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霊ノ謳  作者: しろくろあめ
第4章 霊界襲撃

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第48話 怪物の掌

「爆発音が近い! こっちだ!」

劉兎(りゅうと)さん! 生きていて!」


 劉兎と忍者の戦闘が佳境を迎えている頃、劉兎を探している(りゅう)琴葉(ことは)もその戦場へと向かっていた。

 

 しかし、地図も無く、構造が複雑になっている廃墟では、劉兎の頼りは鳴り響く爆発音しかなく、捜索は困難を極めている。

 それでも、爆発音を頼りに向かい続けた二人は、ついに音の根源へと足を進めていく。


「……急に、静かになりましたね」

「こりゃ、やばいかもな」


 竜がデバイスを触り、劉兎に連絡を試みるも、劉兎は一切それに応じることは無い。

 焦りと悪い妄想が二人の脳内を埋め尽くす中、ついに二人は白煙が漏れる一室を視認した。


「劉兎!」


 罠や敵の策略など考える余裕もなく、警戒をすることもなく部屋に突入する竜。遅れて入ってきた琴葉。二人は目の前の光景に絶句した。


「何だ、まだ仲間が居たのか」

「……劉兎、さん?」


 ボロボロの一室。激しい戦禍に見舞われたとひと目でわかる光景と、その中で佇む一人の落武者。

 仰々しい兜に、般若のお面が目立つそのモノは、刀を傍らに立ち尽くす。

 

 そしてその目の前には、膝をつき、戦意をなくした劉兎が居た。

 まるで二人が来るのとタイミングを合わせるように、倒れる劉兎の身体はおびただしい傷が塗れており、誰がどう見ても敗北を意味する姿に、二人の表情が険しいものになっていく。


「てめぇ……劉兎に何をした!」

「この者は、我の部下を倒し、忍も倒した。だから報復に来ただけだ」

「そうかよ……琴葉ァ!」

「……はっ、はい!」


 落武者と睨み合いながらも、叫ぶように呼ばれた琴葉は驚きながら身体を跳ねさせる。

 

 同時に竜は全身に蒼色の霊力(れいりょく)をまとい、戦闘体制を整えた。


「オレの援護を頼む! そして劉兎を救出する!」

「ふむ、救出か、やってみろ」


 刀を構える落武者に対し、竜は地を蹴った。

 刀と拳が激突する。



 同時刻、廃墟の別の部屋にて――。

 

「見事……だ」

「悪霊に褒められたって嬉しくないね」


 竜達と合流すべく、霊界(れいかい)から突入した萌葱(もえぎ)は、相対した落武者を祓除していた。

 突入後間もなく落武者と遭遇した萌葱は、即座に戦闘に入り、そして勝利していたのだ。

 

 刀を振り、付着した落武者の血を払う。

 首を斬られた落武者は、静かに霧散していった。


「……ところで、さっきから聞こえた爆発音はなんだったんだ」


 落武者の霧散を確認し、劉兎と忍者の戦いで起きた爆発音の方向へと視線を向ける。

 現時点では暗闇に沈む通路しか見えない状況に、息を飲みつつも萌葱は足を進めた。


「竜! 琴葉! 劉兎!」


 通路を歩きながら三人の名前を呼ぶ。

 しかし誰一人反応を見せない状況に、萌葱はゆっくりと焦りを感じていた。


「緊急通報から既に三〇分……いや、一時間か」


 デバイスの時計と、そこから出せる緊急通報の履歴を見ながら思案する。

 最初の竜による緊急通報から、現在は既に約一時間が経過しており、余談は許せない状況である。

 

 更に、竜達が突入した場所と同じ場所に降り立ったにも関わらず、そこに居たのは落武者ただ一人。

 萌葱の脳内に悪い妄想が巡る。


「何の音かは分からないが……爆発音が止んだってことは何かしらの戦闘が終わったってことだ」


 廃墟の各部屋をクリアリングしながら進む萌葱。

 刀を握る手には力が入り、焦りが身体にも滲み出ていた。


「みんな、生きていてくれよ……!」


 部屋のクリアリングを終え、異常が確認できなかったことで駆け抜ける。

 新たな悪霊に注意しながら、萌葱はその足を着実に爆発音がしていた戦場へと運んでいた。



 更に同時刻、霊界では――。


「嘘……だろ」

「嘘では無い」


 バラクラバの一人が地に伏せていた。

 目の前には怒りで眉をしかめ、歪んた表情を見せる幸太郎(こうたろう)が立っている。

 

