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第拾肆話 『ルッツ』→『?』

登場人物の名前を決めるのって想像してた以上に難しくて。設定とかも考慮したうえでどれがいい、これがいいなどと考えるのは苦労します。ちなみにレオナ、ルッツと貴族っぽくない名前なのはハルトやツェツィーリアが貴族として育てようとしていないからという背景があります。

第拾肆話 『ルッツ』→『?』


「チッ、絶対に殺してやる。」


「レオナ、逃げるんだ。お前だけでも生き残るんだ。」

「いやだ!逃げたらルッツ死んじゃう!」


そう言いながらレオナは男を剣で弾き飛ばした。


「この!じゃあ、お前だ!」

男は標的を変え、ラティスへと迫った。

ラティスは、手元にあったカバンから何かを取り出し、迫ってくる男へ投げつけた。


「なんだ?」

男は止まり、投げつけられたものが何かを確認する。


「それは痛み止めだよ。通常使用する濃度の512倍だ。それは一度に大量摂取すると、意識が混濁するんだ。魔族には人間よりは効き目は弱いかもしれないが、それでもしばらくしたら効いてくるぞ。そろそろ、力がはいってこなくなったんじゃあないか?」


「なぜ、こんなものが?」


「それはなこの坊主に使っているものだ。最初はそれの薄い奴を使ってたんだがな、効き目がなくなってくるのが早くてな。それで、どんどん濃度をあげていった結果が512倍だ。坊主には【毒耐性】あるせいで意識が混濁することはなかったけどな。効き目も薄かったけど......。」

 

ルッツは内心驚いていた。思ってたより薬がヤバいものだったことに。


「ッ……!早く戻らなければ。早く小僧を殺さなければ。」

男は沈みそうな意識を何とか持ち、残る力を振り絞って、ルッツの下へ接近する。

そして魔法を発動しようとした、そのとき、


「させない!」

レオナがベッドに横になっている、ルッツの前へ手を広げて男の攻撃を阻もうとする。

「駄目だ。逃げるんだ!」

ラティスは、レオナをかばうようにして、男に背中を向けた。

「邪魔をするなぁぁぁぁ!」

男の魔法は、ルッツに当たることはなく、レオナを庇ったラティスに当たった。


ラティスと、レオナは青白い光とともに、光りの粒子となって、消えてしまった。

「レオナ!ラティス!……あぁぁぁぁぁあ‼」


「はぁ、はぁ、これで俺を、遮るものは、もういないな。じゃあ、死ぬ前に、何か言い残すこと、はあるか?」

息を切らしながら男は言った。


「最後に、お前の名前、を教えてくれ。」


ルッツには勝算があった。【高速再生】があれば、脳や、心臓が、撃ち抜かれて即死されない限りは

生き残れると。男が去って、生き残ったときに名前を知っていればいずれ役に立つかもしれないと考えていた。


また、この時のルッツはディーヌが呪いを使えたことも、またその呪いが聞かなかったことにも気づくことはなかった。


「いい、だろう。俺の名前は、ディーヌだ。冥途の、土産に、でもしろ。死ね!」

男──ディーヌは手からものすごい熱量を感じさせる火の弾のような魔法をルッツに向かって放った。

魔法は、ルッツに直撃しても弱まることなく、有り余ったその力は、爆発し、屋敷を吹き飛ばした。


バァァァァァァァン!!


「任務、完了だ。そろそろ、ヤバいな。戻るか。」

ディーヌは魔法がルッツに当たったことを確認すると、ディーヌは混濁する意識で

どこかへと消えていくのであった。



「はぁ、はぁ。生き残ったか。」

俺は、呆然としながら、今もまだ燃え続けている屋敷を見つめているのであった。ほとんど服も燃えてしまった。力が入らず、起き上がることができない。


ポツ、ポツ、雨が降って来た。


「父さん、母さん、レオナ、ラティス、リーゼ……。」

涙があふれ出てくる。天気は俺の心を映しているかのように、どんどんその激しさを増している。


火は消えたが、屋敷は原型をとどめていなかった。


「ルッツか」

アイヌ語では「ミミズに似る」という意味の『ルッチ』が由来とか前世で何かで見たな。

 ははっ。まさに俺は土の上にうずくまっているミミズに近しい存在というわけだ。


痛み止めはすでに切れていたはずなのに、体が痛くない。なぜ、今なんだろう。痛くなくなるのが、

もっと前だったら、みんなを助けられることができたかもしれないのに。


自分が情けなくて仕方がなかった。俺はまだ、何かあるかもしれないと思って、やっとの思いで立ち上がり、屋敷のあたりを見渡してみた。ずっと、ベッドの上で生活していたせいで、筋肉が落ち、立っているだけで、正直つらい。熱が高いせいか、倦怠感もある。


