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第12話 さよならツアー(最終回)
目を開けると、懐かしい匂い。
教室。窓から差し込む朝日。チャイムの音。
「……帰ってきた」
机には見慣れた教科書。黒板には担任の文字。
リリィもイリスもノクスもいない。俺ひとり。
全部、夢だったんじゃないか——そう思った瞬間。
「カケルさん、起きてください!」
「もう、寝坊しすぎです」
「ニャ」
振り向けば、そこにいた。
リリィもイリスも、そしてノクスも。制服姿に溶け込むように。
「え……なんで!?」
「どうやら帰郷門は、“行き来できる道”だったみたいです」
イリスが微笑む。
「英雄様がいなくなったら困る、って世界が判断したのかも」
リリィが小声で付け加える。
俺はため息をついた。
「……帰宅部なのに、また放課後が冒険になりそうだな」
窓の外では、どこか別の世界の空がちらりと揺らめいた。
教室のチャイムが鳴り響く。
「それじゃ、行くか」
「はいっ!」
「ええ」
「ニャ」
こうして俺の“帰宅部”は、いつでも異世界と行き来できる部活動になった。
——世界最重要人物? 英雄? 知らない知らない。
ただの帰宅部。だけど、それで十分だ。
今日も俺は帰る。笑いながら。




