第17話:アクセサリーと兄妹の絆
真壁基氏と真壁碧純。
イーアスつくばのとんかつ屋。
遅めの昼食を終える。
テーブルに皿が並ぶ。
とんかつの脂が光る。
サラダボウルが空。
碧純が目を輝かせる。
笑顔で言う。
「お兄ちゃん、肉ぶ厚いし」
「衣サックサクで、ご飯も選べるし」
「サラダ食べ放題って最高だね!」
「あぁ、ここは譲れない理由があるだろ」
「お前も気に入ったみたいで良かった」
「うん、お洒落なとんかつ屋って感じでご満悦だよ」
「でも、まだ買い物したいな」
「何だよ、まだ足りねえのか?」
「アクセサリー屋さん、ちょっとだけ見たい」
「お願い!」
手を合わせてウインク。
碧純の瞳がキラキラ。
基氏は断れず。
ため息。
「分かったよ」
「けど、父さんからのお小遣い無駄にするなよ」
「わかってるって!」
二人が向かう。
アクセサリー店。
リーズナブルな品から。
ブライダル商品まで。
ガラスケースが並ぶ。
キラキラ輝く宝石。
碧純が足を止める。
ブライダルコーナー。
指輪が光る。
店員が近づく。
笑顔で言う。
「良かったら試着してみませんか?」
「未来に向けて彼氏さんと考えるの、楽しいですよ」
基氏と碧純。
一瞬顔を見合わせる。
目が合う。
碧純が上機嫌。
応じる。
「はい、高校卒業したら結婚する予定なんですよ」
「おい、碧純、ちょっと!」
「何? ダーリン?」
お尻をつねる。
ニコッと笑う。
基氏が鋭い目。
黙らされる。
妹の遊び。
付き合うのも兄の役目。
言葉を飲み込む。
店員が勧める。
高価な指輪。
碧純が試着。
指に光る。
「ダーリン、どう?」
「お、おう」
「よくお似合いですよ」
「綺麗な指ですもの」
店員が微笑む。
碧純が楽しそう。
続ける。
「最近は結婚指輪だけゴージャスにする人もいるんですよね」
「婚約指輪って普段使いしにくいし」
「そうなんですか」
「でも、やっぱり憧れます」
「女性の一生の宝物ですからね」
基氏が少し離れる。
別の商品棚。
目が留まる。
店員が言う。
「こちらはライトノベルとのコラボ商品です」
「ヒロインが作中で身につけてるんですよ」
『青春豚野郎は妹と結ばれることをただ願っている』。
タイトルが並ぶ。
基氏にとって。
作家へのきっかけ。
懐かしい作品。
「碧純、これなら買ってやるぞ」
「え? いいの?」
シルバー925製。
天使の羽モチーフ。
キュービックジルコニアが輝く。
ネックレス。
一万五千円。
手頃な価格。
「入学祝いだ」
「買ってやる」
「やったー!」
「お兄ちゃん大好き!」
腕にしがみつく。
碧純の笑顔。
店員が目を泳がせる。
言う。
「仲がよろしくて羨ましいです」
「着けていきます!」
基氏が会計。
碧純がネックレスをつける。
鏡で確認。
首元が光る。
「お兄ちゃん、どう?」
「可愛い?」
「うん、この作品の妹が神でな」
「お兄ちゃんに聞いた私がバカだった」
「イー」
歯を食いしばる。
だが、嬉しさ隠せず。
笑みがこぼれる。
「ほら、次行くぞ」
「食料補充とティラミス買うんだろ?」
「ああと、ソフトクリームも!」
「はいはい、わかってるって」
コストコへ移動。
広い駐車場。
痛車が目立つ。
二人が降りる。
「ひたちなか店にはママとよく行くけど、他の店舗は初めて」
「そんなに変わらんぞ」
「パンの種類が少し違うくらいだ」
「でも、ソフトクリームはあるよね?」
「あるよ」
