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喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
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明かされること


「俺達、別れよう」


 沈黙に耐えられなくなったのか男の声がもう一度そう言い放つ。


 最悪の場面に出会した。他人が別れる、悲しみが生まれる場面なんて現実では見たくない。

 2人がどういった経緯でどうなったかはわからないがいたたまれない。

 姿が見えず声だけだが場面も場面だから重々しい感じが辺りを包んでいる。


「なんで?どうして?」


 女の声はわかりやすく動揺していた。突然のことで予期していなかったのだろう。


「何でもだよ。付き合ってからずっとなんか違うなって思ってたんだよ」


 男は淡々と自分の考えを告げる。


「そんなのってなくない。告白してきたのだってそっちなのに」


 女が追窮しても男はその問いに直接返事をしない。


 ふと加藤を見るとものすごく思い詰めた顔をしていた。ちょうど中橋の家に行った時に見せた表情によく似ている。


 突然、加藤が物陰から飛び出そうとした。何を考えているのか全然わからない。


 拓哉は物陰から体が出る前に肩を掴んで静止する。加藤は振り返って拓哉を見た。


 加藤の目に自分は映っていないように拓哉は感じた。その目は何か一つの大きなものに支配されているようなものだった。


「先輩。あれは2人の問題です」


 拓哉は存在を気取られないように2人が話しているタイミングを見計らって小さな声で言った。


 別れるかどうかは2人が決めるだ。求められてもいないのに他人が口を出すようなことじゃないと拓哉は思う。


 拓哉の言葉を聞いて加藤の顔はより深刻になった。


「どうして、今なの......」


 女は涙ぐみながら言ったことが見ていなくても伝わってきた。


「仕方ないだろ。一目惚れしたんだから」


 男は不満を漏らすような声で言う。


「先輩、行きましょう」


 拓哉は小さな声で戻るように促した。


 これ以上はいてはいけない。何となくだがそう感じられた。


 拓哉達はバレないようにそっとその場を離れる。

 2人が奥の方で話していてくれて助かった。まぁ、元々見える位置で話していたならばこんなことにはならなかったが。


「加藤、どうした?」


 戻っている途中で1人の男が話しかけてきた。確か今日集まった時にいた人な気がするのでおそらく同じ高校の生徒だ。


「またか。君、すまんな」


 男が近づくと加藤の様子を見てそう言った。


「先輩。どうかしたんですか?」


 またかと言うぐらいなのだから彼は何か知っているのだろう。

 知られたくないようなことなら話さなくてもいいが拓哉はどうしてこうなったのか気になってしまった。


「前にも似たようなことになってましたけど」


「前?もしかしてこの前、一緒にいじめの話を聞きに行ったって言ってた子?」


「はい。たぶん、そうです」


「そうか。なら、話しても構わないか加藤?」


 男が加藤を見て尋ねると加藤は小さく頷いた。


 やはり少し公にはしづらいことがあるのだろう。いじめや今回の件にも通ずるようなことが。


「無闇に他人に話したりしないでくれよ」


「わかってます」


 男がじっと見つめて言うので拓哉も見つめ返して返事をした。


「私は、先に戻ってるね」


 加藤はそう言うと男を通り過ぎて歩いていく。


 歩いている姿もどこか力弱い感じがする。こんな風にさせるようなこととは一体加藤に何があったのだろう。

 もちろん、そのことを知って誰かに話したり、何かに使ったりするつまりはない。


 男は加藤が去っていくのを少し眺めると振り返ってゆっくりと口を開いた。

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