目の前に折れた剣が落ちていた。ハルトの剣だ。

(これで首を斬り落とせば俺もみんなのところに──。)

地べた横になり、剣を頑張って持ち上げる。

──早く楽になりたい。


その一心で、剣を重力に任せて落とした。

しかし、世界は非情で残酷であった。

ルッツは【高速再生】を持っていた。これは常時発動で、本人の意識でON、OFFをすることはできなかった。


首を切ったのにもかかわらず、その瞬間から頸は再生され、切断することは叶わなかった。


「なんで──?殺させてくれよ!なんで、なんで、なんで、なんで!?俺にはもう何も残ってないんだよ!?ずっと苦しい思いをして生きたんだよ!?普通の生活が欲しかった!なんで俺から、幸せを奪う!?こんな世界に俺はもう必要ないんだよ!?家族も、リーゼもラティスもみんな不幸になった!俺のせいだ!俺が、俺がそばに、居たから。俺なんて存在しちゃいけないんだよ──。なんで──。」


涙があふれてくる。この世の中の理不尽が許せない。この言語化できない怒りの感情は、吐き出しても

亡くなることはなかった。



「──ご、、ん、sい。」


すると、焦げた何かの山の中から声が聞こえた。


白い女性がいた。あちこちやけどしていて、生きているのが不思議だ。

この女性に何か特別なものを感じた。俺は衰弱した体に、力を入れ、倦怠感に耐えながらゆっくり女性の方へと歩いて行った。


「生きて、いますか?」

声をかけても反応がない。やはりだめなのか。

黒い何かの山から、女性をどうにかして、引っ張り出す。


「ゴホッ!」

「大丈夫ですか!?」

「ここは?あなたは……!ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。……。」

女性は、俺に謝りながら泣き始めてしまった。


「落ち着いてください。俺はルッツです。貴女の名前は?」


「……ネアよ。一応ニンゲンたちの言うとこの神みたいな存在よ。詳しくは言えないことになっているんだけど、神の世界に、魔人がやってきて、私はそれを止めるために、死んだ人の魂を転生させて対抗しようとしたの。それがあなたよ。神力を使って、貴男にスキルを色々付与しようとしていたら途中で、魔人が邪魔をしてきて。それで貴男には【観察眼】と言語理解能力しか与えられなかったの。それに言語理解能力は中途半端にしか与えられなかったから、ステータスには反映されなかったの。だから言語を理解できるようになるまでに、ラグがあったし、文字は最初からは読めなかった。さらに魔族にあなたの家族も奪われてしまって......。本当にごめんなさい。あなたには誤っても謝り切れないわ。」


説明長すぎ…….そんな背景があったんだな。


「もう、大丈夫です。では、一つお願いがあります。俺にはもう何も残ってません。自殺もかないませんでした。残っているのは、貴女とあのクソ魔族だけです。僕はどうすればいいのでしょうか?」


「じゃあ、私のためにカスをボコボコにするのに協力して欲しいの。ええと、結構精神的に来るものだけどそれも耐えてもらいたいわ。」

くそまずい漢方を飲んだような顔で言うネア。どんだけ精神に来るんだよ。


「わかりました。俺にはもう自分で生きる意味を見出すことはできない。貴女が僕に意味を与えてください。」

すべてをあきらめたような目。目には光が灯っておらず、生きているとは思えないような目だった。

ネアはとんでもないものを拾ってしまったかもしれないと少し思った。


「では。あなたには女の子になってもらいます。」


「……!?」

ネアが謝っている割に言葉遣いが普通なのは神という存在で自分より上位の存在がいないため、丁寧な言葉遣いを知らないためです。心の中ではとても謝っています。



お読みいただきありがとうございます。面白い!また読みたい!と思った方はブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。

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