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喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
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正直に伝える


 拓哉は海には入らず姫崎と浅羽と会話をして過ごしていた。


 海に来たというのに何もしないまま終わるのは勿体無い気がするが完全に入るタイミングを逃してしまっていた。

 それなりに時間が経ってだいぶお腹が空いてきた。今は昼食の時間にも丁度いい時間だ。


「お腹空いてきたから何か食べてくる」


 拓哉は片手をついてゆっくり立ち上がる。


 流石に会話しているとはいえ海と人の流れを見るのにも飽きてきた。


「私も行きます」


「わ、私も」


 姫崎が先に名乗りをあげると浅羽もそれに続いた。


 2人もどうやらお腹が空いているらしい。あまり動いてないけれど時間は経っているので仕方がない。


 拓哉は3人で海の家へと向かった。


 パラソルが立っているすぐ近くでビーチバレーをしている今日集まった人に拓哉は一声かけてから向かった。


 何もないとは思うが一応見ておいてくれる人が必要だ。


「何食べる?」


 拓哉は海の家が並んでいる前で2人に尋ねる。


 ざっと見た感じだと、焼きそばやフランクフルト、イカ焼きなんかがメニューとして取り扱っている店が多い。

 かき氷もあったが昼食を取りたいしかき氷はデザートとして除外する。


「どうしよっか?」


 姫崎は口を開いたが浅羽は静かにしている。


 こういった時は何か言ってくれた方が助かるのだが初対面の人もいるから、緊張も相まってうまく話せないのだろう。


「とりあえず何か希望がないんだったら、適当に入ろうか」


 拓哉が提案すると2人は頷いて同意した。


 拓哉達は見たところ1番大きそうなところでメニューの種類も豊富そうな店に入った。


 空いている席を見つけてそこに座る。


「俺は焼きそばにしようかな。2人はどうする?」


 拓哉は顔をあげて2人を見ながら尋ねる。


 ここに入る時には拓哉は何を食べるかは決めていた。海の家といったらそんなイメージがあるし前に置いてあった看板におすすめと書いてあったからだ。


「じゃあ私も焼きそばにしようかな」


「わ、私も、一緒で」


 姫崎と浅羽は同じものを食べると申し出る。


「他のじゃなくていいの?」


 拓哉が尋ねると姫崎は「いいよ」とすぐに返した。浅羽の方を見ると彼女も黙って頷く。


 2人がいいと言うのなら拓哉に異論はない。本当にそれでいいのかと自分の意見を言えてないのではないかと不安にはなるが。


 店員を呼んで注文をする。


 しばらくすると3つ一気に料理が届いた。

 昼時だからか外を見ると辺りを見るとさっきよりも海の家周辺を歩いている人が多く感じられる。どうやら混む前に入れて運がよかったらしい。


 拓哉達は「いただきます」と言って食べ始める。


 うまく表現することはできないが海の家で食べているという少し非日常的なのもあってか格段に美味しく感じた。


 会計を済ませて店の外に出る。

 人は入る前よりも多く、辺りは賑わっていた。


「美味しかったね」


「そうだな」


「・・・うん」


 姫崎が口をきると拓哉と浅羽はそれに賛同した。


 元の場所に戻ると1人の座っている人影があった。近くに行くとそれは加藤だった。


「おかえり」


 拓哉達に気づくと加藤は立ち上がって体を向ける。髪が少し濡れて、タオルを肩にかけているから先程まで海に入っていたんだろう。


「君達は海、入らないの」


 拓哉は「ええっと」と声を漏らすが姫崎と浅羽は無言で返す。


「まぁ、自分のペースでいいんだけど。それより道原くん、ちょっと話いいかな?」


 加藤はじっと拓哉を見つめながら尋ねる。


 話というのは検討がつかないが断る理由は特にない。


「いいですよ」


「ありがとう。ごめんね。ちょっと道原くん借りるね」


 加藤は姫崎と浅羽に謝った。


 謝るほどのことでもないと拓哉は思った。まぁ、知り合いがいなくなるのは少し心細くなるものなのかもしれないが。


 加藤は拓哉の横に並んで歩き出した。


「ごめんね。急に。歩きながらでいいかな?」


「大丈夫ですよ」


「中橋ちゃんのことでちゃんとお礼言えてなかったなって思って。あの後杉宮ちゃんから色々教えてもらったんだよね」


 加藤は少し下を見ながら拓哉に言った。


「俺は何もしてません」


 拓哉は首を横に振りながら言う。


 みんな何故お礼を言ってくるのか拓哉にはわからない。仲直りしたのはあの2人の力であって拓哉の力は関わっていないだろう。それにいじめも解決していない。


「いじめのことは何も終わってませんし」


「それでもだよ。君は2人を出会わせる架け橋になってあげたんだから。私には何も出来なかった」


 加藤は思い詰めたような顔をした。


 何故自分をそこまで下げる必要があるのかわからない。加藤が家に連れて行ってくれなかったら拓哉には2人を出会わせることはできなかった。そう思えば加藤が何もできなかったことはないはずだ。


「ごめん......もう一回言ってくれる?」


 少し先から声が聞こえてきた。


 話しているとだいぶ歩いていたようで、周りにそこまで人の気配はない。

 拓哉達は物陰に2人の人影を見つけるとその反対側に隠れた。

 一瞬しか見てないが、その2人には見覚えがある。今日集まった中でかろうじて拓哉が知っている2人、前にアイデアを出して欲しいと加藤に呼ばれた時にいたあの2人だ。


「俺達、別れよう」


 男の声がそう言った。

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