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第5話 砂漠のオアシス、勝手に復活

灼熱。

 砂漠は、風景が溶けてしまいそうなくらい白かった。

 リリィは水筒を抱え、すでにぐったりしている。ノクスは毛玉状態で肩に丸くなっている。

「ひぃぃ……日陰、ないです……」

「まあ、帰る方向に歩けば、勝手に影ができるでしょ」

 そう言った瞬間、俺たちの頭上を雲の塊が流れた。まるで傘みたいに影を落とし、太陽を遮る。

 ……本当に、勝手に。

 リリィが「奇跡です!」と両手を合わせる。いや、俺はただ冗談で言っただけなんだけど。

 地図によると、目的地は「サーベルの瞼」と呼ばれるオアシス。昼は熱波で閉ざされ、夜にしか現れない。

 だが到着してみると——そこは、完全に干上がった湖底だった。

「こ、これが……呪いのオアシス……?」

「門の条件は『乾いた竜の涙』。つまり、ここに竜がいたってことか」

 湖底の中央には、巨大な竜骨。砂漠の風に削られても、まだ輪郭を保っている。

 竜の頭蓋の眼窩から、ひび割れた涙の跡が流れ、湖底にしみ込んでいた。だが水はもう無い。

「涙を……取り出さないと」

「水じゃなくて、乾いた涙、だよね」

 俺はポケットからハンカチを出し、竜骨の眼窩を軽く拭った。

 すると、ひびに詰まっていた結晶がポロリと落ちる。透き通った石の粒。まるでガラスの涙。

「これだ。乾いた涙」

「ひと拭きで……!」

 リリィが目を輝かせる。ノクスは結晶を前足で転がし、舌でちょんと舐めた。すると——

 湖底の砂がざわっと揺れ、地面の下から冷気が噴き出した。

 割れ目から地下水が溢れ、結晶が共鳴して泉となる。

 あっという間に干上がった湖が青く満ち、砂漠にオアシスが復活した。

「すごい……! 竜が蘇ったみたい……」

「いや、ハンカチで拭いただけ」

 その瞬間、周囲の砂丘からわらわらと人影。砂漠の民だ。長老らしき白髪の男が涙を流して叫んだ。

「オアシスが……甦ったぞ! 英雄だ!」

「英雄じゃなくて、ハンカチマン」

 村人たちは宴を始め、ラクダみたいな獣の乳酒を振る舞ってくれた。

 俺は水筒を満たしながら、地図の次の目的地を見つめる。——空に浮かぶ島。浮遊石が眠る場所。

「砂漠を越えたら、空の島へ行こう」

「は、はい! でも、どうやって……空に?」

 答えは、翌朝やって来た。

 復活したオアシスの泉から、巨大な風柱が立ち上がり、空へ道を描いていた。

 それはまるで「こちらへどうぞ」と言わんばかりのエスカレーター。

「帰宅部エスカレーター……?」

「そんな便利なの、聞いたことありません!」

 俺たちは民に見送られ、風に乗って空へと昇っていった。

 目指すは、浮遊石の心臓——。

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