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第9話:崩れゆく要石と向き合う時

 真壁基氏は自室に籠もる。

 眠れぬ夜。

 ベッドに横たわる。

 目を閉じても眠れない。

 碧純の言葉が頭を巡る。

「私、全部あげてもいいよ」

 その一言が。

 心の要石を崩れ落とす。

「俺、どうすればいいんだよ……」

「お前を妹として守りたいのに」

「こんな気持ちが止まらない」

 呟きが暗闇に響く。

 胸が締め付けられる。

 息が苦しい。

 机の上の原稿。

 薄暗い部屋で白く浮かぶ。

 新作の妹キャラ。

 碧純そのものだ。

 ポニーテールの揺れ。

 無邪気な笑顔。

 彼女の影が滲む。

「もう逃げられないのか……」

 目を逸らす。

 だが、心は逃げられない。

 欲望と愛情が混ざり合う。

 抑えきれぬ疼き。

 一方、真壁碧純。

 リビングに座る。

 涙を拭う。

 スマートフォンを握る。

 指が震える。

 決意を固めた。

「お兄ちゃん、私のことちゃんと見てくれるまで」

「諦めないよ」

 声に出す。

 自分に言い聞かせる。

 涙がまた溢れる。

 兄への愛。

 兄妹を超えたもの。

 自覚していた。

 実の兄ではないと知った日。

 その日から。

 基氏は特別だった。

 優しい眼差し。

 守ってくれる手。

 その温もりが。

 いつしか恋に変わる。

 抑えきれぬ想い。

 翌朝。

 碧純はキッチンに立つ。

 朝食を作る。

 味噌の香りが漂う。

 いつも通り声をかけた。

「お兄ちゃん、朝ご飯できたよ」

「出てきてよ」

「……うぃ~」

 疲れた顔で現れた基氏。

 テーブルに座る。

 黙って味噌汁を啜る。

 目が赤い。

 寝不足の跡。

「お兄ちゃん、昨日、ちゃんと寝た?」

「寝てねえよ」

「お前が変なこと言うからだろ」

「変なことじゃないよ」

「私、本気だよ」

「お兄ちゃん、私のことどうしたいか」

「ちゃんと教えてよ」

「昨日言っただろ」

「抱きたいって」

「……ほんと?」

「あぁ」

「でも、それじゃ駄目なんだよ」

「お前は俺の妹なんだから」

 碧純は箸を置く。

 基氏をまっすぐ見つめる。

 目が潤む。

「お兄ちゃん、私、妹でもいいけど」

「女でもいたいよ」

「お兄ちゃんが私を抱きたいなら、それでいいよ」

「何!?」

「お前、マジで頭おかしいのか!?」

「頭おかしいのはお兄ちゃんだよ」

「私、ずっとお兄ちゃんのこと好きだったんだから」

 基氏は目を閉じる。

 深呼吸。

 心が乱れる。

「碧純、俺、お前を傷つけたくないんだよ」

「こんな気持ち持つ俺が許せねえ」

「傷つけてもいいよ」

「お兄ちゃんになら、私、全部あげてもいいって言ったよね」

「……お前、そんなこと言うな」

「俺、我慢してるんだぞ」

「我慢しなくていいよ」

「お兄ちゃん、私のことちゃんと見てよ」

 空気が張り詰める。

 静寂が漂う。

 二人の息遣いだけ。

 基氏は立ち上がる。

 碧純に近づく。

 足音が響く。

「お前、本気か?」

「うん、本気だよ」

「お兄ちゃん、私のこと女として見てくれるなら」

「それでいいよ」

 基氏の手が震える。

 碧純の肩に触れる。

 彼女の瞳を見つめた。

 深い黒い瞳。

「俺、お前を……」

 言葉が途切れる。

 基氏は碧純を抱き寄せる。

 強く抱きしめる。

「お兄ちゃん……」

 碧純の声が震える。

 基氏の腕の中で。

 涙が溢れた。

 頬を伝う。

「俺、駄目な兄だよ」

「お前をこんな風に思っちまって」

「駄目じゃないよ」

「お兄ちゃん、私のこと好きなら、それでいいよ」

 二人は抱き合ったまま。

 動かない。

 時間が止まる。

 温もりが伝わる。

 基氏の心の要石。

 崩れる。

 抑えていた欲望と愛情。

 溢れ出した。

 だが、その瞬間。