 悪霊退散会あくりょうたいさんかいに襲撃しに来た四人のバラクラバは、程なくして幸太郎と戦闘を開始し、終わりを告げる。


「これが……【研ぎ澄まし】の力かよ!」

「お前達、霊の歌から知らされていなかったのか? あまり舐めるなよ、ウチを」


 地に伏すバラクラバの両脚は既に無い。

 幸太郎の猛撃により、両脚を失ったバラクラバは、身動ぎするので精一杯だった。

 

 無慈悲に、冷酷に、淡々と近づいた幸太郎は、足でバラクラバの頭を潰し、一撃で仕留める。


「幸ちゃん……」

「流石に会長か」


 そんな幸太郎を憂いげに見つめるのは、月音(つきね)に膝枕をし、霊力を送ることで延命させている華鈴(かりん)

 襲撃した敵を全員倒したと言うのに、その表情は晴れない。

 

 それは、戦禍に巻き込まれた霊界を見てか、はたまた普段は見せない怒りを顕にして、容赦なくバラクラバを祓う幸太郎を見てか、またはその両方か――。


「オイオイ、マジかよ」

「……なんだお前、新手か」


 そんな幸太郎の神経を逆撫でするように現れたのは、(あずさ)とカナデを襲った銃を持つバラクラバ。

 既に戦闘が終えていることに驚きを隠せないバラクラバは、手に持っていた銃を構えることすら忘れていた。


「アンタ、そんなに強えのか? みんな祓っちまったってのか!」

「ああ……お前達のことは知っている。バラクラバ、ドイツ語の一から十の名前を冠した、特別な悪霊だろう」

「……なるほどね、それを知ってるってことは、あんたが会長の幸太郎か」

「そうだ」


 やっと自分の持つ銃を思い出したバラクラバは、ゆっくり幸太郎に銃口を向ける。

 

 しかしそのような状況にも関わらず、据わった眼でバラクラバを見つめた幸太郎は、刹那の間でバラクラバに接近すると、両腕を折り、その場に蹴り倒す。


「……なんて速さだよ!」

「私がその程度の玩具で慄くとでも思ったのか? 心外だな、私は悪霊退散会の会長だぞ」


 両腕を折ったことで地面に捨てられた銃を足で踏み壊し、バラクラバの胸ぐらを掴む。


「答えろ、お前達の目的はなんだ、何故このような襲撃を起こした……いや、そもそもどうやって霊界に侵入した」

「……質問はひとつにしてくれよ」

「お前にそれを言う権利は無い」


 言わないならこうだ、と言いながらバラクラバの腕を手刀で飛ばす幸太郎。激痛で叫ぶバラクラバの事など気にせず、幸太郎は怒鳴った。


「答えろ!」

「ハハ……アイツだよ」

「アイツ……?」


 顎で背後を示唆され、振り返る幸太郎。

 その先に居たのは、華鈴と月音。


「……まさか」

「ああそうさ! ここにはバラクラバ十人と、数十体の悪霊が襲撃した! でもなぁ、もう一人居るんだよ、そもそもこの襲撃の根源となった、()()()()()()()()()()が!」


 高笑うバラクラバ。狂ったようにその笑い声だけが辺りを飛び交い、声を上げる度にバラクラバの口内からは血が溢れ出す。

 

 胸ぐらを掴んでいる幸太郎の手に更に力が入る。しかしそれは無意識だった。


 幸太郎とバラクラバから視線を向けられた華鈴は、バツが悪そうに視線を逸らし、月音も半開きの眼で幸太郎達を見つめる。


「……あやつは、何を言っておるんじゃ?」

「……月音」

「妾が、なんじゃって?」


 状況が理解できてない月音は、視線を幸太郎と華鈴へ右往左往させる。

 しかし、華鈴の憂いげな表情を見て、何かを察した。


「そうか」


 静かに息を吐く月音。


「妾が、元凶か」


 その視線の先には、戦禍に苛まれる霊界。


「ハッハッハ! お前達は元からあの方の掌の上だ! 悪霊を幽霊にィ!? そんなことできるわけねぇんだよ、バーカ! 死ね!」

「……まさか、私達の行動を予測したというのか? そんなこと、有り得ないだろう!」

「いいや有り得るね。()()()()()()()()()()()()()からな!」


 叫び終わった瞬間、バラクラバの首が飛ぶ。いや、捩じ切られる。

 胸ぐらごと首を掴んでいた幸太郎の手によって、バラクラバは葬られた。

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