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記憶よりも、深く  作者: 黒猫の凜
第二章
8/14

2人が選んだ道

由衣が姿を消して、3年の月日が流れた――


咲希のデスクには、特殊能力事件の資料が無造作に広がっている。

いつも新しい情報が入り次第、すぐに目を通す。

そこに由衣の影を探すかのように――。



咲希はあれから、知人への聞き込みやネットで由衣を探し続けた。

しかし想いは届かぬまま、卒業式を迎えた。

このまま個人で探すことに限界を感じ、思い至ったのが、

CPA――あの日、咲希に聞き取り調査をした国の機関だった。


とはいっても、簡単な道ではなかったが……。


運動神経には自信があった。

学力は……あの日の後悔を胸に、必死に食らいついた。

その結果、最年少でCPAに所属することができた。



特殊能力者について学ぶ中で、思ったことがある――。

多くの特殊能力者は、視力や腕力など、身体的な資質が突出する。

だが――由衣の力は異質だった。


彼女は「記憶を書き換える」ことができる……それも、恐らく念じただけで。


由衣の力は強すぎる――。

年月が経った今では、由衣もその強い力に振り回された1人なのかもしれないと感じていた。


(ちゃんと見つけるから……まっててね。)



薄暗い廃ビルの一室で、跪く人影が並んでいた。


由衣は端から順に記憶を操作していく――。

この3年間、何かから逃げる為、生き延びる為、能力を使い続けた。

今では、記憶を操作された人々が半ば“信者”のように由衣を囲っていた。

それでも安心できない由衣は、週に一度はこうして記憶の操作を重ね、裏切る者、反抗する者が現れないようにしている。


生活に必要なものは、食事でも着替えでも、周りの誰かが用意してくれていた。

どこで調達したものかは分からないが、今の由衣にはどうでもよかった。


思い出すのは、過去の後悔と、いつも側にあった優しさ……。

(咲希……ごめんね。もう、戻れないよ……。)


忠実な眼差しに囲まれながら、

それでも彼女は、誰より孤独な眠りに落ちていった。

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