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喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
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文化祭 閉幕


「道原、ハサミってある?」


 拓哉はクラスが所有しているハサミの所在を探した。しかし今は他の人が使用している。

 拓哉は仕方なく、近くに置いてあった自分の鞄から筆箱に入れてある携帯のハサミを渡した。


「ちゃんと返してくれよ」


 クラスメイトは「はいよ」と返事をして使い始める。


 文化祭も終わり今は使ったものの片付けをしている。ハサミを要求されたのは段ボールをくくる紐を切るためだ。


「そうだ。道原、準備室にある余ったやつ取ってきてくれないか」


 クラスメイトはハサミを返しながら拓哉に頼んできた。今はやることを見つけられないので拓哉は了承する。


 拓哉はハサミを机の上に置いてそのまま教室を出た。


 廊下の外は同じく片付けをしている生徒達が歩いている。話している人もいれば一生懸命物を運んでいる人もいる。


「道原、どうした?」


 廊下を歩いていると炭谷が話しかけてきた。炭谷は手に荷物を抱えている。


「準備室のもの取りに来たんだけど」


「ああ、そういうこと。もう一回取りにこようと思ったけどそういうことなら頼もわ」


 炭谷はそう言い残してさっさと歩き出した。


 やはり炭谷も準備室から荷物を取りに行っていたらしい。そしてまだそれは残っている。

 拓哉は軽くため息をついてから再び歩き出した。


 準備室の荷物はもうほとんど残っていなかった。あとはちょっとした紙とか布のあまりなどが一塊になって置かれている。

 これを持っていってどうするのかはわからないが拓哉は一通り全て手に収めると準備室を出た。


「持ってきたけど、これどうするんだ?」


 教室に戻ってきた拓哉はどうするのかを実行委員に尋ねた。


「それはやっとくよ。ありがとう」


 実行委員が手を出すと拓哉は荷物を渡す。ちょっと面倒なのかあとはやってくれるらしい。


 こうなるとやることが特になくなってしまった。

 教室を飾っていたものはほとんど取り外されているし、制作物の解体は人数が足りていそうで入る隙間がない。机を戻すのは全部が終わってから出ないとできないしやることが見つからない。


「誰か、手伝ってくれ」


 どこからともなく声が聞こえると拓哉はやることがないので一目散にそこへ向かった。


 それから暫くすると教室の掃除は大体終わった。あとは机を戻すぐらいだろう。その時いたクラス全員が元の形へと一斉に戻し始める。


 その作業も10分とかからず、すぐに終わった。片付けは終わり次第随時放課となるので帰る者も出ている。


 拓哉はこの後も図書室の片付けをしなければならないのでそのまますぐに図書室へと向かった。


「お待たせしました」


 拓哉はドアを開けて図書室の中へ入った。すでに数人の人が作業している。

 展示物もおおかた外されていて、この調子であればすぐに終わりそうだ。


「道原くん。遅かったね」


 拓哉が来たことに気付くと加藤は近づいて声をかけた。


 なぜだかいつもよりもテンションが高い気がする。それは文化祭だからなのか他の理由があるからなのか。どちらにせよ元気いっぱいだった。


「とりあえず、あのボード返してきてくれるかな?」


 加藤はボードを指差しながら頼んでくる。

 あれは展示物が貼ってあったものだ。文化祭に必要だからと借りたものなのでもちろん返しに行かなくてはいけない。


 返す場所は少し遠い場所にある。キャスターがついているとはいえ、小さくもないし軽いわけでもない。なんだかめんどくさそうなものを頼んできた。


「わかりました」


 拓哉は小さくため息をつく。そしてボードを運び始めた。


 あと2つはあったはずだがそれは今ここにないからもう返されているのだろう。つまりこれが最後の一つだ。


 どこかにぶつけないよう慎重に運ぶ。

 他の人は作業しているので頼ることはできない。幸い返す場所は同じ階にあるので1人でもどうにかなるだろう。


「道原」


 返す場所には水田と浅羽がいた。水田は話しかけきたが浅羽は頭を下げている。

 おそらくこの2人もボードを返しにきたのだろう。というかそれ以外にここにいる理由が思いつかない。


「1人で、大変だったんじゃないですか?」


 浅羽がおずおずと話しかけてくる。拓哉はちらっとボードの方を見つめた。


「そこまでじゃないよ」


 少し運びづらいぐらいで他に支障はなかった。他の人もやることやっていたんだし仕方ない。


 拓哉が返し終わると3人で一緒に図書室まで戻った。


「水田は体調はもういいのか?」


「だいぶ休んだし、もう平気だ」


 水田はいつもの調子で言う。


 拓哉は無理をしていないか心配ではあるが水田はじっとしていられないタイプなので今は信じるしかないだろう。

 少なくともあの廊下で会った時よりは元気そうだから拓哉は問い詰めないことにした。


「もう大体終わったよ」


 3人が図書室に戻ると加藤は紙を持って近づきながらそう言った。


「これ、3人のやつね」


 加藤が手に持っていた紙を渡す。渡された紙は今日展示されていたものだ。


 拓哉としては自分の分は処分してくれても構わなかったが流石に本人に聞かずそんなことはしなかったらしい。


「それじゃあ、あとは閉じるだけだから先に帰ってていいよ」


「いや、でも」


「遠慮しなくていいよ。後輩だからね」


 加藤は拓哉が言葉の続きを言う前に割り込んで帰るように促した。


 早く帰れることが嬉しくない訳ではないが仕事を押し付けるような感じがしてなんだか変な感じがしてくる。


「道原。ここはお言葉に甘えよう」


 水田は拓哉の肩に手を乗せてそう言う。加藤はその様子を見てうんと頷いた。


 言われた通り帰るため鞄のところへ向かう。鞄の前に来ると手に持っていた紙を中にしまった。


「あ、忘れてた」


 加藤が言ったのをかろうじて聞き取って振り向いてみると歩いてきていた。


「最後にこれだけお願いしていい?ちょっと3階の教材室まで返してきてくれないかな?」


 加藤はそう言うと是非を聞く前に物が入った箱を渡してきた。

 閉じられているから中身はわからないが展示か何かに使った小道具か何かを作るために借りていたものだろう。


「わかりました」


 拓哉は返事をすると鞄を持って帰る支度をした。


「それじゃ、お先に」


「また明日ね」


 拓哉達は別れの挨拶を交わすと図書室を出る。

 出たタイミングは同じだが拓哉は返しに行かなくてはいけないのですぐに別れた。


 教材室と言っていたがはたして空いているのだろうか。そうでなかったら少し面倒だなと思いながら拓哉は階段を上がっていった。

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