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記憶よりも、深く  作者: 黒猫の凜
第一章
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記憶の消去

もし、自分に特殊能力があるとして……

(考えられるのは、記憶を消す能力……とか?)

だが、それを確かめるには、相手が必要になる。


歩きながらそんなことを考えていると、

隣から聞き慣れた声がして、由衣は現実に引き戻された。


「由衣、聞いてんの?」


「あ、ごめん……なんだっけ?」


咲希は軽くため息をつく。

「友達だよ。ちょっとは増やす努力しなよ?あんたの将来が心配だよ、私は。」


「いいんだよ……私には、咲希がいるんだから。」


咲希とは幼い頃からの親友だ。

そして、多分これからも――私にとって一番、大切な人。


咲希の呆れ顔を見ながら、ふと思う。

もし、私の能力が『記憶の消去』だったら……

加減を間違えたら、私との記憶だって消してしまうかもしれない。

たとえそうじゃなくても、咲希を“実験台”にするなんて……絶対に嫌だ。


唯一の親友を失う想像に、思わず身震いをする――。


「……絶対無理!!」


「……?いや、そんな言い切らなくても。この歳にして、我が子を心配する親の気持ちを理解するとは思ってなかったよ。」


「……咲希がお母さんだったらよかったのにな。」


「あんたねぇ……一応私の方が誕生日遅いんですけど。」

言い終わってから、咲希は少し気まずくなった。

(由衣に親の話なんてするべきじゃなかった……)

しかし隣を見ると、由衣は傷ついているというより、

何やら真剣に考え込んでいるようだった……。


(お母さん、か……)

由衣の両親は早くに離婚していた。

母との関係は、あまり良くない。

理由は分からない。ただ、他の子のお母さんとは、どこか違っていた。


食事は用意される。でも、会話はない。


誕生日ケーキも、おこずかいも――話を聞くたびに、正直周りが羨ましかった。


(……家に帰ったら、試してみようかな。一度だけ、確かめるだけだから。)



由衣が帰宅すると、母は無言で台所に立っていた。

テーブルに置かれたのは、おそらく昼に母が食べたおかずの残り。


量は、育ち盛りの子には少な過ぎる――。


文句を言う気にもなれず、黙って食べ、食器を洗う。

ソファには母の背中。スマホの画面を無言で見つめている……。


(……一度だけ。ほんとに、確かめるだけだから――)

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