


 繰り出されるは竜の拳。教科書通りの構えから放たれた正拳突きは、迫る斬撃をものともせず突き飛ばす。

 斬撃の束は散り散りとなり、落武者の背後へと四散しながら飛んでいく。


「悪い、待たせた」

「いいや、大丈夫だ。それより何だこの状況」

「あいつは劉兎を負かした。琴葉もヤツにやられたよ」


 肩で息をしながら背後を見る萌葱。そこには倒れる琴葉と、琴葉の上で覆いかぶさるように倒れる腕のない劉兎。

 未だ息があるのを察するも、悔しさと怒りから奥歯を強く噛んだ。

 そんな萌葱を見つつ、竜はわざとらしく拳を突き出す。


「久しぶりに共闘と行こうじゃんか、萌葱」

「……ああ、まずはあいつを倒すことが先決だ」

「見事だ、貴様は少し後ろの二人とは違うらしい」

「アタシはお前が切り伏せた青年の師匠だよ」

「師匠か、なるほどな」


 萌葱の言葉を聴き、静かに目を瞑る落武者。

 瞬間、身体からとてつもない量の黒い霊力が放たれ、廃墟を抉っていく。


「ならば我も本気を出そう」


 開かれた眼は、しっかりと二人を見つめていた。

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