表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊ノ謳  作者: しろくろあめ
第4章 霊界襲撃

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/148

第49話 黒炎に散る

「良いなお前! もっとオレを楽しませろ!」

「一々うるせえな! 喋れなくしてやろうか!? あぁ!?」


 幸太郎(こうたろう)がバラクラバを一掃する頃、霊界(れいかい)の傍らでドライと名乗るバラクラバと戦闘を繰り広げていた昴流(すばる)

 

 軍神部(ぐんしんぶ)用の霊器(れいき)である杖を巧みに扱い、大振りなドライの攻撃を防いでいた。


「もっとだ! もっと攻めてこいよ! なァ!!」

「チッ……! 大雑把に攻撃しやがって!」


 他の軍神部隊員と同じく、昴流も直接霊力(れいりょく)を戦闘には流用できない。両拳に黒い炎に似た霊力を纏うドライに対し、杖で霊力を扱う昴流には明確な差があった。

 

 更に、一回りは違うであろうドライの体躯がその差を広げていく。

 防戦一方な昴流は、攻めあぐねていた。


「ほらほらどうした! オレの黒炎に焼かれてえか!?」

「声デケェんだよ! 黙ってろ!」

「いいや黙らないね! さっきまで屑鉄(技師達)を相手にしてたんだ! あいつらはつまらなかった……だが! お前は違う! お前は生きてる! そして面白い!」


 繰り出された大きな拳を杖で受け止め、弾き飛ばす。

 一歩下がったドライに対し、バックステップで距離を置くと、杖の先をドライへと向ける。


「とりあえず止まってろ!」


 杖の先から出たのは半透明の霊力。

 電気のように空中を迸った霊力は、たちまちドライに直撃した。

 

 しかしドライの身体には変化がない。強いて言うなら開いた胸元に傷が付くくらいであった。


「そんなものか! オレにはそんな玩具は効かん! ()()()()()でかかってこい!」

「それができたら苦労してねぇんだよ!」


 ドライに向けた霊力を引き戻し、杖と自身に付与させる。一時的な身体強化を施した昴流に対し、ニヤケ顔を隠さないドライは地を踏み鳴らしながら昴流へ迫る。

 

 振るわれる右の拳を躱し、追撃の左拳を杖で受け止め、腹部を蹴りつける。若干の強化で増した蹴りは、ドライの身体を少し逸らさせた。


「壁かよ……ビクともしねぇ!」

「ああ! オレは壁だ! 悪かったな!」


 杖で受け止めていた左拳を突き飛ばし、大振りで迫る右脚をしゃがんで避ける。流れるように杖の脚部を地面に刺すと、突然杖が伸び、ドライの顎に激突した。


「その杖……伸びるのか!」


 仰け反るドライ。伸ばした杖を引き戻し、直ぐに着地した昴流は、杖先をドライに向けて再度伸ばした。

 

 杖先で腹部を突かれ、後退るドライ。咄嗟に杖先を掴むも、昴流が笑ったことに気づかなかった。


「喰らえ! ゼロ距離なら痛ぇだろ!」


 瞬間、杖先から放出される半透明の霊力。

 霊力は間髪入れずにドライに感電すると、その全身に巡る。

 

 先程よりも出力の上がった攻撃に、片膝を着くドライだったが、その状態でやっと頭の位置が同じ場所になったことに、昴流は気づいて息を飲んだ。


「……やるじゃないか、この俺を押し留めるとはな」

「その状態でよく喋れるな、化け物か」

「化け物ではない、オレは黒霊炎(こくれいえん)のドライだ」

「だからだせぇよその名前」


 軍神部の使役する杖は特別製である。

 霊力を戦闘に流用できない者向けに作られている杖は、杖を持つ手を経由して体内の霊力を具現化させる力を持っていた。

 

 更に、杖先から出る霊力は感電と拘束効果を持ち、並大抵の悪霊であればその場に跪かせ、声一つ上げさせない威力を持つ。

 

 最も、それは複数名の隊員が集まった場合であるが、昴流の持つ杖は隊長であるが故に更に特別製だ。


「いいね……いい感じに温まってきた」

「ッ!」


 出力される霊力は平隊員の持つ杖より数倍大きい、はずだった。


 感電しながらも顔を上げたドライ。その表情が笑みに満ちていたことで、昴流の背中に悪寒が走る。そして同時に、杖先を掴んでいたドライの手に力が入るのを感じ、咄嗟に跳び退いて距離を取った。

 

