友達とは
中橋の件がひと段落して拓哉は姫崎と帰路に着いた。
あの2人が仲直りできたことはとても喜ばしいことだ。2人はこれからも仲良くやっていけるだろう。
「ちゃんと仲直りできてよかったね」
「うん。でもその大元は解決してない」
姫崎は「そうだね」と言って少し俯いてしまった。
解決したのはあの2人の関係だけでいじめに関してはどうにもなっていない。杉宮が協力すると言っていたから少しでも早く解決するといいが。
「そうだね。何かできることあるかな」
「・・・今は......」
そこから先が言葉にできなかった。
いじめていた奴らがどうなのかもわかってない。目撃したとはいえ結局自分達は他人だ。それに今は夏休みの最中でもある。解決するのは当事者達で現状今できることは......。
「姫崎さんは親友って呼べるぐらい仲のいい人っている?」
拓哉は前を見ながら言った。
あの2人の関係を見て、正直良いなって思った。あんなに絆が強い関係というのは一朝一夕にできるものではないだろう。
知り合いが傷ついてしまったらもちろん助けたい、傷つけてしまったら謝りたいと思うが、あれほどのものを他人が持ってくれていると自信を持っては拓哉は言えない。
拓哉は姫崎の人間関係を知らないからどうなのかと純粋に気になってしまった。
「私は......」
姫崎は口を閉じて考え込んでしまった。
姫崎はじっと何かを見つめる目をしている。
自分であの人は親友だと仲がすごく良いと言うのは気が引けるのだろうか。そんなに遠慮することでもないと思うが。
原因はわからないが随分と深く考えている様子だ。
「前の学校にはいたと思う。今はあんまり話す人もいないから」
「それは、ごめん。変なこと聞いて」
「全然気にしてないよ。最近は道原さんが話してるし......」
姫崎は拓哉から顔をそらした。
姫崎が自分と話すことに何かしら思ってくれていると思うと何故かわからないけど拓哉は嬉しかった。
それにしても前の学校にはいたらしい。
拓哉は姫崎が転校した理由を知らないから気になった。だが聞き出すものではないだろう。
「姫崎さん可愛いし何かあれば友達とかいっぱいできると思うけどなぁ」
姫崎は大きく顔を背けた。
何かまずいことを言っただろうか。
姫崎は容姿も整っていてかなり可愛いと思う。今まで話を聞いたことがないのがびっくりするくらいだ。
「ほんとに言ってるの、それ?」
姫崎は顔を背けたまま呟いた。
それというのは友達ができるというのだろうか。可愛い人物には男女問わず人が集まるような気がするからそうだと思ったのだが違うのだろうか。
「ほんとだよ。俺はそう思う」
人が集まれば仲良くなる機会はそれだけ増えるだろうし、友達だってたくさんできるだろう。自分には無縁な話だが周りを見ているかぎりそんな気がする。
拓哉の横を歩いていた姫崎は突然その場に立ち止まった。
「ごめん、ちょっと寄るとこあるから先に帰って」
姫崎は赤くなった顔をそらしながら小さめの声で言った。
何か赤くなるようなことがあっただろうか。拓哉にはさっぱり検討がつかない。
「わかった。気をつけてね。バイバイ」
「ちょっと待って」
拓哉が振り返ろうとすると姫崎に呼び止められた。
姫崎は両手を胸の前に置いている。
「どうかした?」
「あの、夏休み空いてる日があったら遊びに誘ってもいい?」
姫崎は恥ずかしそうな顔をしながらじっと拓哉を見つめている。
何を言われるかと少しドキドキしたからちょっと拍子抜けだった。そんなことなら全然問題ない。
「いいよ。それじゃあ、お互い空いてる日があったら」
「うん」
姫崎の顔は一気に明るくなった。
拓哉は自分と遊べることがそんなに嬉しいのかと不思議に感じた。
「それじゃあ、また今度」
「また今度」
拓哉は姫崎に軽く手を振って帰り道についた。
さっきは「バイバイ」が別れの挨拶だったのに約束ができて「また今度」が別れの挨拶になったことが何だか可笑しくて拓哉は少し笑った。




