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喉元過ぎれば熱を忘れる  作者: 粗茶の品
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夏休み初日(学校)での出会い


「ごめん、ちょっと飲み物買いに行っていい?」


「いいよ」


 夏だから暑いこともあって喉が渇いた。

 今日はいつもより遅く起きてしまって満足にいつも通りの準備をする時間がなかった。けれど学校がすぐに終わるから大丈夫だと思って水筒を持ってきていなかった。

 この学校は体育館横の外に自動販売機が置いてある。お金はいつも通り持ってきていたのでそこで買えば問題ないだろう。


 ドンッ


 階段を降りて曲がると誰かにぶつかった。

 前にもここで誰かにぶつかった気がするがここはよく誰かが衝突する場所なのだろうか。


「ごめ、」


 拓哉が謝罪の言葉を言い切る前に制服を着た女子生徒は走り去っていった。


「何だったんだ?」


「さぁ」


 拓哉は走っていった方を見て首を傾げた。


 彼女は道を曲がるまで同じペースを保ったまま走っている。かなりのスピードだ。

 廊下を走るなと言いたいところだが様子を見るに彼女にも何かあったのだろう。


 自動販売機に着くと拓哉は麦茶を買った。

 この隣にある炭酸水とも悩んだのだが夏といえば麦茶な気がしたので麦茶にした。


 買ったばかりの麦茶を開けて飲むと姫崎も水筒を取り出して水分を取り出した。


「ーー!」


 呑気にお茶を飲んでいるとどこからか声が聞こえた気がする。


「今、何か聞こえなかった?」


「そう?」


 姫崎にはどうやら聞こえなかったらしい。


 拓哉は昔から音に敏感でかなり耳が良い方だった。だが近くにいた姫崎に聞こえていなかったのなら気のせいだったのかもしれない。


「ーー」


 勘違いだったと思い込もうとした矢先もう一度聞こえてきた。


「何か聞こえた気がする」


 姫崎の方を見ると今までと違う顔をしている。


 拓哉に言われて耳を立てていたのか今度は聞こえたらしい。

 部活のかけ声かとも思ったが今いるところが体育館のだいぶ後方だとしても体育館からならもっとはっきり聞こえるだろうし何か雰囲気が違う気がする。


 拓哉は妙に気になったので体育館裏を見に行くことにした。


 角からちょっと顔を覗かせると少し先に女子生徒が5人ほどいた。1人を他の4人が取り囲む形になっている。

 1人は囲まれている子の髪を引っ張っているし3人は笑っている気がする。

 おそらくいじめだろう。いじめの現場なんて初めて見たから断定は出来ない気がするがほとんどの確率でいじめだろう。

 いじめることに夢中でこちらには気づいていないらしい。


 拓哉はそっと顔を引っ込めた。


「ど、どうする?やっぱり助けた方がいいよね?」


 拓哉の後ろから見ていた姫崎はどうしたらいいのかわからずテンパっていた。


 助けた方が良いとは思うがどうやって助けよう?

 方法が思いつかない。教師に「体育館裏でいじめがありました」なんて言いに行くのは時間がかかるし、直接止めに行ってもこっちに火の粉が飛んできそうだ。


「と、止めなくちゃ」


「あ、ちょっと」


 姫崎は真剣な眼差しで向かっていった。


 考えていても仕方ないとはいえそのまま突っ込むか?と思いつつ拓哉は遅れて歩いてその背中を追いかけた。


「やめてください」


「は?誰あんた?」


 停止を促した姫崎は4人から睨まれている。ちらっと後ろにいる拓哉も見たから存在には気づいているだろう。


 あの顔には見覚えがある。いつぞやで「最近あの子来ないね」なんて話していた女子達だ。どうやらいじめっ子だったらしい。


「これ以上続けるならそれ相応の処置は取らせてもらうよ」


 姫崎に追いついた拓哉はとりあえず思いついたことを口にした。


 4人組は「チッ」と舌打ちすると向こうに歩いて行った。


「大丈夫?」


 姫崎は4人組がいなくなるといじめられていた子に手を差し伸べた。


「ありがとう、ございます」


 その女子が手を取って立ち上がると顔が見えた。


 拓哉にはその顔にも心当たりがあった。


 中橋綾子、しばらく学校を休んでいたらしい一年生。







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