表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
64/71

久しぶりといらっしゃい


「いらっしゃい」


 母は玄関で訪れたばかりの親戚である宮口一家を出迎えた。今日から2日間泊まっていくらしい。帰るのは明後日だそうだ。母と父は今日は休みだが明日も仕事があるのにいいのかと拓哉は少し心配になった。

 宮口一家は娘が1人の3人家族。持ってきている荷物はまとまっていて少なく見える。


 宮口父と宮口母の後ろにいる麗奈は小さくなっている。おそらく緊張でもしているのだろう。


 麗奈とはよく遊んだ記憶はあるが具体的に何をしたのかの記憶はない。きっとそれぐらいに当たり前のようなものだったのだ。


「さ、上がって」


 拓哉の両親に誘いのままに宮口一家は「失礼します」と言いながら家の中へと上がる。宮口母は両親の後ろに立っていた拓哉のことを見つめると満面の笑みで近づく。


「一ヶ月ぶりくらいかしら。今日はよろしくね」


「ええ、はい」


 拓哉の修学旅行がそれぐらいにあったので一ヶ月ぐらいでおそらく合っている。


「何々?どこかで会ってたの?」


 拓哉が返事をすると母がぐいっと話に入ってきた。


 そういえば母には話していなかった。母は興味津々で話題に乗り出している。

 父にも話しているが母と違って父は気に留めず他の人の相手をしている。いつもそういう人達だ。


「拓哉くんが修学旅行の時にね、たまたまあったのよ」


「そうだったの。拓哉も教えてくれたらいいのに?」


 拓哉は「ごめん」と言うと2人が話しているタイミングを見計らってその場を離れる。

 といっても時々質問されたり、話を振られたりしてすぐに離れることはできなかった。


 リビングに行くと宮口父と紗良、そして麗奈が並んで座っていた。宮口父が2人の間に挟まれている。


「やぁ、拓哉くん。突然すまないね」


 宮口父が話しかけてくると拓哉は移動して紗良の隣に座る。紗良はいつもと違い、背筋をピンと伸ばして座っていた。


 人目を気にして行儀を良くするのはいいことだと思うが今日は泊まっていく訳だし、一日中そのままでいるのは疲れないだろうか。親戚なのだし、多少崩しても問題はないと思う。


「突然、道原さん家に行こうって麗華が言い出してね」


 宮口父がフランクに話しかけてくる。麗華というのは宮口母の名前だ。ちなみに2人の名前をとって子供に麗奈と名付けたらしい。


 拓哉は急に行こうと言い出した原因に京都で会ったことがあるのではないかと思った。なぜか知らないがそんな気がする。


「麗奈も挨拶したらどうだ?」


 宮口父は顔を反対側に向けて優しく話す。麗奈はすぐ行動には移せないようだった。


 久しぶりに会った人ではうまく話せないこともあるだろう。それに拓哉の知っている麗奈は人見知りの気質が多少あった。


「きょ、今日から、あ、お邪魔します」


 麗奈は口をゆっくり動かして声を出した。目線は下を向いている。


「ゆっくりしていってね」


 拓哉は優しい調子で言葉を返した。麗奈はそのあとすぐに宮口父の後ろで小さくなってしまった。


 麗奈はなんらかの理由で学校を行けていないと宮口母は言っていた。それが何なのかはわからない。今でも続いているのかもわからないが、今日はゆっくりしていってくれたのならいいなと拓哉は思った。


「ごめんなさい。お待たせー」


 拓哉と紗良と宮口父が少し話していると母がそう言いながら宮口母リビングにやってきた。その後ろから父が入ってくる。どうやら2人の話をずっと聞いていた、またはそれに参加していたらしい。


 ずいぶん長いこと話していたようだが何を話していたのか。よく気が合うようで長時間話すのは変わっていないようだ。


「それじゃ、まずはご飯にしましょ」


 母が両手を叩くとそう提案してきた。


 母は宮口一家が家に来る前からご飯の支度をしていた。今は昼時だしご飯にはちょうどいいが、そういえば宮口一家は何も食べてきていないのだろうか。


「そうね。あなたの手料理、食べるの久しぶりだから楽しみだわ」


 宮口母がワクワクしたような顔を浮かべる。


 この様子であれば何も食べていないのだろう。事前に食べてないことを知っていて準備をしていたのだろうか。


「それじゃ、ちょっと待っててね」


 母はそう言うとキッチンへ歩き出した。拓哉も立ち上がってキッチンへ向かう。


 料理をしているところを見ていた、何ならちょっとは手伝っていたので拓哉は今日は料理の量が多いことを知っていた。そもそも、そうでなくとも今日はこの人数なので量が多くなるのは予想できる。

 あの量を運ぶのは1人だと少々大変だろう。そのため、拓哉は手伝いに向かった。


「ありがとう、拓哉。まずはこれから頼める?」


 母は料理を乗せた皿を渡してくる。拓哉は受け取ってテーブルへと運ぶ。


「手でも洗って待っててください」


 拓哉はそう言うと次の皿を運ぶため再びキッチンへ向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