第23話:健康と家族の味
真壁基氏と真壁碧純。
アパートで夕方を迎える。
つくば市の空。
夕陽がオレンジ。
碧純がキッチン。
夕飯の準備。
油が跳ねる音。
基氏がリビング。
原稿をチェック。
赤ペンが動く。
碧純が声をかける。
フライパンを持つ。
「お兄ちゃん、実家から届いた山菜で天ぷら作ったよ」
「食べようね」
「あぁ、いいな」
「けど、俺、料理しない時は大家さんに渡してたんだよな」
「もったいないよ!」
「これからは私が作るから、ちゃんと食べてね」
テーブルに並ぶ。
サクサクのタラの芽。
ふきのとうの天ぷら。
揚げたての香り。
緑が鮮やか。
天つゆが光る。
「いただきます」
「いただきます」
「お兄ちゃん、タラの芽ばっかり食べないで」
「ふきのとうも食べてよ」
「ん~、ふきのとうの苦みがどうも慣れなくて」
「この苦みがいいんだよ」
「お兄ちゃんみたいな冬眠してる人には特にいいんだから」
「いいのか?」
「パパが言ってたよ」
「冬眠してた熊が体内毒素出すのに食べるって」
碧純がニヤリ。
基氏の天つゆの皿。
ふきのとうを3つ。
ポン、ポン、ポン。
入れる。
戻すわけにもいかず。
基氏が渋い顔。
口に運ぶ。
苦みが広がる。
「お兄ちゃんの毒素ねぇ」
「萌え萌えって中毒症状の毒素だろ」
「碧純、世のオタクに謝れ」
「なんでよ?」
「みんな謎の病気にかかってるんだよ」
「秋葉原病的な?」
「お台場病?」
「脳みそくれ~の萌えゾンビになってるよ」
「ニュースで見たけど、うなだれて歩いてるじゃん」
「それ、夏コミだろ」
「暑くてぐったりしてるだけだ」
「わかってるよ、っとに」
「それより、外食ばっかりだったんでしょ?」
「こうやって健康志向になろうよ」
「ちゃんとサラダ頼んでたぞ」
「ちょっぴりじゃん」
「これからお兄ちゃんの健康管理は私がするよ」
「ポイント高くないぞ…」
「いいの!」
「作家って不摂生になりがちってネットで見たよ」
「わざわざ調べたのか?」
「たまたまよ」
「お兄ちゃんのために調べたんじゃないんだから」
「勘違いしないでね、キモッ」
「キモ言うな」
「キモいよ」
「キモ食べたいなぁ~」
「鮟鱇の季節は終わりましたー」
基氏がニヤリ。
苦いふきのとう。
薬だと思って食べる。
渋い顔が笑みに。
「よくできた妹だな」
「料理もしっかりしてるし、経済的で健康的だ」
「でしょ?」
「お兄ちゃん、私のことちゃんと見てよね」
「あぁ、見てるよ」
「お前、俺の大事な女だからな」
食後。
碧純が片付け。
キッチンで皿を洗う。
スポンジの音。
呟く。
「お兄ちゃん、実家からの野菜って、田舎思い出させるよね」
「あぁ、そうだな」
「俺一人じゃ食べきれなかったけど、お前が来てくれて助かった」
「うん、パパとママの味だよ」
「お兄ちゃん、健康に気をつけてね」
「ありがとな」
「お前が管理してくれるなら、俺も長生きできそうだ」
「そだね~」
「ポイント高いでしょ?」
「またポイントか」
「なんの特典だ?」
「私がずっとそばにいる特典」
「お兄ちゃん、私と一緒に未来作ってね」
「あぁ、いいよ」
「お前と一緒なら、なんでも乗り越えられる」
二人がリビング。
ソファに座る。
笑い合う。
穏やかな夜。
その夜。
基氏が自室。
原稿を進める。
キーボードの音。
考える。
「お前が料理で俺を支えてくれるなら」
「俺もちゃんと生きなきゃな」
碧純が自室。
サブスクを開く。
ベッドに座る。
呟く。
「お兄ちゃんの健康管理、私がちゃんとしないと」
「アニメで元気もらって頑張ろう」
翌日。
碧純が学校。
昼休み。
久滋川亜由美と話す。
教室の窓辺。
「碧純ちゃん、最近料理してるんだ?」
「うん、お兄ちゃんの健康管理のためにね」
「実家から野菜届くから」
「優しい妹だね」
「お兄ちゃん、幸せ者じゃん」
「うん、だよね~」
「ちょっと変だけど、大事にしてくれるよ」
「オタクって言ってたよね」
「どんな感じ?」
「うーん…アニメ好きで、真剣なとこもあるよ」
「私も支えたいなって」
「いい関係だね」
「私、弟しかいないから羨ましいよ」
「中二病の弟、面白いじゃん」
「バカみたいだよ」
「昨日も包帯巻いてたし」
「ははっ、お兄ちゃんも昔そんな感じだったよ」
碧純が笑う。
基氏の作家活動。
隠しつつ。
ごまかす。
胸が温かい。
夕方。
碧純が帰宅。
キッチンへ。
夕飯の準備。
山菜を炒める音。
「お兄ちゃん、今日も山菜炒めだよ」
「健康にいいからね」
「美味そうだ」
「ありがとな、お前」
「そだね~」
「お兄ちゃん、私と一緒に長生きしてね」
「あぁ、お前がいてくれるならな」
二人がテーブル。
炒め物を食べる。
山菜の風味。
懐かしい味。
「お兄ちゃん、実家の野菜って、パパとママの愛情だよね」
「あぁ、そうだな」
「昔、母さんが山菜採ってきて、父さんが天ぷらにしてくれたっけ」
「うん、私も覚えてるよ」
「お兄ちゃんが苦いって顔してたの」
「今も苦いけどな」
「お前が作ってくれるなら、食えるよ」
「お兄ちゃん、それポイント高いよ」
「またポイントか」
「お前、俺をどうしたいんだ?」
「お兄ちゃんが健康で、長生きして、私と一緒にいて欲しいだけだよ」
「あぁ、そだね~って返すか?」
「そだね~」
「お兄ちゃん、私のことちゃんと見ててね」
「あぁ、見てるよ」
「お前、俺の大事な女だからな」
二人が笑う。
食卓を囲む。
温かい時間。
その夜。
基氏が原稿。
異世界冒険の続き。
碧純が片付け。
キッチンで呟く。
「お兄ちゃん、パパとママの味で元気になってね」
基氏が自室。
原稿を進めつつ。
呟く。
「お前が実家の味で俺を支えてくれるなら」
「三次元も悪くないな」
翌朝。
碧純が朝食。
トーストを焼く。
基氏がコーヒー。
リビングで。
「お兄ちゃん、実家の野菜で健康になろうね」
「あぁ、お前のおかげだよ」
「ポイント高いな」
「そだね~」
「お兄ちゃんと一緒なら、私も頑張れるよ」
二人が笑う。
朝食を食べる。
家族の味。
絆が深まる。