 感電から開放されたドライはゆっくり立ち上がり、身に付いた埃を払う。


「お前やはり良いな、最高だ!」

「なんなんだおま――」


 昴流が悪態を吐くよりも早く、フン! と息巻いたドライ。同時に、ドライの全身から黒炎のような霊力が放出され、ドライの身体ごと燃やしていく。

 

 燃え上がるドライに対し、本能的にマズさを感じ取った昴流は、防御の体勢を取った。

 

 けれども、その刹那、ドライの姿が視界から消える。


「アイツ! どこへいっ――」

「ここだぜ」


 轟音が鳴り響く。音を置いて消えたドライが、昴流の懐へと忍び込んでいた。

 残像すら残さなかった巨躯は、器用に懐へ入り、その右拳を深々と昴流の腹に突き刺す。

 

 血を吐き、その場に(うずくま)る昴流。しかし、丸くなるのを許さないと言わんばかりに、ドライはその頭を掴み、持ち上げた。


「あ……がっ……」

「オイオイ、本気を出したら終わり、なんて言わねえよな?」


 意識が朦朧とする昴流に対し、わざとらしく首を傾げるドライ。視界が点滅している昴流は、頭を締めあげられる苦痛で目を覚ました。


「がっ……あああああっ!」

「ほらほら、どうする? このままだとお前は死ぬぞ? さあ、どうにかして見せろ! このオレに霊界を壊されてしまうぞ!? なァ!」


 叫ぶ昴流に対し、嬉々として高笑うドライ。

 締め上げる手に更に力が入り、昴流の頭蓋骨が軋み始める。

 

 ギリギリと内耳に響く音に、昴流は残っていた身体強化を右脚に集中させ、器用にドライの顎を蹴りつけた。


「やるではないか」


 蹴りを喰らい、捨てるように昴流を離すドライ。

 咳き込みながら地面に落ちた昴流は、堪らず杖を離してしまう。

 

 朦朧とする意識の中、咄嗟に落とした杖を拾おうと手を伸ばすも、昴流よりも先に杖を拾ったのはドライだった。その表情は、依然として笑みが溢れ続けている。


「お前との戦闘は楽しい! だが、この玩具()だけが心残りだ! やはり戦闘はその身一つで行うことに意味がある!」

「勝手な……こと、言うんじゃ……ねぇ!」


 ふらつく身体で無理やり立ち上がった昴流。ドライはそれを見るや否や、杖を自身の背後に投げ捨ててしまった。

 そして両腕を大きく広げ、黒炎の出力を上げる。


「さあ! お前の全力を魅せろ! あんな玩具など、必要無いはずだ!」

「……自己中が!」

「自己中結構! オレはオレだ!」


 燃え上がる黒炎に対し、両腕を構える昴流。その手には白い手袋が装備されていた。

 軍神部隊員に支給されるのは杖だけではない。杖と相性の悪い幽霊が居るのを考慮し、より身体に近い位置で霊力を放出できるようにする物として、手袋がある。

 

 杖と同じ原理で霊力を引き出す手袋は、同水準の効果を持った。


「そうだ! やはりお前は玩具無しでも霊力を出せるな!」

「出せねぇよ! ふざけんな!」


 両手を向け、迫るドライに対し霊力を放出する。

 繰り出された稲妻は地を走り、ドライを捕まえる。

 それでもドライの足は止まらない。


「もっとだ! もっと出力を上げてみせろ!」


 高笑いを止めないドライ。昴流の目と鼻の先に到達すると、昴流の両手を片手で掴んだ。

 ドライの黒炎が身体に引火し、昴流を燃やしていく。


「ぐっ……うおおおおおっ!」


 雄叫びを上げる昴流。絶体絶命の中、霊力の出力が上がっていく。

 

 それとは裏腹に、出力規定値を超えた昴流の霊力と、ドライの黒煙に挟まれた手袋は燃え始めていた。


「手袋が……! マズイ!」

「何がマズイ? 最高ではないか! 共に燃えようぞ!」

「男と燃えるなんて勘弁してくれ!」

「そう言うな! 兄弟!」

「誰が兄弟だ! ふざけるな!」


 笑い続けるドライ。その度に黒炎は出力を増やし、昴流どころかドライすら燃やしていく。

 瞬く間に昴流の手袋は燃え、塵になっていく。

 

 焦りを滲ませる昴流は、どうにか切り抜けようと必死に思考を巡らせる。

 

 しかし、現実は非情である。


「……あ」


 黒炎に囲まれるさなか、間抜けた声をあげた昴流。

 

 手袋が全て燃えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