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第2章「別れの春」1
私は夢を見ていた、懐かしい夢
忘れることのできない、卒業式での演奏と別れ
そこには小学校での思い出が全部込められていた
でも、別れはあっても、あの日のことは幸せな思い出として残っている
今は痛いのも、苦しいのも、失ってしまった多くのことも、夢の中でくらいは忘れていたくて
私は卒業をきっかけに離れ離れになってしまった大切な人のことを想う
隆ちゃん……、隆ちゃん……、会いたいよ、もう一度、会いたいよ……
夢の中でも涙は出るのだ、彼のことを考えると降り積もった痛みが和らいだ
もし、自分が死ぬときも、こんな風に温かい夢の中で逝きたいと思う
だから、もう少し、思い出の中に浸らせてくれてもいいよね?
目覚めた時には、きっと、今よりも少しくらいは現実を受けとめてみるから