第壱話 始まりとは終わりの始まりである
初投稿です。拙い文章ですが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
第壱話 始まりとは終わりの始まりである。
「──けて!」
何か音が聞こえる気がする。しかし、俺の意識は覚醒することなく、深い闇の底へと沈んでいくのであった。
◆主人公視点
───ここは? あまり良く覚えていないが死んだことだけは覚えている。自分の名前も思い出せない。
眼は見えないけど、感覚もある。 それにしてもここは狭くて、暗くて、生ぬるいな。
これは本当に死後の世界なのか?頭側が何か道になっている気がする。そっち側に進んでみよう。
「あ゛ぁ゛~あぁぁ~~~~~!!!」
何か外から声が聞こえるぞ。よしそろそろ外だ。
───ッ!!まぶしい!目が開けられない。少しずつ目が慣れてくる。あたりを見渡すが、目がぼやけていて全くわからない。しかし、部屋がとても広いことはわかる。
俺はいま、女性に抱えられている。この女性は俺の母親⁉
つまり、これは噂の異世界転生というやつか。いざ当事者になってみると、案外、落ち着いているもんだな。
「イエ ロクフォ ケ リィ! サドック リーヤ!」
何語だ、これ?白と黒っぽい服装だからメイドさんかな?
そのメイドさんが何かを言っている。普通は転生者補正で、言葉が分かるんじゃないの?
しかし、現実は非情であったということなのだろう。英語が苦手だった俺からすると、言語を一から覚えるのは苦だぞ。
「サウ パスックヴィヴィ イズク コスコボッブ ディーヤ!」
声のする方向へ顔を向けてみると、よく見えないが、結構幼い少女がいた。髪の毛の色は黒色である。
この子が俺の姉になるのか。俺は、前世は妹がいたが、姉はいなかった。来世は姉のいる家庭がいいと
日ごろから願っていたのが良かったのか。
そんなことを考えていたら、メイド?が俺の体を湯につけて洗い始めた。妹の名前を思い出そうとしたが思い出せなかった。はやり、前世の記憶が一部抜け落ちているようだ。
「サウ キュスクス ディー ガゾー イェーブ リヨニ キューゴ. カヤ ゾボカコ クディッキ カヅスービ」
湯につかって濡れた体をメイドに拭いてもらった。ぬめぬめしていて、気持ち悪かったから、助かった。
しかし、困ったな、言語が分らないとは、これは結構ハードモードかもしれないぞ!
「ゾヴィコー ポーン ヲ リボークド ワスブ」
メイドがまた何か言った。そうすると急に、母親?がお胸をだしたのだ。
俺は失念していたのだ。転生したら通らなくてはいけない道を!
そう授乳だ!精神年齢17歳の俺には刺激が強すぎる。至近距離だから、眼がぼやけない。
ハードモードなんて言う生ぬるいものでは無かった。ベリーハードなモードだったのだ。
───これを俺の歯が生え始めるまでずっとやらなければいけないのか?
何たる苦行。俺は、絶望した。始まったばっかりなのに、もう終わりなのだ。
そう、始まりとは終わりの始まりなのだ……!
しかし、救いがあった。母親のお胸がそんなに大きくなかったのだ。
基準はよくわからないが、多分A~Bとかだと思う。諦めろ、俺!心を静めるんだ!
心は明鏡止水の境地だ!
~数分後~
予想より何ともなかったわ。血が家族だ取り化しているからなのか、どうなのだろう?
う、苦しくなってきた。ゲップが出そうだけど出ない感じだ。するとメイドが俺を抱え、背中をトントンをした。
するとゲップが出た。なんだか、安心してきたのか眠くなってきた。
赤ちゃんの体力ってこんなすくないのか………。
「ドー マルスヴェン ニョクスド モビー, レド サク サド ユキ?」
メイドが何かいているが、もう限界だ、お休み。
◆第三者視点 (遡ること数分)
ヴィルヘルム辺境伯の家では一つの新たな生命が誕生した。
「あ゛ぁ゛~あぁぁ~~~~~!!!」
母親は叫びながらも、メイドの助けによって無事に男の子を出産することができた。
「生まれましたよ!男の子です!」
子どもが生まれたら、メイドが性別を確認して言った。
「これでわたしもついにおねえちゃんだね!」
元気な声でお姉ちゃん宣言をしているのは、長女のヴィルヘルム・フォン・レオナ 4歳である。
見た目は黒い髪で、顔も整っている。将来はとても可憐な女性となることだろう。
「体を拭くので、じっとしていてくださいね~」
メイドは赤子の体についている、血や羊水を拭くために、横に置いてあった湯船に赤子をつけて、体を拭いた。
「母乳をあげてください。もう少し後でもよいですが、1時間以内には上げないとだめですよ」
メイドがそういうと、母親は、乳房を服から出した。
赤子は最初、何故か、嫌そうな顔をしていたが、最後はしぶしぶ乳房を口にくわえるのだった。
「リーゼ、それにしてもこの子泣かないけど大丈夫なの?レオナの時はもう泣いて、泣いて大変だったじゃない?夜でも構わず泣くから、寝不足で死ぬかと思ったわ。おかげで【睡眠耐性】がついたけどね」
リーゼとは、メイドのことである。母親は母乳をあげながらメイド──リーゼに問いかける。
レオナの時は、夜泣きがひどく、母親は寝ることもままならなかったそうだ。
「そうですね、特にこれといって、悪いということはないと思いますが、何らかのスキルを持っているのかもしれません。経過を観察しているしかないでしょう」
「わかったわ。そろそろ、母乳をあげるの終わりでいいのかしら?」
「いえ、あともう5分ほど位あげたほうが良いでしょう。栄養が足りないと困りますので」
「そうね。レオナの時に、いろいろ覚えたはず何にあまり覚えてないわね。私も思い出していかないと」
メイドと会話をしているうちに5分経った。
乳房を赤子の口から、取り出し、服にしまった。すると次にすることがゲップである。
ゲップがうまくできないので、母乳を吐き出してしまう可能性がある。だからしなければならないのだ。
メイドが赤子を抱え、背中をトントンするとゲップが出た。安心したのか、赤子は眠りについた。
「おかあさん、このこのなまえってどうするの?」
近くにいた、レオナが、母親に聞いた。
「そうね、この子の名前は、ルッツにしようかしら?」
そういうと、レオナが
「るっつ!るっつっていうんだね!」
と元気な声で答えた。将来は弟っこになるのだろうか?
こうして、新たな生命は誕生し、名づけも行われたのであった。
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