相手に用を伝えてから
「布とか色々買ってきたよ」
拓哉は近くにある机に買ってきたものが入っている袋を置いた。
球技大会が終わって今は10月に入っている。ほんの少し先には文化祭という大きなイベントが待っている。今はそれの準備をしている最中だ。
拓哉のクラスは出し物として喫茶店をすることになっていた。それで机にかけるための布とか色々を買ってきて帰ってきたところだ。
「ありがとう」
「他に何かやることあります?」
「えーっと、そうだなぁ。準備室から色紙とか折り紙とか持ってきてもらえる?」
「わかった」
拓哉は了承するとすぐに教室を出た。
準備室とは文化祭の準備のために買ったものや作ったものを保管するために使われている教室のことだ。色紙や折り紙を頼まれたのは飾りつけするためのものがなくなってきたからだろう。
拓哉は残念ながら設計図でもなければそういったものは上手く作れない。つまり美術があまり得意ではなかった。
ガラガラと準備室の扉を開ける。電気はついていないようで少々暗い。
自分のクラスに与えられている。スペースに行くと人影があった。
「姫崎さん?」
「......道原くん?」
姫崎は驚いたようにゆっくりとこちらを振り返る。
「どうした?」
「ちょっと買い出しに行ってきた物を置きにきたんだけどどこにすればいいのかわからなくて」
姫崎の手を見るとビニール袋が握られていた。
拓哉が「そこらへんでいいんじゃない?」と指を指して言うと姫崎は「そう?」と言いながらそっと袋を置く。
拓哉は目的の色紙と折り紙を探し始めた。
「道原くんは何しにきたの?」
「物取ってきて欲しいって頼まれたから、取りに来た」
姫崎は「へー」と拓哉の手を見つめる。
用が終わったなら戻ればいいのになんで戻らず見てくるのか拓哉には理解できなかった。
探し物はすぐに見つかった。綺麗に整頓されていたから見つけやすかったのもある。
「それじゃあ、戻るとするか」
「そうだね」
姫崎は拓哉の横に並んで歩き始める。
「文化祭楽しみだね」
「そうだな」
「他のクラスはどんなのやるのかな?」
「さぁ。それは当日の楽しみに取っておいてもいいんじゃない?」
姫崎は「そうだね」と言って笑う。
知っているクラスもあるが少数だし、他の学年となると予想もあまりできないので何をやるかは拓哉も楽しみではあった。
「あ、道原くん」
教室に向かっている途中で加藤と出会った。
「この後空いてたら図書室にきてね。図書委員関係だから」
加藤は「それじゃあ」と付け加えるとすぐにどこかへ行ってしまった。
言いたいことを言うだけ言って帰っていく。相変わらずマイペースだなと拓哉は小さくため息をついた。
それから少し歩くと教室に到着した。先ほどよりもわずかだが人数が増えている。きっと他の用事が終わったか休憩で戻ってきたのだろう。
「はい。これ」
「ありがとう」
拓哉は頼んできた相手に荷物を渡してすぐに離れた。
きっとやることはこれ以上は特にないのだろう。この頼みも無理矢理引き出した感があったし、何かやって欲しいことがあるのなら離れるところを引き留めるはずだ。
「俺、ちょっと図書室行ってくる」
そう伝えると姫崎は「行ってらっしゃい」と明るく返した。
図書室の前に着くと動きを止めずそのまま扉を開ける。中には15人程度の人がいた。
これら全員がおそらく図書委員だろう。なんだか見たことがあるような気がする人が多い気がする。
「こんにちは、道原さん」
奥の方の席に座ろうと歩くと途中で浅羽に声をかけられた。
「こんにちは、浅羽さん」
拓哉は別にどこでもよかったので浅羽の横に座る。
「加藤に呼ばれたんだけど、何の話?」
「文化祭で図書委員が何をするかの話をするらしいです」
拓哉は納得したふうに相槌を打つ。
この学校の図書委員は毎年何かしらのことをやるのが恒例行事らしい。そして何をやるのかはきっと加藤が考えてきてくれたのだろう。
なんてことを考えていると加藤がちょうど入ってきた。
「それじゃあ、今年、この図書委員がすることはなんだけど」
加藤はそこからつらつらと話し出した。案は複数人で考えたものらしい。
案を簡単にまとめるとスタンプラリーをやろうというものだった。そして受付などのシフトを決めたいから当日の予定がわかったら教えて欲しいというのと、手が空いたら手伝いにきて欲しいらしい。
加藤の話が終わると今日は一旦解散となった。数人はすぐに出ていってしまったが数人は準備をするためか加藤と話している。
今来れなかった人には直接伝えておくと姫崎が言った。
改めて今日ここにきた人を振り返ってみると水田がいなかった気がする。拓哉はそれが少し気がかりだった。




