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修行ノート  作者: 五殺
3/28

第3章 転生

「うぅ…」


石の洞窟で一晩を過ごした黒髪の少年が目を覚まし、激しい痛みに耐えながら目を開けると、わずかに星のように光る電光が漏れた。洞窟内は灰色の霧がかかったようで、自分の手がはっきりと見えない。少年は手を伸ばして地面を支えながら、苦労して立ち上がった。


「これが転送ってやつか…?」胸を軽く触りながら、疑問を感じつつも洞窟の外らしき微かな光源に向かって歩き出した。一歩一歩進むうちに、少しずつ体の感覚が戻ってきた。


「(何だこれ、歩幅が小さくなってる!それにこの手…触るとまるで俺のじゃないみたいだ!?俺の体はどこ行ったんだ??)」


意識がだんだんと戻ってくるにつれ、転生してきた葉剣イエ・ジェンは異変に気づいたが、元の体の記憶が津波のように押し寄せてきた。


ジョシュア・ジェネシス、ハーフエルフの男の子で今年5歳、身長は130センチちょっと、灰色の顔には美しい柳葉の目が特徴で、エルフ特有の長い耳が目立っていた。人間の父親は1年前、異世界でのドラゴン討伐任務に参加し行方不明になった。父親によると、母親はエルフの国の大隊長で、それ以上の情報は不明だ。


「(…地獄難易度の孤児スタートか。面倒だな。)」


重傷を負った体を無理に支え、しばらく歩いた後、その場に座って頭に浮かぶ断片的な記憶を整理することにした。


「(それにしても、転送って話はどうなった?満装備、最高レベルの俺が、こうも簡単に消えてしまうのか?)」


頭を叩いて思考を少しリセットした後、葉剣は元の体に起きた出来事を理解した。


召喚陣を誤って触れ、自分を捧げてしまい、死んだ。


首にあるエルフの母親が残した樹形の翡翠のお守りがなければ、この肉体も保てなかったかもしれない。




【樹心】【シルバーランクのお守り】【エネルギーレベル要件:5】


樹心:1日に1回、持続時間30(-20)分の防御力15(-12)の皮膚シールドを召喚し、300(-200)ダメージを吸収できる。

白樺の変身:1(+2)日に1回、30分間白樺の形に変わり、地面からエネルギーを急速に吸収し、持続ダメージや付加状態を解除する。

「魔法エネルギーを注がれた白樺の樹心で作られたお守り」


{シルバーランクの能力低減エンチャント}{既にバインド済み}


首にかかるお守りをなぞっていると、葉剣の頭の中にこの情報が「見えて」きた。


「ゲームのステータス画面があるのか…それじゃ、このキャラクターの状態は?」


そう思った葉剣が目を閉じると、小さな空間が見えてきた。


その空間の中心には小さな土の穴があり、隣にはお守りが置かれている。


意識を集中してこのかつて植物が育っていたと思われる土の穴を観察した後、キャラクターのステータス画面が表示された。

===

エネルギーレベル:7

体力:13/20

気力:1/0(消散中)

基礎呼吸法:消失中(エネルギーレベル低下中)

===

どんなに注意深く見ても、ステータス画面にはこれ以上の情報はなく、ただ質素な形で葉剣の「目の前」に表示されていた。


「(これだけ?何もないのか?転生者のチートは?一度世界を救った俺に、せめて指導役の爺さんとか、強力なスキル書とか、手助けしてくれるものが何かあるべきだろう?)」


葉剣は前世の修行法を試そうとしたが、目を閉じると何も感じられず、目の前は真っ暗で、経絡も内丹もエネルギー体もなかった。生まれたばかりの赤子のように、何も分からない状態だ。この完全な「普通の人」になった感覚はとても異質だった。


葉剣は思わず無力感に打ちひしがれそうになった。


体を洞窟の壁にもたせかけ、お守りを手に取り、最後の試みをするつもりで口を開いた。


「お爺さん、お婆さん?誰かいるなら出てきて、新人向けのガイドをお願いします?」



しばらく沈黙が続いた。



ふと、葉剣は笑みを浮かべた。


「これこそ俺が求めていたものじゃないか―成長し、強くなり、さらに強者を打ち負かす。この世界の強者の上限は、前の世界よりもずっと高いようだ。今後の旅が楽しみになってきた。」


少しの間その場に留まり、体力が回復したのを確認してから、葉剣は洞窟の外へと歩き出した。


その時、葉剣の心にはこの体の元の持ち主、ジョシュアの最近の記憶が蘇った。彼の父親が任務から帰らないことに気づいたのは1年前のことだった。その後、城にいるのは高い出費がかかることから、宿に滞在できなくなり、傭兵ギルドに父親への伝言を残した後、ちょうど城を出る商隊を見つけて荷物のスペースを買い、村へ向かうことを決めたのだった。


「都会=高コスト=すぐに金欠。田舎=低コスト=少し長く生き延びられる」。これは、わずか4歳のジョシュアが考え出した結論である。



商隊についていく間、ジョシュアは護衛たちが魔獣や盗賊の襲撃に対処する様子を見て、戦闘への憧れを抱くようになった。一度でいいから、自分も何か技を身に着けたいと願っていた。


