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喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
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目をさませば忘れ物


 キーンコーンカーンコーン


 拓哉は5時半をつげるチャイムが聞こえると本を閉じた。

 今日は本を借りる人があまりこなかったため読書に集中することができた。


 続きも気になるので早く帰りたいがまだ仕事が残っている。帰る際、ある程度本の整理をしなければならない。

 実際は帰る際でなくても1日の中で1度すればそれでいいのだが、もう1人の図書委員は途中で帰るせいで受付にいなくてはいけなかったためそんな暇はなかった。

 まぁ、そんなに真面目にやっている人もいないらしいし、1人で細かくやっていたら時間がかかるのでざっと見る程度しかやらないが。


 拓哉はさっさと終わらせようと席を立ち、棚の方を見ると1人の女子生徒が長机に伏していた。


 その女子生徒の近くに教科書とノート、筆箱があるからおそらく勉強していたのだろう。


 拓哉にはその人物に見覚えがあった。

 確か彼女は2年の始業式に拓哉と同じクラスに転校してきた人物で、この1週間今のところ毎日図書室に訪れている。


 彼女は様子を見るにおそらく眠っているのだろう。


 本の整理が終わったらここを閉めなければならないから起こさないといけないが、それは閉める時でも構わないだろう。

 それ以前に勝手に起きるだろうし。


 拓哉は本棚の方へ歩き出した。




 確認が終わり先程女子生徒が居た場所を見てみると彼女はまだ寝ているようだった。


 拓哉は開けていた窓を閉め、起こすために彼女のところに移動した。


 彼女の周りの本に目を配ると数学の教科書にいくつかの参考書が少し乱雑に置いてあった。


「あのー、すみません。そろそろ閉めるんですけど大丈夫ですか?」


 終点で居眠りしている客を起こしているバスの運転手みたいだなと思いながら声を掛けると彼女の体が少しビクッと動いた。


「あれ、もうそんな時間ですか」


 彼女はすごい勢いで体を起こし、机に出ていた道具を鞄にしまい始めた。

 どうやら焦っているように見える。


「参考書は直しておくんで大丈夫ですよ」


 この参考書達は背に学校が管理するためのシールが貼ってある。それに先程本の整理をしていた時参考書がいくつか抜けていた。

 そのためこれらは彼女のものではないだろう。


「それとも今から借ります?」


「あ、大丈夫です。ごめんなさい。ありがとうございます」


 彼女は荷物をしまい終えるとそう言って図書室から出ていった。


 はぁ、とため息をつきながら参考書を持つとその下に手帳のようなものがあることに気がついた。

 大きさはa6程で参考書に重なって見えなかったため彼女が焦っていたのも相まって忘れていってしまったのだろう。


 一体どうしたものだろうか。


 今から追いかけても追いつける保証もないし、1日自分が預かることも気が引ける。この図書室には忘れ物を置いておく場所があるし、今日は図書室で預かることにしても構わないだろうか?


 この1週間今日まで来ていたのだ、明日だってきっと来るに違いない。それに同じクラスなんだから忘れ物があったと伝えればいいだろう。


 そう自分に言い聞かせて参考書を片付け、手帳を受付にある忘れ物スペースに置いてから拓哉は図書室を閉めて学校を後にした。


 

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