「買い物終わってからな」
店内へ。
家電コーナーを通り過ぎる。
お菓子コーナー。
碧純が目を輝かせる。
「お兄ちゃん、お菓子買っていい?」
「遠足のおやつは500円までだ」
「ここで500円は厳しいよ」
「でかいポテチ詰めるだけになっちゃう」
「冗談だ」
「賞味期限までに食べきれるなら2、3個買え」
「だよね~」
カロリーメイト。
水。
ティラミス。
カートに入れる。
満杯になる。
「やっとソフトクリーム食べられる!」
イートインコーナー。
濃厚なソフトクリーム。
二人が手に持つ。
席に座る。
「お兄ちゃん、デートみたいで楽しかったね」
「普通に家族の買い出しだろ」
「も~、こんな可愛い妹が一緒に買い物してあげてるんだよ?」
「今のお兄ちゃん的にポイント高いな」
「高くない!」
唇にソフトクリーム。
碧純の顔。
基氏が指で拭う。
舐める。
「も~、お兄ちゃん、また子供扱い!」
顔を赤らめる。
基氏が笑う。
柔らかい声。
「お前、今更だけど、これ車に入るか?」
「後部座席倒して、助手席に乗せれば…」
「あ、お前がいるか」
「ティラミスとパンは抱いてくれ」
「ティラミスを抱く妹…」
「ラノベに書こうとしてるでしょ」
「面白いかも」
「車買い換えてよ!」
「痛車はダメだからね!」
荷物を積み込む。
RX-7が走り出す。
帰路につく。
翌朝。
学校で碧純。
教室の喧騒。
クラスメイトが声をかける。
隣の席。
「真壁さん、昨日イーアスにいたよね?」
「男の人と」
「彼氏?」
久滋川亜由美。
ギャル系の少女。
興味津々の目。
「碧純でいいよ」
「碧純ちゃん?」
「でいい?」
「うん、あゆちゃんって呼ぶね」
亜由美が続ける。
目を輝かせる。
「ねえ、彼氏?」
「いけない関係?」
「あれ、お兄ちゃんだよ」
「二人暮らしなんだ」
「今、休学中の大学生」
「へぇ~」
「つくばで大学生って頭いいじゃん」
「うん、成績は良かったと思うよ」
「いいなぁ、お兄ちゃん」
「ねえ、知ってる?」
「『妹のためならなんでもしたいお兄ちゃん』ってライトノベル」
「お兄ちゃんに憧れるんだよね~」
「あゆちゃん、一人っ子?」
「ううん、弟がいるけど」
「中二病真っ最中でバカだよ」
「ははっ、そっか」
「男の子ってみんなそんな感じかも」
「お兄ちゃんもオタク?」
「うん…極度っていうか、通り越したオタクかな」
「何それ?」
「ははっ、なんだろうね」
ライトノベル作家。
言い出せず。
碧純が笑ってごまかす。
胸が少しドキドキ。
その夜。
アパートで。
基氏が原稿。
碧純が夕飯。
シチューの香り。
「お兄ちゃん、学校で友達できたよ」
「そうか、良かったな」
「どんな奴?」
「あゆちゃんって子」
「ギャルっぽいけど、優しいよ」
「ギャルか」
「お前と正反対だな」
「うん、でも仲良くできそう」
「お兄ちゃんの作品、好きみたい」
「マジか」
「なんて言ってた?」
「『お兄ちゃんに憧れる』って」
「私、ちょっと嬉しかったよ」
「そうか」
「お前、俺のこと話したか?」
「うん、休学中の大学生って」
「作家とは言えなかったけど」
「いいよ」
「お前が楽しそうなら、それでいい」
「お兄ちゃん、私、お兄ちゃんのこと自慢したいよ」
「自慢か」
「痛車運転する変態兄貴でもか?」
「それはダメ!」
「普通にかっこいいお兄ちゃんでいいよ」
二人は笑い合う。
新たな日常。
絆が深まる。




