表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/46

第16話:ショッピングと痛車の試練

 真壁基氏と真壁碧純。

 つくば市のアパート。

 共同生活が2週間を超えた朝。

 朝陽がリビングを照らす。

 二人は朝食を食べる。

 トーストの香り。

 味噌汁の湯気。

 碧純がぽつりと言う。

 箸を手に持つ。

「お兄ちゃん、靴のサイズ合わないから返品して欲しいんだけど」

「買い物連れてってよ~」

 基氏がコーヒーを啜る。

 カップを置く。

「イーアスつくばが近いぞ」

「流石に一人でイーアス行くのってハードル高いよ~」

「付き合ってよ~」

「行くか」

「原稿も送ったし、デート取材も兼ねて」

「けど、アニ●イトがあるなら土浦イ●ンの方がいいかな」

「イ●ンは水戸でよく行ってたから、今度でいいよ」

「初めてのとこ連れてって」

「お兄ちゃん、ここら辺案内してよ~」

「まぁいいけど、ちょっと待ってろ」

「着替えるから」

「萌えな絵服は禁止ね」

「クラスメイトに会ったらなんて言えばいいか分からないもん」

「お前な~」

「嫁を身にまとって出かけるからこそいいんだぞ」

「お兄ちゃんの嫁って何人いるのさ~」

「部屋のキャラみんな違うじゃん」

「シャツの女の子だって毎日違うしさ」

「お前、それは言ってはならんのだ」

「オタクの常識なんて分かんないもん」

 鋭い突っ込み。

 基氏は言い返せず。

 無難な服を選ぶ。

 黒ジーンズ。

 白のシンプルなTシャツ。

 淡いブルーのジャケット。

 部屋から出てくる。

 碧純が念入りチェック。

 柑橘系のコロンの香り。

 確認して満足げ。

 頷く。

 彼女は桃色のワンピース。

 ふんわりした生地。

 ポニーテールを結ぶ。

 春の桜のような雰囲気。

 優しさが漂う。

 部屋を出る。

 碧純がバス停へ。

 足を向ける。

「おい、碧純、そっちじゃない」

「こっちだ」

「お兄ちゃん?」

「バス停あっちだよね?」

「つくば駅行くんじゃないの?」

「え? 車あるから」

「えぇ!?」

「お兄ちゃん、車買ったなんて聞いてないんだけど」

「車あるなら大子にいつでも帰れるじゃん」

「ん~それは無理?」

「無理?」

「なんで疑問形?」

「お兄ちゃん、実家嫌いになったの?」

 寂しげな顔。

 碧純の瞳が揺れる。

 基氏が慌てて否定。

「違う、違う!」

「単純に物理的に勘弁してくれ」

「俺の車で実家の道走ったらハマるし、腹擦るし、草木でボディ剥がれるから」

「え? ハマる?」

「ボディ剥がれるの?」

「お兄ちゃんの車、ダンボールでできてるの?」

「ダンボールならエコだな」

「軽くて燃費良さそう」

「ただ、よく燃えそうだ」

「お兄ちゃんの『燃えそう』が『萌えそう』に脳内変換されるんだけど」

「幌付きオープンカーとか?」

「ちょっと憧れるんだけど~」

 どんなボロ車か。

 碧純が想像。

 ハラハラする。

 基氏がガレージへ。

 彼女を連れて行く。

 大家のガレージ。

 シャッターが上がる。

 碧純が言う。

「な~んだ、パパの知り合いから借りるだけかぁ~」

「ん? ガレージ借りてるんだよ」

「大家の息子たちが東京に出て空いてるって」

「俺の車、海外で高く売れるから車窃盗に狙われるんだ」

「アパートの駐車場だとちょっと…ほら、この車」

 RX-7が現れる。

 痛車だ。

 ボンネットに。

『お兄ちゃんのためならパンツもあげるよ』のロゴ。

 4人の二次元美少女。

 シマシマパンツを差し出すイラスト。

 碧純が驚愕。

 大混乱。

 目を丸くする。

「やだやだ~何これ!」

「お兄ちゃん、バカ兄貴通り越してキモいよ!」

「セクハラだよ、公害だよ、訴えられるよ!」

「スポーツカー嫌い女子か?」

「SUVかミニバンならいいのか?」

「日本は白か黒しか許されない決まりでもあるのか?」

「違うよ!」

「車の形なんて何でもいいよ」

「パパのセダンでもボロくてもいいけど、この絵がダメなんだよ!」

 ラッピングの衝撃。

 碧純が涙を流す。

 ショルダーバッグで。

 基氏の尻を叩く。

 バシッと音。

「これやだ!」

「電車で行こうよ」

「買い物だろ?」

「荷物多いし、コストコにも寄りたいし」

「え? コストコ?」

「そう」

「車じゃないと厳しいだろ」

 コストコの魅力。

 碧純が泣き止む。

 目を拭う。

「ソフトクリーム買ってくれる?」

「あぁ、あの濃厚なやつは絶対だな」

「ティラミスもいい?」

「二人じゃキツいぞ」

「お前が食べるなら買うけど」

「うん、食べる!」

 食欲に負ける。

 碧純がRX-7に乗り込む。

 車高が低い。

 ぎこちなく座る。

