見えてきた変化
咲希が最初に違和感を覚えたのは、あの“園田さん”の態度だった。
“女帝”なんて呼ばれてて、いかにも由衣が苦手そうな子。
それなのに、
その日、由衣のクラスを訪ねると――
園田さんが彼女に熱心に話しかけていた。
しかも、驚くほど近い距離で――手まで握って。
思わず足を止め、厄介ごとかと身構える。
でも、由衣は笑っていた。
園田さんも、まるで猫でもあやすような声色だった。
なんだか気まずくなって、そっと教室を離れる。
(嫉妬じゃ、ない......はず。だって、友達増やせって言ったのはわたしだし。でも......)
後で聞いてみると、
「話してみると意外といい人で...」と、由衣は少し歯切れ悪く笑った。
(せっかく人脈が広がるなら、邪魔するのも悪いか。 )
そう思って様子を見ることにした。
「ほら、咲希に心配されてたしね。私だって友達くらい作れるよ。もう、大丈夫だから――。」
気のせいか、由衣の背筋も前より伸びて見えた。
「まぁ、自信がついてきたならいいんだけど。でもなんかあったら言いなよ?」
「うん、ありがと。」
*
彼女の変化は本物だったのかもしれない。
その後も、由衣の周りには次第に人が増えていった。
それ自体は喜ばしいことのはずなのに――
由衣のクラスを訪れるたび……私に向けられる視線が妙に重たい。
探られているような、羨ましがられているような……。
(でも私の方が前から友達だったんですけど!?)
……なんて内心で拗ねても、これはきっと、由衣が頑張った結果なんだ。
だから気にする必要はない。
できるだけ教室以外で会うようにしてもらったけど。
*
園田さんの変化も、由衣に友達が増えたことも好意的に受け止めた咲希だったが、
それでも違和感が拭えないような出来事があった――。
ある朝、いつもより早く準備ができて、たまにはと、由衣の家まで迎えにいくことにした。
(ここ数日、いろいろ考えたけど――
やっと、由衣の良いところをみんなが見てくれるようになったんだと思うと、少し誇らしい気もする。)
(でも、無理してないかちゃんと見て、支えてあげないと。)
そんなことを考えているうちに、目的の家が視界に入ってくる――。
……そこで、私は、思わず立ち止まった。
玄関先で、“あの”由衣のお母さんが――
優しく……娘の頭を撫でていたのだ。