この世界では、すべての知識と行動が力、つまり「エネルギーレベル」として蓄積される。そして、想像力と意志力がそのエネルギーレベルの上限を決めるのだ。


しかし商隊のメンバーと親交を深める間もなく、商隊の荷物を運ぶケドウ獣が重荷を背負い、他の人々は軽装でわずか2日で吉斯村という大きな村に到着した。


村の親切なおばさん、ファニーはちょうど狩りに出かけるところで、広場の掲示板を見回している見知らぬ男の子が気になって声をかけた。彼女はジョシュアを孤児と誤解し、母性が爆発したように「家は広いから、疲れたらいつでも寝に来ていいわよ」と言ってジョシュアを家に迎え入れ、そのまま面倒を見ることに決めた。後に誤解が解けても、ファニーおばさんの決心は変わらなかった。


ファニーおばさんは村のハンターであり、ジョシュアを育てるつもりでしばらく狩りに連れて行った。彼女は村周辺の野生動物や植物の分布をジョシュアに教えたが、まだ4歳の彼には特別な期待はせず、毎日木の枝を束ねて拾ってくるだけで「宿代と食費にはこれで十分」と言った。


しかし、数か月後に事件が起きた。村周辺の環境に慣れたジョシュアは、早く成長したいという思いから、森のさらに奥へと足を踏み入れ、偶然にも洞窟にある召喚陣を発見した。そして…


―それが、ジョシュアの最後の瞬間だった。


「(まさか、地獄の不運属性が連動して、俺をここに召喚したのか?)」と葉剣は思った。


石洞を出た葉剣は、外の秋の気候を感じた。暖かさを保ちながらも、木陰に足を踏み入れるとひんやりとした冷気が感じられ、葉剣は太陽の位置を見上げてまた驚嘆した。


「(三つの太陽…本当に異世界に来たんだな。)」


長いため息はつかず、短いため息で切り替えた。葉剣は、周囲には肉食動物がいる可能性があると理解し、まずは自分が応戦できる準備をすることが急務だと考えた。そして周囲を丹念に探索し、木の枝やツル、鋭利な石を使って原始的な石斧と、石片を削って長さ一尺ほどの短槍を作った。この即席の武器は、緊急時に対応する力が身についていた葉剣だからこそ生まれた工夫だ。


しかし、本当に役立つだろうか?それなりには役に立つだろうが、十分ではないかもしれない。


「シューシューシューシュー」


葉剣は素早くしゃがみ、茂みから放たれた青い風の刃をかわした。次の瞬間、背後から背負った短槍を解き放ちかけたが、二発目の風刃がすぐに続き、葉剣の背に浅い傷が走った。しかし、彼は素早く前転して立ち上がり、その勢いを利用して短槍を回転させて投げつけた。


三発目の風刃の準備を中断させ、茂みから飛び出してきた灰色のウサギの腹に小さな傷を負わせた。


葉剣は短槍を投げた勢いで突進し、片手で石斧を振り上げ、魔力の反動で動けなくなったウサギの頭に振り下ろし、確実に仕留めた。


「初キルが下級ウサギか…転生者の面目が立たないな。」


「グルルルル…」


低い唸り声と共に葉剣の前に現れたのは、負傷した狼だった。


「この世界、冗談も度が過ぎると犯罪だぞ?」


魔法で先手を打つことなく、群れに追われ、足に傷を負った老狼は、空腹に駆られて最後の力を振り絞り、葉剣に飛びかかった。



葉剣は少しも怯まず、左手の拳を上げて狼の口に突っ込むように差し出した。そしてすかさず、


「樹心」


お守りのスキルが瞬時に発動し、皮膚を破ろうとする狼の牙は、体表から発生したエネルギーに弾かれ、驚いた狼は攻撃のタイミングを逃した。その隙に、葉剣は斧の柄を握りしめて、狼の目に突き刺した。


重傷を負った老狼は悲鳴を上げ、逃げようとしたが、長い間空腹に耐えて弱りきった体ではすぐに力尽きてしまい、葉剣に追いつかれてウサギと同じ末路を辿った。


「ハァ…ハァ…これ、ダークソウルをノーデスでクリアするよりずっと刺激的だな。」


戦利品を確認しようとした葉剣だったが、身をかがめた瞬間、自分の体に微細な変化が起こったことに気づいた。


ほんのわずかだが、確実に強くなっている。激戦の後で疲労困憊しているはずの体に、以前にはなかった力が湧き上がってきた。まだこの世界に完全に慣れていない葉剣は、ステータス画面を開き確認することにした。

===

エネルギーレベル:7

体力:11/20

状態:手(負傷)、背中(負傷)

気力:1/1

投擲スキル lv0(習得中)

近接戦闘スキル lv0(習得中)

斧の熟練度 lv0(習得中)

===

先ほど低下していたエネルギーレベルが戻り、気力も回復していた。


「すべての行動がエネルギーレベルに影響を与える…戦闘や殺戮もその一部ってことか…?」


葉剣は気力を使い果たし、膝を地面についた。


「こんなにも素晴らしい世界があるなんて…」


激しい戦闘の後、汗が目にしみるように流れ、感動が胸を熱くした。


ステータス画面には、自分が認識している限りの情報しか表示されない。たとえば、未知の毒に侵された場合、「中毒」という情報しか表示されず、解毒方法などの詳細は記されない。


その時、葉剣が気づかないうちに、ステータス画面に鮮やかな赤文字が浮かび上がった。


「極めて弱いあなたが、一場の戦闘を経て心からの称賛を捧げました。それにより、戦闘と殺戮の神があなたに目を留めました。あなたの本源空間は祝福され、戦闘関連の行動におけるエネルギーレベルの成長速度が速まります。」

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