「この車、最近あの少年名探偵で人気だぞ」

「コ●ン君?」

「出てきた!」

「え、これなの?」

「お兄ちゃん、イラスト消して真っ赤に塗り直そうよ」

「自慢できるのに」

「絶対嫌だ」

「これで飯食ってるのに、恥ずかしがる必要ないだろ」

「お兄ちゃんの萌え豚」

「萌え豚上等」

「どこで覚えた?」

「ネット」

 スマートフォンを見せる。

 碧純の手元。

 基氏が注意。

「運転中は見るな」

「シートベルトしろ」

 ロータリーエンジン音。

 独特の響き。

 車が走り出す。

「この音がいいんだよ」

「女の子は走れば何でもいいと思うよ」

「なら痛車だって」

「それは絶対ダメ!」

「妹がパンツ差し出すイラストの車に実の妹乗せるなんて、変態兄貴だよ!」

「大洗のアニメなら『茨城愛』でごまかせるけど」

「バカ兄貴が変態兄貴にジョブチェンジか?」

「実の妹じゃないけどな」

「うん、それはね」

「でも、妹でしょ、私」

 血縁ではない。

 だが、兄妹として育つ。

 呼び方が自然。

 基氏も「実の妹」と。

 自制心を保つ。

「だな」

「お兄ちゃん、この車じゃ実家の砂利道入れないね」

「だろ?」

「パパに言おうか?」

「ショベルカーで山崩して舗装するよ」

「マジで始めるからやめろ」

「父さん、サーキット作りそうだから」

「確かに」

「遊び場も黙々と作っちゃったもんね」

「ザリガニ採りしやすいように川の流れ変えたし」

「岩魚や鮎、ニジマスまで放してたろ」

「池まで作って、今はスッポン飼ってるよ」

「食べるんだって」

「流石、父さん」

 真壁家の山奥。

 広大な土地。

 裕福な暮らし。

 二人の未来を支える。

「次の印税で普通のSUVかミニバン買うつもりだけどな」

「普通の車?」

「さっき否定してたのに」

「父さん母さん連れて温泉行きたいからな」

「この車、四人乗りだけど後ろ狭いだろ」

「え? 四人乗りなの?」

 後部座席を見る。

 碧純が驚く。

 基氏が笑う。

「母さんなら見せびらかしに行くよな」

「MT車も平気だし」

 15分ほどで到着。

 イーアスつくば。

 広い駐車場。

 車を止める。

「すごい大きい~」

「内ジャスと負けないくらい広いぞ」

 碧純が腕にしがみつく。

 基氏が注意。

「こら、しがみつくな」

「迷子になるじゃん」

「お兄ちゃんが」

「俺が迷子かよ?」

「うん」

「碧純的にポイント高い?」

「どこで覚えた?」

「何買いたいんだ?」

「運動靴と通学用の小さい鞄」

「教科書置いてていいって」

 靴屋へ。

 碧純が靴を選ぶ。

 基氏は30センチの靴。

 探すが好みなし。

 試着用の椅子で待つ。

 45分後。

 碧純が2足持ってくる。

 相談する。

「お兄ちゃん、どっちがいいと思う?」

 通気性の良いランニングシューズ。

 エナメルのバスケットシューズ。

 基氏が考える。

「蒸れる季節だから通気性が…」

「いや、雨も多いからエナメルもいいか」

「意外にまともな答えだ」

「足蒸れるんだよね~」

「でも私の足臭くないからね!」

「お兄ちゃんのせいで気になっちゃって」

「蒸れるJKの足…ハァハァ」

「ストップ!」

「変態兄貴にならないで」

「すまん、ラノベ作家脳が暴走した」

「犯罪に走らないでよ」

「二次元の妄想が楽しいんであって、三次元には興味ない」

「キモいよ、お兄ちゃん」

「一足分は俺が出すから、2足買え」

「え? いいの?」

 レジを済ませる。

 次は鞄と本屋へ。

 本屋で。

 基氏が店長と話す。

 碧純が隠れて聞き耳。

「茨城先生、新刊もいい位置に並べますよ」

「ありがとうございます」

「よろしくお願いします」

 感動する碧純。

 だが、店外で待つ。

 ドアの外。

「お兄ちゃん、ちゃんと社会人してる」

「驚いたか?」

「うん」

「けど、店内放送で呼ばれたら恥ずかしいから外で待ったよ」

「ごめんな」

「タイトル恥ずかしいか」

「少し分かってよ」

 買い物を続ける。

 基氏が荷物持ち。

 袋を手に持つ。

「お兄ちゃん、疲れた」

「昼飯にしよう」

「ここに来たらとんかつだ」

「え~、パスタとかドリアがいいよ」

「とんかつは譲れない」

 優しい妹として。

 碧純が折れる。

 サラダ食べ放題のとんかつ屋。

 満足する。

 その後。

 コストコへ。

 広い店内。

 ソフトクリームとティラミス。

 碧純が笑顔。

「お兄ちゃん、美味いね」

「あぁ、お前が喜ぶなら買った甲斐があるよ」

 二人は笑い合う。

 買い物デート。

 絆が深まる。

 日常の一コマ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