 基氏は我に返る。

 碧純を離す。

 手を放す。

「駄目だ……」

「こんなんじゃ、お前を壊す」

「お兄ちゃん、離さないでよ」

「私、壊れてもいいよ」

「良くねえよ!」

「お前は大事な妹なんだよ!」

「お兄ちゃん、私、妹だけじゃ嫌だよ」

「お兄ちゃんの女になりたいよ」

 基氏は頭を抱える。

 部屋に逃げ込もうとする。

 足が重い。

「お兄ちゃん、待ってよ!」

 碧純が追いかける。

 ドアを叩く。

 ドンドンと響く。

「お兄ちゃん、私のことちゃんと見てよ!」

「逃げないでよ!」

「……碧純、俺、時間くれ」

 ドア越しに呟く。

 碧純は立ち止まる。

 涙がこぼれる。

「時間って何?」

「お兄ちゃん、私のこと嫌い?」

「嫌いじゃねえよ」

「大好きだよ」

「だから、考えさせてくれ」

「……分かったよ」

「でも、私、待ってるからね」

 碧純は涙を拭う。

 リビングに戻る。

 ソファに座る。

 膝を抱えた。

 その日。

 基氏は原稿を放り出す。

 部屋で考え込む。

 頭が重い。

 心が乱れる。

「お前を妹として守るか」

「女として愛するか……」

「俺、どうしたいんだよ」

 過去の葛藤が甦る。

 碧純への欲望。

 抑えるため実家を離れた。

 二次元に逃げ込む。

 ライトノベルで発散。

 だが、碧純がすぐそばにいる今。

 逃げ場はない。

 心が揺れる。

 抑えきれぬ想い。

 夕方。

 佳奈子からメッセージ。

 スマートフォンが光る。

『基氏、碧純とどう? 仲良くしてる?』

「……仲良くしすぎてるよ、母さん」

 返信せず。

 スマートフォンを置く。

 ため息が漏れる。

 その夜。

 碧純は夕飯を作る。

 キッチンに立つ。

 鍋をかき混ぜる。

 基氏を呼んだ。

「お兄ちゃん、ご飯できたよ」

「出てきてよ」

「……分かった」

 テーブルに座る基氏。

 黙って食べ始める。

 山菜の天ぷら。

 味噌汁。

 箸が動く。

「お兄ちゃん、私のこと考えてくれた?」

「あぁ、考えてたよ」

「どう思った?」

「……お前を女として見てるよ」

「昔からな」

 碧純の目が輝く。

 心臓が跳ねる。

「ほんと?」

「あぁ」

「でも、それじゃ駄目なんだよ」

「俺、お前を傷つけたくない」

「傷つけてもいいよ」

「お兄ちゃん、私のこと好きなら、それでいいよ」

「好きだよ」

「妹としても、女としてもな」

「……お兄ちゃん」

 碧純が立ち上がる。

 基氏に近づく。

 足音が軽い。

「お兄ちゃん、私を抱いてよ」

「何!?」

「お前、マジで言ってるのか!?」

「うん、マジだよ」

「お兄ちゃん、私のこと女として見てくれるなら」

「それでいいよ」

 基氏は目を閉じる。

 深く息を吐く。

 心が揺れる。

「碧純、俺、お前を大事にしたいよ」

「こんな気持ち持つ俺が許せねえけど」

「お前がそれでいいなら……」

「お兄ちゃん、私、嬉しいよ」

 碧純が基氏の手を握る。

 温かい手。

 指が絡む。

 その瞬間。

 基氏の心の要石。

 完全に崩れた。

 抑えきれぬ想い。

「お前、俺の大事な妹だよ」

「でも、女としても愛してる」

「お兄ちゃん、私もお兄ちゃんのこと愛してるよ」

 二人は見つめ合う。

 初めて異性としての距離。

 縮まる。

 目が離せない。

 基氏は碧純を抱きしめる。

 強く抱く。

 彼女の額にキス。

 優しく触れる。

「お兄ちゃん……」

「碧純、俺、駄目な兄だな」

「駄目じゃないよ」

「お兄ちゃん、私のことちゃんと見てくれたから」

 その夜。

 二人の関係は新たな段階へ。

 兄妹を超える。

 愛情と欲望が交錯する道。

 だが、その先に何が待つのか。

 二人はまだ知らない。

 静かな夜。

 新たな始まり。



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