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喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
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昼休みに小話を


 始業式からわずか数日、今日から午後まで授業がある。拓哉は4限目の授業が終わるとそそくさと教室を出て食堂へと向かった。


 いつもであれば横に炭谷がいるのだがおそらくこれからはいないことがほとんどになるだろう。

 炭谷は彼女のことで忙しいようだった。教室にいれば隙あらば彼女のことを話題に入れ込んでくる。

 幸せそうなのは大変いいことだが他人に話せるのが嬉しいのかあまりにも頻繁に話してくるせいでその彼女がどんな人なのか気になってきてしまった。


 恋沙汰の話題というと拓哉は姫崎のことを聞かれることが増えていた。

 どうやら一緒に帰っていることが広まっているようでどんな感じなのかとおそらく姫崎のことが気になっている人達から尋ねられる。

 拓哉は大体「友達だ」「家が一緒の方面だから一緒に帰っている」と言ってその場を収めている。

 それを聞くとそれ以上追窮してくる人はほとんどいない。拓哉のことなど眼中にないのか「まぁ、そうだよな」と言ってその場を去っていく人がほとんどだった。


 一階の廊下を歩いていると少し先に姫崎の姿が見えた。


「姫崎さん。どうしたの?」


 近づいて尋ねる。


 姫崎はいつも教室で食べている姿を見かけるからここで会うとは思っていなかった。


「今日お弁当準備できてなくて、学食に行こうと思って」


 どんな事情かは知らないが今日はいつものように昼食を取れないらしい。


 拓哉は姫崎と一緒に食堂へと向かった。


 食堂について注文をし料理を受け取る。受け取った料理を持って空いている席に座る。

 ここまでの動作に姫崎がずっとついてきた。無論、席も近くであり、何なら目の前に座っていた。


 どこで別れたらいいかなんてわからないし、席も知っている人同士で集まっていた方が後から来た人が助かるだろうが炭谷以外と食べるのは久しぶりなので拓哉は少し戸惑った。


「姫崎さん、最近よく人といるよね」


 姫崎は始業式の日から誰かといることが多くなったように見えた。元々1人でいるところをよく見たので不思議な感覚を拓哉は覚えた。


「そうだね。いろんな人が喋りかけてくれるから......」


「どうかしたの?」


「いや、あんまり教室じゃ......」


 姫崎はそこまで言って口を閉じ、視線を料理に落とした。


 教室では何がどうなんだろう。言い方からして教室出ないところではあるのに教室ではないこと。それは一体何だろうか。


 聞きたい気持ちも強かったが姫崎から出ている雰囲気で何となく拓哉は聞けなくなった。


 少しの間黙々と食べ進める。同じものを頼んでいたが拓哉の方が若干食べるスピードが速かった。

 そのため拓哉は気持ちゆっくり食べる。


「相席いいかな?」


 横を向いて顔をあげると加藤がそこには立っている。

 拓哉と姫崎は顔を見合わせてうんとお互い頷いた。


「どうぞ」


「ありがとう」


 加藤は料理を置いて姫崎の隣に座る。


「なんかごめんね。邪魔しちゃってさ。空いてる席が少なくてねー」


「そんな。全然」


 姫崎は首を振って否定する。


 周りを見ると入ってきた時よりもだいぶ人が増えてきた。誰もいないテーブルはおそらく残っていない。


「それにしても2人とも相変わらず仲がいいね」


 姫崎が顔を逸らしたのを確認すると加藤は拓哉の方を見つめる。

 何か言いたげな顔をしているがその言いたいことはわからない。そうやってわざとらしくそんな視線をするのならはっきり言って欲しいが。


「そういえば、今日は前に一緒にいた子はどうしたの?」


 加藤は拓哉に視線を向けたまま質問する。


 昼食を一緒に食べている場合そのほとんどは炭谷とだし食堂で前に加藤と会った時に一緒にいたのも炭谷なのでおそらく炭谷のことだろう。


「ああ、ちょっとこれからは無理かなって言われて」


 言ってからこれだと嫌われたみたいなニュアンスになっていることに気づいた。

 拓哉は「予定ができたみたいで」と付け加える。


「何ー?もしかしてその子に彼女でもできて道原くんは振られたの?」


 拓哉はドキッとした。


 拓哉が振られたというところ以外は合っている。いや、振られたのかもしれないが結構正確に言われたので拓哉は目が丸くなった。


 加藤はにやっと口の形を変える。


 拓哉の様子からなんとなく合っているということを察したのかもしれない。


「姫崎ちゃんはいつも食堂なの?」


「いや、私はいつもはお弁当です」


 加藤と姫崎は拓哉を置いて少しの間話をした。


 話を聞いていると姫崎はいつも大体自分が弁当を作っているらしい。


 話に耳を傾けながら食事をしていると拓哉は食べ終わった。その後すぐに姫崎も食べ終わっている。加藤は後からきたのでまだ少し残っていた。


「私もうちょっとかかるから先に帰ってなよ」


「すみません。それじゃあ、お先」


 拓哉は席を立って少し頭を下げると食器を返しに向かった。その後ろに姫崎もついてくる。


「次の授業なんだっけ?」


「次は数学だよ」


 拓哉はそうだったと頷く。


 ちらっと見てみると加藤はまだご飯を食べている。

 夏休みの時かなり落ち込むようなことがあったから少し不安なところもあったが話した感じは元の調子を取り戻したみたいで安心した。


 拓哉達は食器を返すと教室に戻るために歩き出した。

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